レクサスIS250“Fスポーツ”(FR/6AT)
ニューISのベストバイ 2013.08.19 試乗記 2.5リッターV6エンジンを積んだ「レクサスIS250“Fスポーツ”」に試乗。人気を集める「IS300h」の4気筒ハイブリッドにはない、マルチシリンダーならではの魅力に触れた。一番人気はハイブリッドだけど
少し前の話になるけれど、トヨタが6月中旬に出したニュースリリースによると、新型「レクサスIS」は発売から約1カ月で約7600台を受注し、うちハイブリッドの「IS300h」が5500台を占めたという。約7割がハイブリッドという計算だ。
でも僕がもしISを買うとしたら、今回取材したガソリンエンジンの「IS250“Fスポーツ”」を選ぶのではないかと想像している。
新型ISのスタイリングは、旧型以上にダイナミックだ。LEDのL字型クリアランスランプを独立させたヘッドランプは、つけまつ毛みたいで違和感があるけれど、キャビンの絞り込みや、リアコンビランプに向けて跳ね上がるラインはキレイだと思う。
インテリアは、オリジナリティー、クオリティーともに、現行国産車ではトップレベルではないだろうか。水平基調のインパネは、日本建築などに見られる伝統的な造形を思わせ、ブラックとメタル調、チタン調を使い分けた仕立ても、プレミアムブランドにふさわしいものとなっている。スライダー式のエアコンスイッチは反応が良いうえに、タッチパネル式とは違ってブラインドタッチできる。マウスを思わせるナビのコントローラーは、反応がより自然になった。
圧巻は“Fスポーツ”のメーターだ。フラッグシップの「LFA」同様、センターのメーターダイヤルがスライドして、さまざまな情報を表示してくれる。クルーズコントロールの操作方法を教えてくれるなど、日本車らしい親切心もありがたいけれど、それ以前にカッコイイ。これだけで“Fスポーツ”にしたくなる。
そんな新型ISには、だからこそ「トヨタ・クラウン」のそれをそのまま移植したようなハイブリッドシステムは似合っていないと感じている。
エコかファンの二者択一
2.5リッター4気筒エンジンとモーターのスペックは、クラウンと同一だ。車両重量も近い。よって加速感も似ている。街中をゆったりクルーズするなら不満はないが、ペースを上げるとブーンというごくフツーの4気筒の音が響いてきて、ダイナミックなデザインとのギャップの大きさに興ざめとなる。
ダウンサイジングの考えが行き渡ったおかげで、今やこのクラスのプレミアムブランドが積むエンジンは4気筒が主力だ。しかしライバルの4シリンダーは、はるかに緻密かつ上質な回り方をする。
だからこそ、IS250に積まれているV6が光る。今やこのクラスのセダンで2.5リッター級の6気筒を積むのはごくわずか。貴重な存在であることを、期待以上のフィーリングで教えてくれるのである。
アクセルペダルを踏み込んでいくと、4000rpmを超えたあたりで吹け上がりが鋭くなるとともに、新たに装備されたサウンドジェネレーターから、クォーンという快音を届けてくれる。加速そのものも、これで不満ないけれど、それ以上に感覚性能に長(た)けている。
惜しむらくは、IS350では8段化されたATが、250では6段のままであることだ。「8段が欲しければ350をどうぞ」ということかもしれないが、「大きいことはいいことだ」は20世紀的価値基準でもある。レクサスそのものがプレミアムブランドなのだから、欧州のライバルのように、トランスミッションの差別化を行わないほうが自然に思える。
もうひとつ、アイドリングストップが付かない点も残念だ。そのためもあって、IS300hのJC08モード燃費が23.2㎞/リッターなのに対し、IS250(FR)は11.6㎞/リッターにすぎない。この数字は欧州のライバルにも劣る。エコかファンの二者択一になるIS、エコとファンを両立した欧州勢と区別できるかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ISには6気筒がよく似合う
レクサスの“Fスポーツ”は、先代のISに設定された当初から、国産車らしからぬ乗り心地とハンドリングのバランス感覚に好感を抱かせた。しかも「CT」から「LS」まで、車種の大小を問わず、その世界に統一感があったことも評価していた。新型ISの“Fスポーツ”もその印象は変わらない。
発売前のプロトタイプに箱根で乗った際は、ボディー剛性は大幅に強化されている一方、サスペンションはストロークが少なめに感じたが、発売までに熟成が進んだのだろう、今回の試乗では、違和感を抱かないレベルにまとまっていた。
“Fスポーツ”専用のフロントシートも印象がいい。包み込まれるような着座感で、オーダーメイド感覚のフィット感をもたらしながら、硬すぎない。レクサスらしい、おもてなしの気持ちが伝わってくる。
主として後席居住性を向上させるべく、全長で80㎜、ホイールベースで70㎜延長された結果、身のこなしは旧型よりやや穏やかになった。以前、試乗会で乗ったIS350の“Fスポーツ”と違って、ギア比可変パワーステアリングが付かないことも、その印象に輪を掛けているのかもしれない。
でも鈍いというわけでは決してなく、コーナーの進入から脱出まで、このサイズの後輪駆動セダンらしく、乗り手の意思に忠実なフィーリングで曲がっていく。ボディー剛性強化のおかげで、その身のこなしを安心感とともに堪能できるようになったこともうれしい。
この走りを味わうと、新型ISにはやはりガソリンエンジンが似合うと言わざるを得ない。アイドリングストップが付かず、ATが6段なのは残念至極だが、6気筒ならではの滑らかさや音の良さが、独自の武器になっていることもまた確かである。
