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ロータス・エキシージS(MR/6MT)

ずっと運転していたい 2013.08.24 試乗記 森 慶太 1.2トンのボディーに350psのV6スーパーチャージドエンジンを搭載した新型「ロータス・エキシージS」が日本上陸。その走りを箱根で試した。

スーパーカー度増し増し

「エリーゼ」にV6。排気量3.5リッター。さらにスーチャー、どん。そう書くと、ものすごく無理やりっぽいクルマっぽい。乗ったらおっかなそうな感じがする。でもって新型「ロータス・エキシージS」、先代すなわち「エキシージ カップ260」比270kgアップで1180kgになった車重のうちわけは、車検証によると420kg+760kg。割り算すると、フロント軸重とリア軸重の比率はほぼ35.6対64.4。ドライバーより後ろにエンジンが載っているクルマのなかでもリアヘビー度が高いほうではないか。

でも実物は、そんなおっかなそうなクルマには見えない。というか、かなりカッコイイ。昔のルマン24時間に出ていたレーシングカー、あたりをグイグイ連想させるパワーがある。ムードがある。「プリンス/日産R380」が「日産R381」にグロウアップしたぐらいの迫力もある。これはちょっと、あるいはもっと、スーパーカー系。とにかく、腰から尻にかけてのボディーの張り出しというかマス感のゴリッパさがステキ。資料にいわく「グループCのレースカーからインスピレーションを得たスタイリング」。なるほど。

ホイールに巻いたベルト、みたいに見えないタイヤのサイドウオール(ハイトたっぷり)もステキ。装着銘柄は、ヨコハマ……ではなくピレリ。だからというか、トレッド面からサイドウオールにかけての部分がパキッとカドっぽくない。ふっくらしている。

ボディーサイズの拡大や、過給器付きV6エンジンの搭載などにより、従来モデルの「エキシージ カップ260」より重量が増してしまったが、それでも車重は1.2トン以下に収められている。
ボディーサイズの拡大や、過給器付きV6エンジンの搭載などにより、従来モデルの「エキシージ カップ260」より重量が増してしまったが、それでも車重は1.2トン以下に収められている。
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ボディーカラーは全16色。ソリッド系のレッドやイエロー、メタリック調のグリーン、ホワイトなど、幅広い色が用意されている。
ボディーカラーは全16色。ソリッド系のレッドやイエロー、メタリック調のグリーン、ホワイトなど、幅広い色が用意されている。
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フロントリップスポイラーやリアディフューザー、リアウイングなどのエアロパーツを標準で採用。最高速(274km/h)での走行時には、フロントに60kg、リアに90kgのダウンフォースがかかる。
フロントリップスポイラーやリアディフューザー、リアウイングなどのエアロパーツを標準で採用。最高速(274km/h)での走行時には、フロントに60kg、リアに90kgのダウンフォースがかかる。
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ロータス エキシージ の中古車

リアまわりはエリーゼとは別物

ガラスのハッチを開けてのぞき込むと、横置きの60度V6エンジンはちょっと傾いている。どう傾いているかというと、真横から眺めてフロント側のバンクが垂直に近づく方向へ(ということは当然、リア側のバンクが水平に近づく方向へ)。なぜ傾けてあるのかは聞かなかったけれど、見た目では、低重心化のためっぽい。
というのはこのエンジン、Vバンクの谷間にスーパーチャージャーのユニットが置いてある。真横から見てフツーに真っすぐ立てた状態だと、そのスーパーチャージャーのケース部分が一番高くなる。バンク部分の一番高いところとスーパーチャージャーの一番高いところが同じぐらいの高さになるところまで全体を傾けた結果が現状だと考えると納得がいく感じ。

なお新型エキシージS、主に横置きエンジンが直4からV6になったせいだと考えられることに、ホイールベースが先代比70mm長くなっている。もっというと、全長は「安定性、および公道での存在感のために」280mm長い。前後トレッドは「安定性の向上のために」42mmずつワイド。

