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ロータス・エキシージ スポーツ410(MR/6MT)

究極の趣味人にささぐ 2019.07.05 試乗記 山田 弘樹 過給機付きの3.5リッターV6エンジンを搭載した「ロータス・エキシージ」の最新モデル「スポーツ410」。7年にわたり連綿と施されてきた改良は、このクルマにどのような進化をもたらしたのか? 卓越した走行安定性と洗練されたエンジンの妙味を堪能した。

磨かれ続ける走りの質

ロータスにおいて、「エリーゼ」と「エヴォーラ」の間を埋めるモデルとして存在しているエキシージ。このクルマのラインナップは「S」からスタートし、次いでそのオープン版である「ロードスター」が登場。その後、ベースグレードとしての役目は「スポーツ350/スポーツ350ロードスター」へと引き継がれた。

ロータスは細かなブラッシュアップを適宜重ねるメーカーだけに、そのラインナップの変遷を把握することが難しい。2017年のマイナーチェンジ以降は、ストリートユースに重きを置いた「スポーツ」シリーズと、トラックユースに特化した「カップ」シリーズに大別される。当初はそれぞれに「スポーツ380」と「カップ380」をラインナップしていたが、現在はこれがスポーツ410と「カップ430」に進化を遂げている。

そして今回は、そのスポーツシリーズにおける最上級モデルとなる、エキシージ スポーツ410を試した。

スポーツ410に触れて思うのは、先に触れた細かくも地道なエボリューションが、その先にある“洗練”をしっかりとモノにしていることだ。筆者はエキシージSの時代からこれに触れ続け、ワンメイクレースの「Lotus Cup Japan」にも3シーズンほど参戦した経験を持つのだが、その走りは最初期のモデルから見違えるほど変わった。

まずその動力性能をつかさどるエンジンは、水冷式のインタークーラーを得たことで次なるステージへと飛躍した。具体的には、あのどう猛さをむき出しにしていた3.5リッターV6スーパーチャージャーの特性が、先んじて水冷式インタークーラーを投入したエヴォーラのそれが持つ、スムーズな回転上昇感に近づいたのだ。

現在、新規オーダーが可能な「エキシージ」は「スポーツ350」「スポーツ410」「カップ430」の3グレード。今回試乗したスポーツ410は、“公道向け”の上級モデルにあたる。
現在、新規オーダーが可能な「エキシージ」は「スポーツ350」「スポーツ410」「カップ430」の3グレード。今回試乗したスポーツ410は、“公道向け”の上級モデルにあたる。拡大
インテリアの仕様はシンプルそのもの。ドアパネルやセンターコンソールの表皮はアルカンターラが標準で、オプションでレザーにもできる。
インテリアの仕様はシンプルそのもの。ドアパネルやセンターコンソールの表皮はアルカンターラが標準で、オプションでレザーにもできる。拡大
高いホールド性を持つカーボン製のスポーツシート。表皮には、アルカンターラとレザーのコンビ(写真)や、フルレザー、タータンチェックのファブリックとレザーのコンビが用意される。
高いホールド性を持つカーボン製のスポーツシート。表皮には、アルカンターラとレザーのコンビ(写真)や、フルレザー、タータンチェックのファブリックとレザーのコンビが用意される。拡大
エンジンルーム内の様相は、水冷式インタークーラーの採用によって「380」以前のモデルとは全く異なっている。
エンジンルーム内の様相は、水冷式インタークーラーの採用によって「380」以前のモデルとは全く異なっている。拡大
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“普段走り”でも感じられるタイヤのインフォメーション

もちろんインタークーラーが備わっただけでエンジン特性が変わるわけではない。前身となるスポーツ380の段階で、スーパーチャージャーのプーリー径を変更し、燃料ポンプも高効率化するなどして、よりハイブーストな燃調マッピングを可能とする下地が作られていた。だからこそインタークーラーを得た効果が発揮され、416ps/7000rpm、410Nm/2500rpm-7000rpmという高出力化が可能となったのだ。

