BMW X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス(4WD/8AT)【試乗記】
いままでとは違うヤツ 2012.03.21 試乗記 BMW X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス(4WD/8AT)……863万7000円
BMWのSUV「X5」シリーズに、クリーンディーゼルエンジン搭載モデルが登場。その走りに“歓び”はあるのか? 市街地と高速道路でテストした。
市場を揺さぶるニューモデル
BMWは、日本市場におけるこれからの販売戦略として、ハイブリッドモデルやクリーンディーゼルモデルを順次投入することを計画している。今回、その一環として、SUVの「X5」にクリーンディーゼルエンジンを搭載した「X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス」を登場させた。
欧州の主要国における「X5」は現在、ディーゼル車の新車販売比率が軒並み9割を超えている。ドイツはもとよりディーゼルエンジン発祥の地であり、その新車販売における占有率は93%。英仏に至っては98%にもなる。
いっぽう日本市場は、ディーゼル乗用車の普及そのものが遅れている。なにせこの地には世界でもっとも厳しいレベルのディーゼル排出ガス規制があり、それをクリアする日本製ディーゼル車とて数が限られている。数年前には「日産エクストレイル」にディーゼルエンジンが搭載されて話題になったが、今でも正式にカタログに名を連ねる国産ディーゼル乗用車は、その他に「三菱パジェロ」と最近出たばかりの「マツダCX-5」といった程度だ。
輸入車でこのポスト新長期規制をクリアしたのはメルセデス・ベンツが初めてで、「X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス」をもって参入してきたBMWが2番手となる。
その「X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス」のエンジンは、3リッターの直列6気筒DOHCツインターボディーゼル。245psの最高出力と55.1kgmの最大トルクを発生する。問題とされる窒素酸化物を除去する触媒や、還元剤として尿素水溶液を噴射する方式は“メルセデス・ベンツ流”だ。
ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド方式が優勢な日本で、ディーゼルが普及しない理由は、複数挙げられる。
これまで染み付いてきた、臭い排ガスとうるさいエンジン音のイメージはいまだに払拭(ふっしょく)されていないし、燃料事情もことさらディーゼル車に追い風になるものとは言いがたい。何より、身近にディーゼル乗用車がほとんどないから、現代の欧州ディーゼルのレベルを知らない人がほとんどだ。だが、そんな市場にあって、メルセデスに続いてBMWまで参入してくるとなると、ディーゼルの認知度は大きく改善されることになるだろう。
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ディーゼルは、静かでパワフル
ハイブリッド車と同等か、あるいは高速道路などでは上回るとさえ言われる経済性は、今後、実際の路上で検証されることになるだろうが、ディーゼルエンジンのメリットはそれだけではない。
ここ数年、筆者は、もっと小さな最近のディーゼル乗用車を欧州で何台か試しているが、その経験から自信をもって言えるのは、「いまやディーゼル車は、ガソリン車よりも静かで、しかもパワフルである」ということだ。
試しにこの「X5」のスペックを見てみれば、3リッターの排気量から得られる55.1kgmのトルクは、同社のハイパフォーマンスなガソリン車のもつ、4.4リッターV8ターボに迫ろうとするものである。そして「下からトルクがあるから低回転で走れ、回さないから静かである」という道理には反論するすべもないだろう。
実際、アウトバーンを200km/h近い速度で走る時など、エンジン回転は、ガソリン車で4000-5000rpm、対するディーゼルエンジンは2000rpm強といったところ。半分程度にすぎない。また高圧縮比ゆえにレスポンスもよく、燃費ばかりを気にして(?)“モタモタ発進”をしてしまう最近のクルマとは対照的に、キビキビと走りだすことが可能だし、エンジンブレーキも実によく効く。
その昔、ディーゼルエンジンの始動時には儀式が必要だった。キーを逆にひねって数十秒待つ。するとグロープラグが赤く熱せられる。しかる後にスターターモーターを回すと、エンジンは真っ黒な煙と共に爆音を発して回り始め、ガラガラとノッキング混じりののどかな音をたてながらアイドリングしたものだった。だが、最新の「X5 xDrive35d」に、そんな儀式は不要だ。スターターボタンを押せば瞬時に始動するし、ガソリン車かディーゼル車かを判断する有効な手段だった“ガラガラ音”も聞こえない。
多少はブルブル震える硬質なアイドル振動を期待(?)したが、それも無し。もはや、ガソリン車との違いをまったく気にしなくていいレベルに達した。ただし、燃料の入れ間違いだけは要注意。
ビーエムらしいディーゼル
8段もあるATのおかげで、エンジンは高回転まで引っ張る必要もなく、実用域は700rpmのアイドリングレベルから2000rpmの間といったところ。常にユルユル回っているにすぎない。
「それではBMWエンジンらしくない」と思うならば、ギアのポジションを固定すればいい。エンジンの回転は5000rpmから始まるレッドゾーン付近までよどみなく上昇、スムーズかつ滑らかな“BMWエンジンらしい高回転域”を楽しむことができる。
「X5」の4WDシステムは、湿式多板クラッチを使って、連続可変式のトルク配分を行うタイプ。センターデフは持たないが、適当にクラッチを滑らせるフルタイム4WDであり、ドライバーは特に何もしなくていい。これもまた、車体の挙動を滑らかなものにしている。4つある車輪の一部が軽荷重のスプリットミュー下にあるときにスロットルをラフに扱ったとしても、ザッ!と空転するような下品なホイールスピンは、最小限に止められる。とはいえ、このクルマで本格的にラフロードを攻めるユーザーなどさほどいないだろうし、4WDのシステムのことなど忘れてしまってもいいだろう。
2200kgを超える重量級の車体も、モーターボートなどの重量物をけん引する際には、有効な武器となるはずだ。
ちまたのうわさによれば、この手のクルマは持っていることに意味があるのであって、将来的な査定額の低下も恐れて、積極的に乗らないひとも多いのだという。839万円の価格は、ライバルの陣容をみるに適当なところかもしれないが、それならいっそのことV8ディーゼルでも積んで、「ポルシェ・カイエン」や「レンジローバー」などを組み伏せる(!)というのが、これからのBMWの狙うべき姿ではないだろうか。
ディーゼル車は経済性に優れ、長距離走行を得意としており、長期間使うほどにメリットがあるとされてきた。しかし、なにせ日本は「距離を乗らない」。ディーゼル車は耐久性にも定評があるから、ただ持っているだけでも査定額はガタ落ちしないだろうし、だとしたら高いほど売りやすいはず。やっぱり、より高級な仕様のほうが好まれる、ということになりはしないだろうか。まぁ、いずれにしても、「自分で買うなら300万円以下の『ジープ・コンパス』で十分」な筆者には、縁の遠い世界ではあるが。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)
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笹目 二朗
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