(文=森口将之/写真=向後一宏)
テスト車のデータ
レクサスIS250“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4665×1810×1430mm
ホイールベース:2800mm
車重:1580kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6AT
最高出力:215ps(158kW)/6400rpm
最大トルク:26.5kgm(260Nm)/3800rpm
タイヤ:(前)225/40R18 88Y/(後)255/35R18 90Y(ブリヂストン・トランザ ER33)
燃費:11.6km/リッター(JC08モード)
価格:480万円/テスト車=533万3400円
オプション装備:プリクラッシュセーフティ―システム+ブレーキ制御付きレーダークルーズコントロール(6万3000円)/クリアランスソナー&バックソナー(4万2000円)/LEDヘッドランプ+レーンディパーチャーアラート+オートマチックハイビーム(19万4250円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万4150円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2202km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:289.9km
使用燃料:39.8リッター
参考燃費:7.3km/リッター(満タン法)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】 2026.1.28 スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。
-
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】 2026.1.27 “マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。
-
ホンダ・シビック タイプR/ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車【試乗記】 2026.1.26 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。
-
トヨタbZ4X Z(4WD)【試乗記】 2026.1.24 トヨタの電気自動車「bZ4X」の一部改良モデルが登場。「一部」はトヨタの表現だが、実際にはデザインをはじめ、駆動用の電池やモーターなども刷新した「全部改良」だ。最上級グレード「Z」(4WD)の仕上がりをリポートする。
-
アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.1.21 「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】
2026.1.31試乗記レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。 -
NEW
「スズキGSX-8T/GSX-8TT」発表会の会場から
2026.1.30画像・写真スズキが新型モーターサイクル「GSX-8T/GSX-8TT」をいよいよ日本で発売。イタリアのデザインセンターが手がけた新型のネオクラシックモデルは、スズキに新しい風を吹き込むか? タイムレスなデザインと高次元の走りを標榜する一台を、写真で紹介する。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――トヨタ・クラウン エステートRS編
2026.1.30webCG Movies「クラウン」らしからぬデザインや4車種展開などで話題になった、新世代のトヨタ・クラウン。そのうちの一台「クラウン エステート」に試乗した、元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの感想は? -
待望の7人乗りMPV「ルノー・グランカングー」を大解剖 ライバルにはない魅力はあるか?
2026.1.30デイリーコラムいよいよ日本に導入された、ロングボディー・3列シートの「ルノー・グランカングー」。満を持して登場した真打ちは、競合する国産ミニバンや7人乗りの輸入MPVに対し、どのような特徴があり、どんな人におススメなのか? 取材会で実車に触れた印象を報告する。 -
第946回:欧州に「277万円以下」のクルマなし! キューバ化を覚悟した冬
2026.1.29マッキナ あらモーダ!欧州でお値段1万5000ユーロ未満の大衆車が壊滅状態に! 自動車の価格高騰はなぜ起き、そしていつまで続くのか? 一般の自動車ユーザーは、この嵐をいかにしてやり過ごそうとしているのか? イタリア在住の大矢アキオがリポートする。 -
第286回:才人監督が描くディストピアのデスゲーム 『ランニング・マン』
2026.1.29読んでますカー、観てますカー「アルピーヌA290」で追っ手のハンターから逃げ延びろ! スティーブン・キングが50年前に予見した未来は、まさに現在の状況そのもの。分断とフェイクが支配する現実を鋭くえぐった最新型デスゲーム映画。






























