トヨタ・ヴォクシーZS 8人乗り/ノア ハイブリッドG 7人乗り
真面目に進化 2014.02.21 試乗記 “最高のミニバン”を目指して開発に臨んだという、最新型の「トヨタ・ヴォクシー/ノア」。その使い勝手は? 乗り心地は? 個性の異なる2モデルでチェックした。首位奪還を目指して
6年半ぶりにフルモデルチェンジを受け、3代目となった「トヨタ・ヴォクシー/ノア」のマスコミ向け試乗会が開催された。
新型ヴォクシー/ノアに課せられた使命は、ずばり「5ナンバーサイズのミニバンにおける売り上げNo.1奪回」だろう。日産のホームページで「セレナ」をクリックすると、誇らしげに「3年連続 販売台数No.1ミニバンがさらに進化」というフレーズが踊る。この位置を奪い返すのがトヨタの悲願だ。
結論から書くと、新型ヴォクシー/ノアは、7人乗りまたは8人乗りのミニバンを真剣に必要とする人に向けて、丁寧に造り込まれていた。
丁寧な仕事ぶりについて書く前に、新型ヴォクシー/ノアのグレード構成から紹介したい。
ヴォクシーとノアは、機能からグレード構成にいたるまで、基本的にはまったく同じクルマである。何が違うのかといえば、顔が違う。「“毒気”のあるカッコよさ」をテーマにしたというヴォクシーは、上下2段の構成となるフロントグリルからヘッドランプにかけてのシャープな造形が特徴。一方「ミニバンの王道をいく“堂々感”」を打ち出すノアは、がばっと口を開いたかのような大きなフロントグリルで差別化を図る。
サングラスの似合う凛々(りり)しいパパがヴォクシーで、どんと構えた頼りがいのあるお父さんがノア、といったところか。
用意されるパワーユニットは2つ。ひとつは、基本的には「プリウス」と共通のハイブリッドシステムで、もうひとつは2リッターのガソリンエンジン。ハイブリッド車が7人乗り仕様のFF(前輪駆動)だけなのに対して、ガソリンエンジン車は7人乗り仕様と8人乗り仕様、しかもそれぞれFFと4WDを選ぶことができる。
また、ガソリンエンジン車には、フロントマスクの力強さとボディーのワイド感を強調するエアロボディーが用意される。標準ボディーが5ナンバーサイズに収まるのに対し、エアロボディーのグレードは3ナンバーのサイズとなる。
今回は、ノアのハイブリッド車と、ヴォクシーのガソリン車(エアロボディー)を中心に試乗を行った。
大事な「広さ」は大幅アップ
まずはノアのハイブリッド車から試す。どうしてもこのクラスのミニバンとしては初となる、本格的なハイブリッドシステムに注目したくなるが、走りだす前にいくつか「おっ」と思うポイントがある。
まずスライドドアを開けて2列目シートに乗り込むのが、先代モデルより格段に楽になっていることに気付く。理由は2つ。
ひとつは、フロアの高さが先代より85mm低い360mmとなっているのだ。先代は360mmの位置にステップを付けることで乗り降りのしやすさを確保していたけれど、新型はステップの助けを借りることなく、室内へダイレクトに足を踏み入れることができる。スライドドアの開口部が先代より75mm広がったことも、乗り降りのしやすさにつながっている。
足を踏み入れると、そこには広々としたスペースが広がる。従来型より全高が25mm低くなっているにもかかわらず、フロアを低くすることで室内の高さは先代より60mmも余裕がある1400mm。この高さは、室内でのお子さんの着替えをする時や、自転車を積み込む時などに重宝するはずだ。
乗り降りがしやすくなっただけでなく、2列目シートの居住性も向上している。目玉は、3列目シートをハネ上げて2列目シートを思いきり後退させる「スーパーリラックスモード」。2列目シートは810mmもスライドさせることが可能で(7人乗り仕様のみ)、リムジンの気分を味わうことができる。
また、7人乗り仕様の2列目シートは左右にスライドさせることもできる。2列目の2つのシートを中央に寄せれば、3列目シートへのアクセスが容易になる。
3列目シートの足元スペースも大きく改善された。従来型では“体育座り”を強いられたけれど、新型では大人がきちんとした姿勢で座ることができる。ホイールベース(前後輪の間隔)を25mm、全長を100mm延ばしたことが効いている。
このように、ミニバンというボディー形状の最大のウリである広さは、先代モデルから大きく前進した。
運転席に座っての第一印象は、視界がいい、というものだ。まず、ボンネットの先端までしっかり見えるように作られている。また、サイドウィンドウの下端が60mm引き下げられ、フロントウィンドウ両サイドのAピラーが30mm細くなるなど、ガラスエリアが拡大したことも見晴らしのよさにつながった。
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燃費に限らず走りも違う
いざ走りだすと、さすがに練りに練られたトヨタのハイブリッドシステムだけあって、スムーズに加速する。モーターだけで走るEV走行での発進から、さらにアクセルを踏み込めばエンジンが加勢する。エンジンとモーターの連携は、アライバ(荒木雅博選手と井端弘和選手)で組む中日の二遊間コンビのように息が合っている。
プリウスに比べて200kg以上、「プリウスα」と比較しても100kg以上重いだけに、同じシステムを積むとはいえノア ハイブリッドの加速は力があり余っているという感じではない。けれども、家族や友人と平和に移動するという目的に対しては十分なパワーがある。
ノア ハイブリッドの23.8km/リッターという優秀な燃費に目を奪われがちであるけれど、2リッターのガソリン車と乗り比べるとハイブリッド車の静粛性の高さに気付く。モーターとエンジンを合わせたハイブリッド車のシステム出力は136psだから、2リッターガソリン車の152psには及ばない。けれども、低回転域から力を発揮するモーターのおかげで、ストップ&ゴーが続く場面ではハイブリッド車のほうがスムーズに加速する。
その静かさや快適性を考えると、ハイブリッド車は省燃費モデルであると同時に、新型ヴォクシー/ノアにおける上級仕様であるともいえる。