ホイールの隙間からリアのアシまわりをのぞき込むと、おお。ゴツいアルミのロワアーム(資料によると鍛造部品)。車体側の取り付けスパンもワイド。一見して「エリーゼ」系とは別モノとわかる。さらに、リアのバンパーの下あたりからなかをのぞき込む。と、おお!! エリーゼ系としてはたぶんこれが初の採用例となるはずの、アンチロールバー。いわゆるスタビ。やっとつけたのね。
ということで新型エキシージS、クルマの後ろのほうはエリーゼとはかなりというかガラリというか別モノであるもよう。輸入元の人が教えてくれたところによると、乗員コンパートメントとエンジンコンパートメントの間に隔壁状の部材を入れたことで車体のねじり剛性が(エリーゼ比なのか先代比なのかは不明ですが)「100%近く」上がっているという。

運転席から前方の眺めはほぼ、エリーゼ系。ステアリングホイールやペダルや、あと運転姿勢も同じく。エンジンを始動すると、明らかに演出でやっているとわかる勇ましいサウンドが。これは非エリーゼ系。据え切りかそれに近い状況だとハンドルはググッと重たくて、「やはりこれはエリーゼとは違うぞ」。でも、ナマだ。パワーアシストなし。んーナイス。

V6エンジンの搭載や走行安定性の確保、路上での存在感などのために、全長、全幅を「エリーゼ」よりひとまわり拡大。車高だけは両者共通で1130mmとなる。
V6エンジンの搭載や走行安定性の確保、路上での存在感などのために、全長、全幅を「エリーゼ」よりひとまわり拡大。車高だけは両者共通で1130mmとなる。
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エンジンはトヨタ製の3.5リッターV6をスーパーチャージャーで加給したもの。基本的には「ロータス・エヴォーラS」と同じだ。
エンジンはトヨタ製の3.5リッターV6をスーパーチャージャーで加給したもの。基本的には「ロータス・エヴォーラS」と同じだ。
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従来モデル同様、車内空間の仕立てはシンプルそのもの。屋根が低いうえにサイドシルが極太なので、乗降にはコツが必要だ。
従来モデル同様、車内空間の仕立てはシンプルそのもの。屋根が低いうえにサイドシルが極太なので、乗降にはコツが必要だ。
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写真の通り、トランクルームの広さは必要最低限といった感じ。同じミドシップ車でも「ポルシェ・ケイマン」などは車体の前後2カ所に荷室を備えているが、「エキシージS」の場合は、エンジンルーム後方のこの1カ所のみだ。
写真の通り、トランクルームの広さは必要最低限といった感じ。同じミドシップ車でも「ポルシェ・ケイマン」などは車体の前後2カ所に荷室を備えているが、「エキシージS」の場合は、エンジンルーム後方のこの1カ所のみだ。
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スイスイ、グイグイ曲がっていける

エキシージS、運転はものすごくやりやすい。自動車学校のMT教習車に推奨したいクルマのナンバーワンは素の「ポルシェ・ケイマン」だけれど、それの次ぐらいにオススメかもしれない。後ろの視界やバック車庫入れの関係はちょっとならずキツいけど。極低速でググッとくる重ステも、フツーに走りだして以降はナンてことなし(資料によるとギア比は先代モデルと同じで、あと試したところロック・トゥ・ロックは3回転ちょい)。アクセルもブレーキもクラッチも、操作感はごくフツー……といってはアレかもしれないけれど、初めて運転してとまどいそうな感じがまるでない。

それと、後ろのドッシリ感がハンパない。危なっかしいリアヘビー感や後ろのトップヘビー感(およびそこからくる高い横G下でのグラッと系のロール)ではなく、そのドッシリ感がまずもってというかずっとというか、支配的。格上げされたリアまわりの骨格とリアのアンチロールバーが確実に効いている印象。心強い。