そしてこのパワーを受け止めるシャシーの性能も、明らかに変わった。パワーアシストのない小径ステアリングの手応えは相変わらずダイレクト感に満ちているが、その操舵感が軽やかなのだ。そして普通に走っているだけでも、路面に吸い付くような心地よさが得られる。ジオメトリーが変更されたのかは定かではない。しかし、切り始めから抵抗感が少なく、なおかつ路面からの入力は綿密に手のひらへと伝わってくる。

これには、サスペンションシステムが公道向けにチューニングされたナイトロン製3WAYダンパーに変更された効果が大きい。そのダンピングが「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」のキャラクターをそのまま乗り手に伝えるから、ぺったりと張り付くような手応えが感じ取れるのだと思う。

しなやかな乗り心地を実現しながらもスタビリティーが高いのは、同時に前後のスタビライザー(調整式)が、ハイレートな仕様となったからだろう。荷重変化に対して、バネレートを高めずともロールを抑えることが可能となる。

エンジンはトヨタ製の3.5リッターV6にハロップ製のスーパーチャージャーを組み合わせたもので、「スポーツ410」のものは416psの最高出力と410Nmの最大トルクを発生する。
エンジンはトヨタ製の3.5リッターV6にハロップ製のスーパーチャージャーを組み合わせたもので、「スポーツ410」のものは416psの最高出力と410Nmの最大トルクを発生する。拡大
ルームミラーに映る景色に注目。水冷式インタークーラーの搭載により、もともとよくはなかった後方視界は、ほぼ絶望的なものとなった。しかし、スーパーチャージャーのアクチュエーターが右足とリンクして動く様子が見られるところは、趣味性にあふれている。
ルームミラーに映る景色に注目。水冷式インタークーラーの搭載により、もともとよくはなかった後方視界は、ほぼ絶望的なものとなった。しかし、スーパーチャージャーのアクチュエーターが右足とリンクして動く様子が見られるところは、趣味性にあふれている。拡大
足まわりではタイヤサイズの変更も大きなポイント。前:215/45ZR17、後ろ:285/30ZR18というサイズは、サーキット走行を重視する「カップ」シリーズと同じで、前身にあたる「スポーツ380」より、リアタイヤが2cmワイド化されている。
足まわりではタイヤサイズの変更も大きなポイント。前:215/45ZR17、後ろ:285/30ZR18というサイズは、サーキット走行を重視する「カップ」シリーズと同じで、前身にあたる「スポーツ380」より、リアタイヤが2cmワイド化されている。拡大
足まわりの仕様は、ナイトロン製の3段階調整式ダンパーとコイルスプリング、アイバッハ製の調整式アンチロールバーの組み合わせ。従来モデルから刷新されている。
足まわりの仕様は、ナイトロン製の3段階調整式ダンパーとコイルスプリング、アイバッハ製の調整式アンチロールバーの組み合わせ。従来モデルから刷新されている。拡大

走行安定性を高めるエアロダイナミクスの進化

こうしたメカニカルグリップの素晴らしさに加えて、スポーツ410はエアロダイナミクスも高度に磨き上げられている。フロントバンパーならぬクラムパネルは、冷却効率を高めるべく開口部を拡大しながらも、張り出しが効いたカーボン製スプリッターを装着することでダウンフォースを獲得する。また、フロント開口部から導入された空気はホイールハウス内へと導かれ、タイヤの回転によって起こる乱流を低減。その空気をフェンダー後端から排出して揚力を抑える手法は、まさにレーシングテクノロジーである。

フラットな床下を流れる空気は、リアエンドの巨大なアルミ製ディフューザーで拡散される。ウイングは中央部分を落とした形状となる理由が不明だが、これはリアに過大なダウンフォースやドラッグを与えないためかもしれない。一方で、ルーフに邪魔されないクリーンな空気を受けられるウイング両端は高さを保つ形状となっている。こうした空力面における改良により、410スポーツは最大でフロント60kg/リア90kg、トータルで150kgに及ぶダウンフォースを獲得したという。

