アウディA3スポーツバック1.4 TFSI(FF/7AT)
価格に見合った価値はある 2013.11.26 試乗記 3代目となるアウディのコンパクトハッチバック「A3」に試乗。新たな機能を多数盛り込んだという新型の使い勝手、そして走りは?ただようプレミアム感
「アウディA3スポーツバック」を前にしたクルマ好きが素朴に思うこと。または自動車メディアに関わる人間が、なんとか答えをひねりだそうとする問題。それは、「『フォルクスワーゲン・ゴルフ』ではなく、あえてA3を買う理由があるのか?」である。
この日、試乗車を運転してきた編集部のSさんが、あっさり解決してくれた。「だって、見てくださいよ」と、センターコンソール上面から生える5.8インチの液晶ディスプレイに注意を促すと、ダッシュパネルに設けられたボタンを押す。と、液晶はスルスルと下方に吸い込まれ、見えなくなると同時にシャッター状になったふたがサッと閉まる。精緻な動きだ。もう一度ボタンを押すと、シャッター状になったふたがシャッと開いて、液晶がスルスルと上昇する。パッと画面が明るくなったかと思うと、ナビゲーションシステムの地図が表示された。
「どうです?」と胸を張るSさん。「さすがにプレミアムブランドだけあって、動きがスムーズだね。かつてボルボが用いたシステムを洗練させたわけだ」と反応すると、わかってねぇな、という顔をして、Sさんが説明してくれた。
「ゴルフは、まだ純正のナビがセンターコンソールに組み込まれていないんですよ。そのうち対応すると思いますけど、いまのところディーラーオプションでナビを選んで、後付けのディスプレイを追加装備するしかないんです」とのこと。
そうだったのか! さすがにSさん、日々クルマ写真のキャプションを書いているだけのことはある。
……と感心したのだが、A3のアドバンテージは長続きしなかった。ゴルフの国内販売が始まって半年もたたず、件(くだん)のナビゲーションシステムは改善を見た。ディスプレイはしっかりセンターコンソールに埋め込まれ、しかも大きさは8インチだとか! ううむ、アウディA3、あやうし。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
新たな操作デバイスにも注目
この日試乗したのは、新しいA3スポーツバックのうち、最もベーシックな「A3スポーツバック 1.4 TFSI」(308万円)。1.8リッター直4ターボ(180ps、28.6kgm)搭載の4WDモデル「1.8 TFSIクワトロ」(393万円)はもとより、同じ1.4リッターターボ(140ps、25.5kgm)を積む「1.4 TFSI cylinder on demand」(347万円)より非力なデチューン版(122ps、20.4kgm)である。
アウトプットが小さいうえ、さらに悔しいことがある。気筒休止システムを持たない悲しさ、カタログ燃費の面でも、1.4 TFSI cylinder on demandの20.0km/リッターに対して、1.4 TFSIは19.5km/リッター(いずれもJC08モード)と及ばないことである。まぁ、0.5km/リッターの差なら、実生活のなかでは測定誤差の範囲内だろう。ちなみに、この日、422.5kmを情け無用(!?)で走ったところ、満タン法で12.2km/リッターだった。
さて、2種類の1.4リッターモデルの価格差は、47万円。ベーシックグレードのオーナーが、まず検討すべきオプション装備は、新しいマルチメディアインターフェイスこと「new MMI」(30万円)だろう。コントローラーやスイッチ類を使い、液晶ディスプレイ内の情報と連動して、ナビ/ラジオ/電話/メディアをコントロールできるデバイスだ。
おもしろいのは、丸いコントローラー上面がタッチパッドの役割を持っていることで、指先でなぞって、操作を進められる。そのうえ、文字入力も可能! 惜しむらくは、右ハンドルなので、左手で、しかも日本語を使わなければならないこと。「なんとか実用的」といえるレベルだが、欧州マーケットのように、右手でシンプルなアルファベットを用いるなら、さぞかし使い勝手がいいことだろう。日本の場合、助手席の人がおもしろがって使ってくれることに期待したい!?
“曲がり”が楽しいコンパクト
もうひとつ、A3のナビゲーションシステムで感心したのは、音声認識機能の認識率の高さだ。「目的地」と言って、ズラズラと住所を述べるだけで設定完了。ボソボソと聞き取りにくいくぐもった声で話しかけても(自分のことです)、しっかり対応してくれる。「21世紀」を実感する瞬間である。ちなみに、「ガソリンスタンド!」「コンビニ!」などと言うと、最寄りの場所を検索してくれる。どこまでこちらの問いかけに応えてくれるか、試して見るのもおもしろかろう。
さらにMMIには、「Audi connect」と名付けられた新機能が含まれる。これは、クルマ自体が無線LANのルーターになるようなもので、車内がWi-Fiスポットとなる。パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレット端末が使いやすくなる……とはいっても、通信速度は「3G対応」。音声認識と比較すると(!?)実用度はいまひとつだが、「いつでもドコでもつながりたい」という欲求に応える試みとして、今後に期待したい。
最後に、A3のハンドリングに触れておきたい。高速道路上を、まるで軌道が敷いてあるかのような安定感をもって高速巡航するのが醍醐味(だいごみ)であるアウディ一族にあって、例外的に“曲がり”が楽しいのがA3だ。ステアリング操作に対する前輪のトレース性が高くて、なかなか繊細なハンドリングだ。試乗車は純正の16インチタイヤ装着車ということもあって、適度な軽快感がいい。
パワーは、前述の通り、ゴルフハイラインの140psにも及ばぬ122psだが、デュアルクラッチタイプの7段ATが、エンジンのパワーを上手に拾ってくれるので、非力さを感じない。「もう少し後半の伸びが……」と感じるのは、高速道路での追い越し加速時だが、その場合、法定速度を超過している恐れがあるので、注意した方がいい。
A3スポーツバックは、街なかでは上質感があり、峠ではちょっと夢中になるほど楽しく、それでいて、アウディらしい高速での安定感も備えている。「人はなぜゴルフではなくA3を買うのか?」。理由はさまざまでありましょうが、ひとたびA3スポーツバック1.4 TFSIのオーナーになったなら、「もっと安い値段でゴルフのハイラインが買えたのに……」と後悔することはないはずだ。
(文=青木禎之/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
アウディA3スポーツバック1.4 TFSI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4325×1785×1465mm
ホイールベース:2635mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:122ps(90kW)/5000-6000rpm
最大トルク:20.4kgm(200Nm)/1400-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91W/(後)205/55R16 91W(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト5)
燃費:19.5km/リッター(JC08モード)
価格:308万円/テスト車=373万5000円
オプション装備:オプションカラー<メタリック/パールエフェクト>(6万5000円)/コンビニエンスパッケージ<アウディ パーキングシステム(フロント/リア)+リアビューカメラ+アドバンストキーシステム>(21万円)/MMIナビゲーションシステム(30万円)/アダプティブクルーズコントロール(アウディ ブレーキガード機能付き)(8万円)
テスト車の走行距離:1351km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(7)/山岳路(3)
テスト距離:422.5km
使用燃料:34.5リッター
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。






