運転した道は箱根ターンパイク。上ったり下ったり。冗談ぬき、エリーゼより安心感が高い。後ろが大丈夫であるのをヒシヒシ感じながらスイスイ、またはグイグイとハンドルをきってカーブを曲がっていける。楽しい。気持ちいい。
コーナリング速度はフツーに高く、また旋回中に道のウネウネ等にあおられてもドライバーの心の平穏度は別に乱されない。この日は「スバルWRX STI tS TYPE RA」にも試乗したのだが、そのへんオミゴトだったSTI製インプレッサに感心したあとこれに乗って、再びというかさらにというか感心。

借りた個体はオプションのレースパックつきで、ということはアシが15%ほどカタくて、さらにそのアシの設定が焦点を合わせたところのタイヤもついていた。スタンダードの「ピレリPゼロ コルサ」(晴雨両用)ではなく、これまたオプションの「Pゼロ トロフェオ」(ドライ重視)のほうが。「これでホントにカタいほう?」と疑ったぐらい、乗り心地は快適だった。タイヤが踏んだ小石が床下でカラカラ鳴っているのがちょっとならず目立った程度。

ヘセルのテストコースでのラップタイムは、従来モデルの「エキシージ カップ260」より5.3秒短い、1分32.6秒を記録。
ヘセルのテストコースでのラップタイムは、従来モデルの「エキシージ カップ260」より5.3秒短い、1分32.6秒を記録。
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テスト車はオプションのプレミアムスポーツパック装着車。カーボン調加飾付きの専用スポーツシートが装備されていたほか、ドアパネルやセンターコンソールもレザー(シート表皮の仕様に応じてスウェードとなる場合も)でおおわれていた。
テスト車はオプションのプレミアムスポーツパック装着車。カーボン調加飾付きの専用スポーツシートが装備されていたほか、ドアパネルやセンターコンソールもレザー(シート表皮の仕様に応じてスウェードとなる場合も)でおおわれていた。
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タイヤは標準の「ピレリPゼロ コルサ」に加え、「Pゼロ トロフェオ」も用意。オプションのレースパックの足まわりは、ドライ重視のトロフェオに合わせてチューニングしたものとなっている。


    タイヤは標準の「ピレリPゼロ コルサ」に加え、「Pゼロ トロフェオ」も用意。オプションのレースパックの足まわりは、ドライ重視のトロフェオに合わせてチューニングしたものとなっている。
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ブレーキは前後とも同じ仕様で、APレーシング製の4ピストンアルミ合金キャリパーに、332mmのベンチレーテッドクロスドリルドディスクの組み合わせ。
ブレーキは前後とも同じ仕様で、APレーシング製の4ピストンアルミ合金キャリパーに、332mmのベンチレーテッドクロスドリルドディスクの組み合わせ。
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ポルシェ・ケイマンと真っ向勝負

エンジン。排気量3.5リッターで350psだから、比出力は先代のカップ260(1.8リッター+スーパーチャージャーで260ps)よりも低い。今回もまたスーチャーつきなので、カリカリの自然吸気エンジンと違ってピリピリしすぎず。それと、ターボと違って応答遅れ、ほとんどなし。でゴキゲン。ちょうどいい。「ハロップ(Harrop)HTV1320」なる過給器の中身というかコア部品はイートン(Eaton)のTVS。ルーツタイプの変形。型番はR1320。ローブは4葉、つまり断面のカタチでいうと4枚プロペラで160度ツイスト、つまり端から端までで160度ねじってある。それが2本かみ合って一対をなす。

速さの感じもちょうどいい。迫力ある見た目の印象からの期待を裏切らない程度に速い。速いけどオドカシ系の速さではないところもいい。ゆっくり走ってもモヤモヤしない。制御マップのモードを切り替えると回転上限がちょっと高くなる、ということはあとで知った。事前に知っていても切り替えなかったと思う。

あとそう、6MTのレシオ配分というか配列というか。資料には各段の数字も最終減速比も出てなくて、あと試乗の際に調べることもしなかったのだけど、乗った感じでは見事にクロースしていて気持ちいい。