これらメカニカルグリップとエアロダイナミクスがかなえる走行安定性は、洗練されたエンジンの出力特性と素晴らしいマッチングをみせた。ゆっくり走らせてもそのハンドリングは奥深く、速度を上げるほどに接地感が高まっていく。前後の動的バランスも整っており、4輪にグリップがきちんと配分されている。ドライビングに集中するほどにエキシージの動きが体へと伝わり、どのようにブレーキを踏み、どのように操舵してアクセルを踏めばよいのかがわかってくるのである。

空力性能などの向上を図るべく採用された、新デザインのフロントマスク。左右の開口部の端には、ホイールハウス内へと空気を送るエアインテークが追加された。
空力性能などの向上を図るべく採用された、新デザインのフロントマスク。左右の開口部の端には、ホイールハウス内へと空気を送るエアインテークが追加された。拡大
複雑な形状をしたハイマウント型のリアウイング。テールゲートパネルともども、軽量なカーボン製となっている。
複雑な形状をしたハイマウント型のリアウイング。テールゲートパネルともども、軽量なカーボン製となっている。拡大
ボディー下部の空気の流れを整えるアルミ製のディフューザー。センター出しのエキゾーストシステムには、オプションで10kgの軽量化を実現するチタン製のものも用意される。
ボディー下部の空気の流れを整えるアルミ製のディフューザー。センター出しのエキゾーストシステムには、オプションで10kgの軽量化を実現するチタン製のものも用意される。拡大
「スポーツ410」の車両重量は、カタログ値で1110kg。車検証記載値でも1160kgと、400psオーバーの高出力モデルとしては異例の軽さである。
「スポーツ410」の車両重量は、カタログ値で1110kg。車検証記載値でも1160kgと、400psオーバーの高出力モデルとしては異例の軽さである。拡大

マルチシリンダーを選んだロータスの思惑

エキシージはスモールプラットフォームを使ったエリーゼの上位モデルとして、より高出力な多気筒エンジンを搭載することが使命づけられたスポーツカーだ。動力性能だけを思えば、このワイドトラックなシャシーをフル活用すべく、先代のように軽量な4気筒スーパーチャージャーを搭載する方が賢明なのだろうが、それをせずプレミアムスポーツ路線へとチャレンジした、ロータスの“意欲作”である。

マニア目線で言えばV6エンジンなど搭載せず、たとえ4気筒でも縦置きドライサンプ化して、その重心を低める努力をしてほしかった。それこそが本物のミドシップスポーツカーであり、本物のレーシングスポーツである。しかし、ロータスはわかっていたのだ。「ヨーロッパ」の手法を受け継ぎ、「エスプリ」で4気筒を縦置き搭載した“痛手”は、後に3.5リッターV8ツインターボを搭載しても挽回できなかった。市場は多気筒エンジンによるわかりやすいプレミアム化を望んだのだ。

だからこそロータスは、縦置き搭載化に伴うトランスミッションの融通も含め、労多くして功少ない、出費多くして売れない本格路線を選ぶよりも、横置きエンジンを技術でバランスさせる道を選んだのだと思う。ある意味これは、ポルシェが911のリアエンジンを技術で守り続けたことにも似ている。

2011年9月のフランクフルトショーで初公開された現行型「ロータス・エキシージ」。市販モデルの生産開始は2012年夏のことで、今年(2019年)でモデルライフは満7年となる。
2011年9月のフランクフルトショーで初公開された現行型「ロータス・エキシージ」。市販モデルの生産開始は2012年夏のことで、今年(2019年)でモデルライフは満7年となる。拡大
今や貴重な存在となりつつある、機械式の2眼メーター。赤い単色の液晶モニターは、時間や走行距離、残り燃料などを表示するのみで、今はやりのマルチインフォメーションディスプレイなどは装備されない。
今や貴重な存在となりつつある、機械式の2眼メーター。赤い単色の液晶モニターは、時間や走行距離、残り燃料などを表示するのみで、今はやりのマルチインフォメーションディスプレイなどは装備されない。拡大
「エキシージ」にはモード切り替え機能付きのESPが標準装備されており、「Drive」「Sport」「Race」「Off」の4種類から、状況に応じて最適な制御を選択できる。
「エキシージ」にはモード切り替え機能付きのESPが標準装備されており、「Drive」「Sport」「Race」「Off」の4種類から、状況に応じて最適な制御を選択できる。拡大

