マセラティ・クアトロポルテS Q4(4WD/8AT)/クアトロポルテS(FR/8AT)
本命登場 2013.06.03 試乗記 新型「マセラティ・クアトロポルテ」に3リッターV6ツインターボエンジン搭載車が加わった。年産5万台の“メジャー”を目指すマセラティにとっては、V8搭載車ではなくむしろこちらが本命といえるかもしれない。V8との適度なすみ分け
「伝統と官能のイタリアンブランド」というイメージが今や日本において定着した感のあるマセラティ。4ドアを意味するイタリア語をそのまま車名にした「クアトロポルテ」といえば、近年のマセラティにおいて2ドアの「グラントゥーリズモ」シリーズと並ぶ、極めて重要な大黒柱の1本となっているのは言うまでもない。
そのクアトロポルテが初代から数えて6代目、現在の体制になって2代目の新型へとモデルチェンジしたのは今年のデトロイトショーでのことで、そのV8エンジン搭載車はすでに4月に日本でも正式発表されている。ところがつい最近、ある意味で新型クアトロポルテの本命といえるかもしれないV6エンジン搭載モデルが、本国イタリアを舞台にいよいよ試乗に供された。
すでに発表済みのV8エンジンが、排気量3.8リッターのDOHC 4バルブ直噴ツインターボであるのと同様に、排気量3リッターのV6ユニットもDOHC 4バルブヘッドの直噴燃焼室を備え、ツインターボで過給される。その結果、2979ccの排気量から生み出されるパワーは410ps/5500rpm、トルクは56.1kgm(550Nm)/1750-5000rpmと、マセラティのイメージに恥じない数値をはじき出す。ちなみに3.8リッターV8ツインターボは530psと66.3kgm(650Nm)を生み出すから、V6とV8の間には、まさに適度な違いがあることになる。
このV6エンジンもV8同様、マセラティ自身のエンジン開発部門、マセラティ・パワートレインが設計し、マラネッロのフェラーリファクトリーにおいて委託生産されるというプロセスを経て、最終的にマセラティの新しいグルリアスコ工場に送り込まれる。トランスミッションはV8と同じくZF製8段ATが採用され、トランスアクスル配置ではなく、エンジン直後の通常の位置に搭載される。
4WDで守備範囲を広げる
この新型クアトロポルテ、V8エンジン搭載モデルが「GTS」と呼ばれるのに対して、V6エンジン搭載車はシンプルに「クアトロポルテS」のモデル名を与えられているが、実はV6モデルには2種類のモデルが存在する。後輪駆動版のSの他に、マセラティの表現でAWD、すなわちフルタイム4WDバージョンの「S Q4」もラインナップされているのだ。
かつてのアルファ・ロメオの4WDシステムと同名のQ4は、ATの直後にセットされた電子制御多板クラッチによって前後輪にエンジンの駆動トルクを分配するもので、前後トルク配分は0:100から50:50の範囲で状況に応じて刻々と変化する。
いずれにせよ、2015年に世界販売台数5万台を目指すというマセラティが、これまでイメージになかった4WDを採用した裏には、クアトロポルテをあらゆる気候風土の下で使える世界戦略車にしたいという、同社の思いが込められていると考えていいだろう。
ところで、新型クアトロポルテのボディーは全長5262mm、全幅1948mmと、先代よりひと回り拡大されているが、外板の60%にアルミを使うなどして軽量化にいそしんだ効果で、V6モデルの車重は後輪駆動のSが1860kg、4WDのS Q4が1920kgという、悪くない数字に抑えられている。その結果、公表されたパフォーマンスはSが0-100km/h加速5.1秒、最高速285km/h、S Q4が同じく4.9秒と283km/hという、大柄なボディーに3リッターV6というイメージから想像するよりずっと楽観的なデータが並ぶことになった。
ちなみに、後輪駆動バージョンしかないV8搭載モデル、GTSのパフォーマンスデータは、0-100km/h加速4.7秒、最高速302km/hとされているから、V6とV8の違いは劇的に大きいわけではなく、これもまずまず適度というところだ。
爽快な加速感
さて、その新型クアトロポルテV6搭載モデルの国際試乗会は北イタリア、ミラノとトリノのほぼ中間に位置するかつてのアルファ・ロメオのテストコースで、現在はフィアットグループの多くのブランドが使うバロッコと、その周辺のアウトストラーダとワインディングロードを含む公道を舞台にしたものだった。
そこで最初に走らせたのは後輪駆動のクアトロポルテSだったが、3リッターV6ツインターボが大柄なボディーを不足のない、というよりけっこういいペースで加速させていくのがまずは印象に残る。背中を押しまくるような迫力こそないが、十分に爽快な加速を振る舞ってくれるのである。それでいて、メーターの100km/hはDレンジ8速で1400rpmにすぎないから、おとなしくクルージングすれば予想外の燃費をマークできるかもしれない。その一方で、深く踏み込めばエンジンはそれなりの爆音を奏でる。ただしそこに、先代のV8のごとき官能のサウンドを期待するのはちょっと酷ではあるが。
スカイフックダンパーを備える脚は、ノーマルとスポーツの2モードを選択可能だが、ノーマルではやや予想外なほどソフトな動きをする。そこでスポーツを選ぶと、これでも硬すぎる印象はないから、スポーツを常用するのも悪くないような気がした。操舵(そうだ)力は軽めだが、路面感覚を十分に伝えるステアリングを操作してのコーナリングは、アンダーステアの強すぎぬ素直なものだといっていい。
AWDのS Q4に乗り換えると、前輪にトルクが伝わる影響でステアフィールに若干変化が生じるが、その点を除けばAWDを意識させられることは事実上皆無といえ、違和感の少ない四駆という印象をうける。コーナーでアンダーステアが強まるという明確な実感もない。EU複合サイクル燃費も、Sと比べて100km当たり0.1リッター増えるだけというから、こいつは使えるAWDだと思う。
加速に迫力を求めなければV6で十分、しかも降雪地のマセラティフリークにはQ4がある。新型の登場によって、クアトロポルテが日本でも顧客のレンジを広げるのは間違いなさそうに思えた。
(文=吉田 匠/写真=マセラティ)
拡大 |
テスト車のデータ
マセラティ・クアトロポルテS Q4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5262×1948×1481mm
ホイールベース:3171mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:410ps(301kW)/5500rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1750-5000rpm
タイヤ:(前)245/45R19/(後)275/40ZR19
燃費:10.5リッター/100km(約9.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
マセラティ・クアトロポルテS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5262×1948×1481mm
ホイールベース:3171mm
車重:1860kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:410ps(301kW)/5500rpm
最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1750-5000rpm
タイヤ:(前)245/45R19/(後)275/40ZR19
燃費:10.4リッター/100km(約9.6km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

吉田 匠
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。






