デビュー年次が2011年ということで、資料にあった「Performance Comparison」の相手はポルシェの「ケイマンR」(つまり旧型)。そこの数字を拝借すると、0-100km/hの加速タイムは、ポルシェの5.0秒に対して4.0秒。最高速度は、ポルシェ282km/hでロータス274km/h。トン当たりの出力は238hp対293hpでエキシージSの勝ち。

新型エキシージS、チョイ乗りした印象はかなりよい。ケイマン(……のなかでよりガチなのは「S」でしょう)とこれのどちらにするかは、やはりかなり迷うところ。アタリマエだけど、オートマ以外NGだとポルシェの勝ち。それと、例えば予算の都合もあって素のケイマンのMT。本体612万円に最低限のオプション(フロアマット程度)、というのも大いにアリ(素のケイマンのMT、かなりサイコー)。けどケイマンSでサーキット走行も視野に入れると、エキシージSが手ごわい。あるいは、場合によっては勝ちっぽい。
そういう使いかたをするならタイヤは晴雨両用のほうに履き替えておきたいけれど、このレースパックつき、ロングツーリングでもきっと楽しい。へっちゃら。「これを運転して日本国中を旅したい」とすら思った。あと街乗りも。レーシングカーのファンタジーをそこそこかもっと満喫しながら。

それと、エキシージSのキラーコンテンツならぬキラーコンポーネンツとしては生ステ。ナマの手応えそのもののステアリング。それこそ、ファンタジーでもバーチャルでもなくリアル中のリアル。久しぶりに、乗り逃げしたくなった。

(文=森 慶太/写真=荒川正幸)

動力性能は0-100km/h加速が4.0秒、最高速は274km/h。最新の「ポルシェ・ケイマンS」(5.0秒、283km/h)と比べると、0-100km/h加速では「エキシージS」が勝り、最高速では一歩譲る感じだ。
動力性能は0-100km/h加速が4.0秒、最高速は274km/h。最新の「ポルシェ・ケイマンS」(5.0秒、283km/h)と比べると、0-100km/h加速では「エキシージS」が勝り、最高速では一歩譲る感じだ。
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ステアリングはパワーアシストのないいわゆる「重ステ」。低速走行時などにハンドルの重さを感じるものの、パワーアシスト付きでは得られないダイレクトなフィーリングを味わえる。
ステアリングはパワーアシストのないいわゆる「重ステ」。低速走行時などにハンドルの重さを感じるものの、パワーアシスト付きでは得られないダイレクトなフィーリングを味わえる。 拡大
「エキシージS」は、走行モードの切り替えが可能なDPM(ダイナミック・パフォーマンス・マネージメント)システムを全車に採用。走行モードで「オフ」を選択すると、ABS以外の姿勢制御システムを完全にカットすることができる。
「エキシージS」は、走行モードの切り替えが可能なDPM(ダイナミック・パフォーマンス・マネージメント)システムを全車に採用。走行モードで「オフ」を選択すると、ABS以外の姿勢制御システムを完全にカットすることができる。
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上級モデルの「エヴォーラ」にはAT仕様の「IPS」も設定されているが、「エキシージS」のトランスミッションは6段MTのみ。
上級モデルの「エヴォーラ」にはAT仕様の「IPS」も設定されているが、「エキシージS」のトランスミッションは6段MTのみ。
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テスト車のデータ

ロータス・エキシージS

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4080×1800×1130mm
ホイールベース:2370mm
車重:1180kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブスーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:350ps(257kW)/7000rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)205/45ZR17 88Y/(後)265/35ZR18 93Y(ピレリPゼロ トロフェオ)
価格:850万円/テスト車=945万円
オプション装備:プレミアムスポーツパック(30万円)/レースパック(38万円)/コントラストステッチ(5万円)/ダイヤモンドカット軽量鋳造ホイール Yタイプ5本スポーク(7万円)/ピレリPゼロ トロフェオ タイヤ(15万円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(0)/山岳路(10)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
 

ロータス・エキシージS
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