アウディA3セダン 1.8TFSIクワトロ Sライン(4WD/6AT)
セダンならではの美点 2013.12.25 試乗記 アウディのCセグメントモデル「A3」に4ドアモデルが登場。ほかのボディータイプにはない、セダンだからこその魅力とは。トランクを付け足しただけではない
決して派手な存在ではない。けれど日本のユーザーにとっては待望のニューカマーといってもいいはずだ。アウディは「A3」のラインナップに新たにセダンを追加する。主力たる「A4」は、サイズが代を重ねるにつれて大きくなり、最近ではちょっと持て余す感じも出始めていた。そんな中に投入される「A3セダン」は、まずはその手頃なサイズで大きくアピールしてくる。
東京モーターショーでは「S3セダン」がお披露目されたが、その少し前にドイツ・デュッセルドルフにて初対面を果たしたときの第一印象も、率直に言って特に驚かされるようなものではなかった。全長4456mmのショートデッキなセダンフォルムは凝縮感があって悪くないなとは思ったものの、全般的に見れば、A3がセダンになれば、まあこんな感じだろうなと想像した通りだったわけである。
けれどよくよく見ていくと、実はそのデザイン、「スポーツバック」とは結構違っている。単にトランクを付け足しただけではなく、実はフロントのフェンダーパネルなども別物になっていて、つまりスタイリングはゼロからとはいわないが、イチからセダンとして再構築されているのだ。
11月中旬の試乗ということで、ドイツでの法規に基づいて足元には17インチのウインタータイヤが装着されていたが、本来ならオプションで19インチまで用意されるという。少なくとも見栄えの面からすれば、このあたりを履かせてみたくなるデザインである。
肝心な室内空間は、まず前席についてはスポーツバックと変わらず。後席についてはルーフラインが断ち切られるため頭上の余裕が若干スポイルされる感はあるものの、大人2名で乗っても、これなら大きな不満を抱くことはないだろう。
ラゲッジスペースはスポーツバックより大きく容量は390リッターを確保。横幅はあるし、開口部も十分に取られているから使い勝手は良さそうだ。
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「乗り心地」<「走り」の足まわり
試乗車は「1.8TFSIクワトロ Sライン」。パワートレインはスポーツバックにも搭載されているもので最高出力180ps、最大トルク28.6kgmを発生する。軽量化によりEU表記で1395kgに抑えられた軽いボディーに対しては十分以上。実用域のトルクがあって扱いやすいだけでなくトップエンドまでスムーズに吹け上がる、走り好きをニヤリとさせる特性を持ったエンジンと、歯切れよくショックとは無縁に変速する6段Sトロニックの組み合わせは、どんなシチュエーションでも満足感の高い走りを可能にしている。
引っ掛かったのは、乗り心地が全般に硬めなことだ。足元からは始終コツコツとした感触が伝わってきて、マンホールや路面の継ぎ目などの段差を乗り越える時には、ガツンッと大きめのショックを感じることも。試乗車はスポーティー仕立てのSラインであり、本来のタイヤではなかったので今回だけで評価はできないが、もう少ししなやかでもいいという感じ。後席に人を迎え入れる機会はスポーツバック以上にあるだろうセダンであればなおのことだ。
その代わりに、というわけではないだろうがフットワークは気分がアガる仕上がり。ステアリングの切り始めの反応は、おそらくはウインタータイヤのせいで曖昧な感触なのだが、いざ曲がり始めてからのいかにも前後バランスに優れた旋回感は、ちょっとしたカーブを通過するだけでも気分を高揚させてくれる。
A3スポーツバックも、特に1.8TFSIクワトロではマニアックなほどのコーナリングのよろこびを味わわせてくれるが、あるいはセダンはそれ以上といってもいいかもしれない。きっと車両重量やボディー剛性のバランスの違いが、この差につながっているのだろう。
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ハードウエアの実力はあるが……
しばらく走らせるうちに、もう一点セダンならではの美点に気付くことになった。それは静粛性の高さである。スポーツバックと比べるとリアシート後ろの隔壁が1枚多いのが効いているようで、ロードノイズなど後方より入ってくる音が抑えられ、こもり感も聞こえてこない。ウインタータイヤはロードノイズが大きく、試乗中はその音に始終悩まされていたのだが、おかげで随分助けられた。
総じて見れば、セダンボディーであるという以上に特筆するような何かがあるというわけではない。しかし見た目良く、走り良く、快適性や実用性もまずまずとなれば、ことさらに文句を言う必要はないだろう。人気モデルとなる可能性は、とても高い。
2014年1月には日本でも正式に発表されるこのA3セダン、スポーツバックの1.8TFSIクワトロが393万円ということは、こちらは400万円台の値付けとなるのだろうか。いくらフルタイム4WDとはいえ「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW 3シリーズ」も射程圏内に入る価格で、果たして勝ち目はあるのだろうか。この辺りはなかなか気掛かりではある。
いずれにしても、望むとすればスポーツバックではほとんどがオプション、あるいは未設定になってしまっている先進安全装備の数々を余さず搭載しての登場となってほしいとは強く思う。今、日本のユーザーが何を求めているかということに応えるサイズでありハードウエアである。同様に細かな装備などの面でも、それに応える商品企画であってほしいのだ。
この辺りのサイズの4ドアモデルといえば、あちらはもっとクーペ寄りではあるが、すでにメルセデス・ベンツが「CLAクラス」にて先行している。より実用性が高く、ブランドイメージもますます上昇中のアウディが、ここでどんな戦いを見せるのか。今後の戦いにも注目したい。
(文=島下泰久/写真=アウディ ジャパン)
テスト車のデータ
アウディA3セダン 1.8TFSIクワトロ(参考)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4456×1796×1416mm
ホイールベース:2637mm
車重:1370kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:180ps(132kW)/5100-6200rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1250-5000rpm
タイヤ:(前)205/55R17/(後)205/55R17(ダンロップSPウインタースポーツ3D)
燃費:5.6リッター/100km(約17.9km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は本国仕様の「1.8TFSIクワトロ」もの。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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