“4気筒のエキシージ”も見てみたい

そうして世に送り出されたエキシージは、およそ7年という歳月において、連綿とシャシー性能と空力性能を磨き上げてきた。さらにリアセクションの軽量化を図るべくリアウィンドウをガラスから樹脂製のルーバーに変え、スポーツ410ではテールゲートもろともカーボン製とした。乾燥重量はわずかに1054kgであり、エキゾーストシステムをチタン化することで、さらに重さをそぎ落とすこともできる。

加えて、大排気量でかつ自然吸気サウンドを残したスーパーチャージドエンジンは、回すほどに気持ちよくほえる。実際、その出来栄えに触れてしまうと、縦置き4気筒うんぬんと騒ぐマニア心も揺らいでしまう。

いまだに6段マニュアルトランスミッションを搭載し、2ペダルはトヨタ提供のトルコン式。正直なところ、“プリミティブスポーツ”を理由に体よく基本コンポーネンツの進化を拒絶するロータスのラインナップは、より現代的なライトウェイトスポーツカーである「アルピーヌA110」の登場で、かなり危うくなると筆者は思っていた。

しかしロータスは、スポーツ410でひとつの答えを示した。このスポーツカーは究極の趣味人が乗るべき一台だ。惜しむらくはその1400万円に届こうとする価格設定だが、エントリーグレードであるスポーツ350は、A110の1.8リッター4気筒252psに対して、3.5リッターV6 350psのアドバンテージを保ったまま、いまだにアンダー1000万円の価格帯にとどまってくれている。

それでも本当は、最もベーシックなラインナップとしてこのシャシーに4気筒エンジンを搭載したモデルを設定し、A110とガッツリ勝負するところを見せてほしいのだけれど。

(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

動力性能については、0-100km/h加速が3.4秒、最高速が290km/hと、「スポーツ380」(0-100km/h加速が3.7秒、最高速が286km/h)よりさらに向上している。
動力性能については、0-100km/h加速が3.4秒、最高速が290km/hと、「スポーツ380」(0-100km/h加速が3.7秒、最高速が286km/h)よりさらに向上している。拡大
「スポーツ410」のトランスミッションは6段MTのみで、「350」シリーズや「エヴォーラ」などに見られるようなATの設定はなし。写真の通り、内部機構が“むき出し”となっている。
「スポーツ410」のトランスミッションは6段MTのみで、「350」シリーズや「エヴォーラ」などに見られるようなATの設定はなし。写真の通り、内部機構が“むき出し”となっている。拡大
飾り気のない武骨なABCペダル。足元スペースは非常にタイトで、ソールの張り出した革靴などでは、到底自由なペダルワークは望めない。
飾り気のない武骨なABCペダル。足元スペースは非常にタイトで、ソールの張り出した革靴などでは、到底自由なペダルワークは望めない。拡大
最新の「エキシージ」は、磐石の走行安定性とパワフルかつ洗練されたエンジン特性が魅力のモデルだったが、このシャシーに直4エンジンを搭載した、より軽量でプリミティブなモデルも見たくなってしまった。
最新の「エキシージ」は、磐石の走行安定性とパワフルかつ洗練されたエンジン特性が魅力のモデルだったが、このシャシーに直4エンジンを搭載した、より軽量でプリミティブなモデルも見たくなってしまった。拡大

テスト車のデータ

ロータス・エキシージ スポーツ410

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4080×1800×1130mm
ホイールベース:2370mm
車重:1110kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:416ps(306kW)/7000rpm
最大トルク:410Nm(41.8kgm)/2500-7000rpm
タイヤ:(前)215/45ZR17 91Y XL/(後)285/30ZR18 97Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
燃費:--km/リッター
価格:1398万6000円/テスト車=1450万4400円
オプション装備:スペシャルペイント<スカイブルー>(46万4400円)/クラリオン製CD/MP3/WMAオーディオ(2万1600円)/フロアマット(3万2400円)

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1912km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:247.9km
使用燃料:27.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)

ロータス・エキシージ スポーツ410
ロータス・エキシージ スポーツ410拡大
山田 弘樹

山田 弘樹

ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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