パワートレインの滑らかさとは逆に、走りだしてすぐに気になったのは、フロアから伝わってきたブルブルとした振動だ。ただし、これは試乗したステージの影響が大きかった。2014年2月末に販売開始となるハイブリッド車はまだナンバーが付いておらず、試乗会が行われた東京ドイツ村の敷地内でしか試すことができなかった。
敷地内の舗装がクセ者で、一見きれいに見えるけれど小さな凹凸が無数にある。乗り心地が硬いのとも違う、上下に細かく揺さぶられる、今まで感じたことのない不思議な現象は、路面コンディションのせいだった。この事実は、ヴォクシーのガソリン車で一般道に出てからわかった。
乗るほどに“しっかり”
ヴォクシーのエアロボディー(グレード名は「ZS」)で一般道に出る。前述したように、エアロボディーはガソリンエンジン車のみの設定だ。
それにしてもこのフロントマスクにはインパクトがある。新型ヴォクシー/ノアの開発をとりまとめた水澗英紀チーフエンジニアは「G's(トヨタがカスタマイズを施したスポーティーなコンプリートカー)が要らないくらい、やり過ぎのセンを狙った」とおっしゃっていたけれど、街の中で普通のクルマと並ぶと、ギラッと目立つ。
走りだしてみてのハイブリッドとの違いは、明確だ。低速域での余裕や滑らかさ、静粛性はハイブリッドに分があるものの、4500rpm以上回した時のパワー感はガソリンエンジン車に軍配が上がる。ちなみに、2リッターのガソリンエンジン車のJC08モード燃費は16.0km/リッター。ライバルの日産セレナの「Sハイブリッド」と同じだから、決して悪くはない。
試乗会敷地内で感じた乗り心地への疑問は、一般道から高速道路へと進むにつれて薄れた。やはりあの敷地内の舗装は特殊だった。一般道での乗り心地はソフトというよりしっかり感を伝えるタイプのもので、高速道路に入って速度を上げるにつれてその印象は強まる。
路面の凹凸を乗り越えても上下の揺れがふわふわと続くことはなく、しっかりと収まる。ハンドルの手応えもカチッとしていて、頼りがいがあるものだ。
前出の水澗チーフエンジニアによれば、先代モデルは標準ボディーとエアロボディーで乗り味に差を付けたけれど、新型では基本的にはどのグレードも同じテイストにしているとのことだった。
ZSグレードは16インチのタイヤを履くことや(他グレードは15インチが標準)、ハイブリッド車はガソリンエンジン車に比べて約100kg重いことから、乗り心地はまったく同じというわけではない。それでも、日本の道路環境で快適に移動するための乗り心地という意味では、今回試乗した各モデルで共通していた。
室内の広さと使い勝手のよさ、燃費のよさ、運転のしやすさと快適さ。新型ヴォクシー/ノアは、冒頭に記したようにミニバンに求められる性能を真面目に追求したモデルだった。日産セレナ、「ホンダ・ステップワゴン」との熾烈(しれつ)な競争により、バトルはどんどんハイレベルになっている。開発側は大変だろうけれど、ユーザーにとっては好ましい状況だ。
(文=サトータケシ/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
トヨタ・ヴォクシーZS 8人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1730×1825mm
ホイールベース:2850mm
車重:1640kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:152ps(112kW)/6100rpm
最大トルク:19.7kgm(193Nm)/3800rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92H/(後)205/60R16 92H(ヨコハマ・デシベルE70)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:257万円/テスト車=317万1650円
オプション装備:ツインムーンルーフ(11万5500円)/ワンタッチスイッチ付きパワースライドドア デュアル<両側>(5万7750円)/SDナビゲーションシステム+ヴォクシー・パノラミックサウンドシステム<ETCユニット、インテリジェントパーキングアシスト等含む>(38万1150円)/SRSサイドエアバッグ+SRSカーテンシールドエアバッグ(4万7250円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ノア ハイブリッドG 7人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1695×1825mm
ホイールベース:2850mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:99ps(73kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/4000rpm
モーター最高出力:82ps(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgm(207Nm)
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)195/65R15 91S(グッドイヤー・デュラグリップ)
燃費:23.8km/リッター(JC08モード)
価格:297万円/テスト車=322万2525円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万1500円)/ワンタッチスイッチ付きパワースライドドア デュアル<両側>(5万7750円)/スマートナビ G-BOOK mXモデル(16万3275円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション(東京ドイツ村構内路)
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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