アウディA3スポーツバック1.4 TFSIシリンダーオンデマンド(FF/7AT)
主流となりえるか 2014.01.28 試乗記 気筒休止機構を備えた「A3スポーツバック」に試乗。さらなる低燃費を目指したこのモデルの実力はいかに?それとわからぬCOD
まず、気筒休止機構(シリンダーオンデマンド=COD)を持つエンジンから見ていこう。4気筒のうち、負荷の軽いときだけ2番と3番を休止させるこの機構の目的は、もちろん燃費の改善にある。気筒休止という文字だけ読むと、4気筒が2気筒になってしまうわけだから、ブルブルと振動が増えると思うかもしれないが、まったくそんな素振りは感じられない。
では、4気筒が2気筒に切り替わる瞬間がわからないかといえば、そんなこともない。タコメーターを注視していると一瞬、針の動きが止まるというか、一目盛りほどピクンと戻るような動きをすることがある。
そうはいってもこれは、単に針が電気信号に反応しているだけのことだ。もともとタコメーターの針はエンジンとダイレクトにつながってはおらず、針の動きそのままにショックというか、G(加速度)を感じるわけではない。タコメーターを見ていなければ、まったくそれを知る手だてはない。
ピストンの動きを止めてしまうのではなく、燃料供給と点火を止めるだけで、4つのピストンはちゃんと動いている。同様の機構を搭載する「フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン」(名称はアクティブシリンダーマネジメント<ACT>)では、1250rpmから4000rpmの間で、発生トルクが最大8.7kgm(85Nm)の範囲内で作動する、と説明されている。ジックリ観察しようと思う前から、無意識のうちにも何らヘンな動きを見せず、肩透かしを食らった気がした。
アイドリングストップの作動もまったく不都合なく、車両の発進・停止という普段の操作の中にうまく取り込まれていて、特別な意識は持たないで済む。唯一、AT車ゆえに、エンジンが停止していてもブレーキペダルを踏み続ける必要のある点が特記事項か。停車中サイドブレーキを引いて足をフロアで休ませることはできない。ブレーキペダルから足を放せば、即座にエンジンが始動してしまうからだ。これもニュートラルに戻してからならば問題ない。もちろん信号待ち程度の短時間ならば、ブレーキを踏み続けても疲れはしない。
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期待どおりの好燃費
前述のとおり、CODの目的は燃費向上にある。今回の試乗では387km走って総平均燃費は14.1km/リッターと、期待したとおりの好燃費を示してくれた。これは満タン法による数値であり、ドライブコンピューターによる燃費では15km/リッター後半の数字も確認している。給油誤差などもあり、今ではドラコンの方が精度は高いという見方もあるが、いずれにせよ燃費はもくろみ通りに良好といえる。
この燃費の良しあしは、1.4リッター車同士で比較するよりも、むしろスリーサイズが全長4325×全幅1785×全高1435mm 、重量が1330kgの大きな車としてみるべきだろう。通常の2リッタークラスと比較した方が、最新技術を駆使した小排気量エンジンの恩恵を素直に受け取ることができる。
ところで、気筒休止エンジンについては、かつて三菱自動車が直4で採用したことがあるし、アウディのV8やクライスラー、古くはキャデラックにV8「L62 V8-6-4」というのがあった。考え方として新しいものではないが、いつの時代にも低燃費技術は歓迎される。エンジニアならば一度はやってみたい仕事なのだろうか。
もっとも、気筒休止機構は正論ではあっても、主流になっているわけでもない。そう難しいメカでもないし、投資するコストとメリットのバランスなのだろうが、例えばエンジンブレーキ時の燃料カット機構などは世界中のさまざまなメーカーが採用しており、好対照をなしている。
気筒休止技術も、最終的にはそこまで普及するのだろうか。過去を振り返っても広まったためしはなく、企業が自社の技術水準の高さを誇示するというよりは、余裕を見せているだけのような気すらする。今、アウディが属するフォルクスワーゲングループの技術水準が世界一のレベルにあることに、異を唱(とな)える人は少ないだろう。
これまでアウディとフォルクスワーゲンは、お互いの個性を尊重してきた。アウディは代々エンジンを縦置きにしており、一方でフォルクスワーゲンは横置きと、同じFFの駆動方式でも設計からして違った。4WDの機構もあえて個別の方式を採用してきた。
それがA3の登場を機にゴルフとの共通化が図られ、小型アウディはフォルクスワーゲンの兄弟車のような内容となった。車格では、どちらかといえばアウディが高級な設定で、フォルクスワーゲンは量産車として廉価な設定だったが、近年はその差が縮まり、フォルクスワーゲンの高級志向が強まっている。
機敏なフットワークが身上
今回の試乗では、A3スポーツバックと、登場したばかりの「ゴルフヴァリアント」を乗り比べる機会があった。両モデルの外観や内装の違いについては写真を見ていただくとしよう(ゴルフヴァリアントの試乗記はこちら)。内外装は光り物や仕上げなど、主観による判断が支配的だから、そこに高級感を見いだすかどうかは個々人の自由である。
一方、乗り心地などは、見た目以上の差があった。最近では極太で大径のタイヤ/ホイールを履くのは常識となり、そのバネ下重量がもたらすハーシュネスのコツコツいう小さな反発にも、われわれは慣らされてしまった感がある。まずは前後Gをブッシュコンプライアンスによって一瞬なだめ、動きはダンパー減衰力で吸収。最終的には、強固なボディー剛性でガッシリと受け止める、というストーリーはできあがっている。
A3もまた、不快でない範囲にうまく調教されている。ドイツ車の中でも、この辺のチューンはうまい方の部類に入る。だが、フォルクスワーゲンチームはさらに次の段階に進んでおり、微小のストロークと伸び縮みの節度を考慮した絶妙なダンパーチューンでボディーの動きはよりフラットに、段差や凸凹は穏やかに通過する。
乗り心地の高級感という観点からだと、フォルクスワーゲンの勝ちだ。車はお金さえ掛ければいいものができるとは限らず、チューニングは頭の勝負ともいえる。同じ企業グループでも、ブランドによって僅差ながらも差を生じるのは、傍観者としては見ていて面白い。
しかし、A3スポーツバックの美点はそこにとどまらない。無駄な動きはA3もゴルフヴァリアントも少なく、ステアリング操作に追従するボディーの一体感はどちらも優秀でソリッド感覚に溢(あふ)れるものの、左右に振り回したときの動きはA3の方が機敏で軽快、身のこなしの鋭さがひときわ光る。
これはステアリングのギア比を小さくしただけの、見掛け上のレスポンスではない。ちゃんとヨーが発生し、遅れずに旋回を開始する。アウディは昔からこの部分を詰めて、レスポンスを重視してきた。
A3スポーツバックはボディー形状からすればワゴンに近いが、セダンやハッチバックのように軽く操れるところがいい。スポーティーうんぬんの論議は車自体の特性ではなく、操る側の問題であるが、そうしたドライバーの意思を忠実に伝え得る。
同様に穏やかな運転にも従順で、過敏な挙動や出しゃばるそぶりはみせない。メーカーがユーザーに押しつける技術ではなく、ユーザーが知らないところで貢献する技術。これこそアウディが提唱している「技術による先進」の具体例といえる。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
アウディA3スポーツバック1.4 TFSIシリンダーオンデマンド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4325×1785×1465mm
ホイールベース:2635mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最大出力:140ps(103kW)/4500-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)225/45R17 91Y/(後)225/45R17 91Y(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:347万円/テスト車=430万円
オプション装備:パノラマサンルーフ(13万円)/アドバンストキー(21万円)/バング&オルフセン サウンドシステム(11万円)/アダプティブクルーズコントロール(8万円)/MMIナビゲーションシステム(30万円)
テスト車の走行距離:2949km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:386.6km
使用燃料:27.5リッター
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/15.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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笹目 二朗
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