メルセデス・ベンツGLA250 4MATIC(4WD/7AT)/GLA45 AMG エディション1(4WD/7AT)
期待の新星 2014.03.03 試乗記 メルセデス・ベンツのSUVファミリーに、ニューモデル「GLAクラス」が登場。果たして、どんなクルマに仕上がっているのか? 日本でも発売が予想される2つのモデルでチェックした。ちょっとお手軽なSUV?
「Aクラス」のボディーを流用しながら、サスペンションの設定変更や“大径シューズ”の採用で背の高さを演出。比較的わずかなコストで新たなデザインを起こせる前後の専用バンパーなども与えて、世界的に流行の兆しが見えるコンパクトSUVのカテゴリーに参入――
昨年秋に正式発表され、ヨーロッパ市場に向けてはこの春の発売がアナウンスされている「GLAクラス」とは、いわばそんな“ちょっとお手軽なモデル”なのだろうと、当初は認識していた。
実際、国際試乗会が開催された南スペインはマラガの街で、数年前にオープンしたというしゃれた自動車博物館のエントランス前にずらり並んだテストカーたちを目の前にしても、そんな印象が変わることはなかった。
そのうえ、ホイールベースはAクラスと同一で、15cmほど全長が伸びた分は主にリアオーバーハングの延長に由来、幅も2cm程度しか増えていないと知るにつけ、前述の思いは確信へと変わっていった。
ところが、開発担当のエンジニア氏に「外観上でAクラスと異なる部分は?」と尋ねると、意外にも「ほとんど全てである」という。後で確認をとったところ、その“ほとんど全て”から除外されるのは、わずかにドアハンドルとドアミラーのケースくらいのものだった。
「ならばもっと、Aクラスとは大きく異なるイメージで訴求できるはずなのに!」という思いが個人的には残るものの、実はGLAは、意外に(?)気合の入った一作。そしてそれは、現行「Bクラス」から始まったメルセデスの新世代コンパクトカー戦略を完結させる、総仕上げとしての意味をも持つモデルなのだった。
360psの最強モデルも
「メルセデス初のコンパクトSUV」と、メーカー自らがうたうGLAのラインナップは、先行するAクラスなどに準じた、1.6リッターと2リッターの2種のターボ付き直噴ガソリンエンジン搭載モデルと、チューニングが異なる2種の2.1リッターターボ付きディーゼルエンジン搭載モデル。そして、すでに「A45 AMG」「CLA45 AMG」にも搭載されている、“量販2リッターユニット最強”を誇る360psの心臓を積んだ「GLA45 AMG」も、当初から用意されている。
今回テストドライブを行ったのは、そうした中から日本への導入が確実視される「GLA250 4MATIC」と「GLA45 AMG」の2タイプ。後者は、ルーフ後端に標準仕様とは別ものの派手なウイングをあしらい、専用のフロントグリルやディフューザー、ホイール、ドアミラーを装備、インテリア各部にも赤の差し色が配され、一段とスポーティーな雰囲気をたたえる。サスペンションもよりハードに固められた「エディション1」仕様だ。
GLA250のボディーサイズは、全長×全幅が4417×1804mm。それよりもフロント側に13mm、リア側に15mmオーバーハングが長いGLA45 AMGは、全長4445mm。全高(1479mm)は1.5mを下回るので、日本特有のパレット式立体駐車場にも問題なく収まる計算。GLA45 AMGの場合、標準仕様でもエディション1仕様でも、「ノーマル比15mmのローダウン」と報告されている。
洗練された“足”がいい
ガソリン車、ディーゼル車ともに、よりリーズナブルな価格をアピールするべく、最もベーシックなグレードには前輪駆動モデル(FF)が用意されるGLAクラス。
ただし今回の試乗会は、「まずSUVとしてのキャラクターを明確にアピールしたい」という理由から、すべて「4MATIC」と称する油圧多板クラッチ式の4WDシステムを搭載するモデルで統一されていた。
例えばGLA250の場合、FF車と4WD車の間には0-100km/h加速タイムで0.1秒の――スタート直後のトラクション伝達能力の違いに起因すると思われる――差が存在する。が、そうは言っても乾いた舗装路面を走行する限り、“4WDらしさ”を実感できるようなシーンは皆無というのが現実だ。
同じパワートレインを搭載したAクラス、Bクラス、そしてCLAクラスでも感じたように、「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)らしからぬ微低速シーンでの滑らかな変速動作」に感心しつつ、市街地→高速→ワインディングロードへとステージを進めて行くと、このGLAクラスの足が、兄弟車の中で最もきれいに動いてくれることを教えられた。
とはいえ、路面の凹凸に対する振動の振れ幅には敏感で、良質な路面と荒れた路面とでの印象が大きく異なるのは、気になった部分だ。また、足がよく動くようになった反面、「上下の動きは、やや大きめかな」という印象も受けた。
だが、それでも走りだしの瞬間から常時ひょこひょことした動きに見舞われた、これまでのメルセデスのコンパクトシリーズに比べれば、ずっと洗練されたように思えるのは確かだ。そしてそれが、このモデルがSUV風味を狙ったためなのか、あるいは時間の経過とともにコンパクトシリーズ全般がリファインされた結果なのか、ちょっと判断がつきかねる、というのも正直な感想だ。
実用性にも死角なし
そんなGLA250から、GLA45 AMGへと乗り換えると、なるほどこちらは分かりやすく“Fun Car”に仕立てられていた。
なぜか全般的に、操作感はGLA250よりむしろ軽くしつけられているものの、それでも路面情報はたっぷりと伝えられる。狙ったラインを正確にトレースできるステアリングは、このクルマで最も「さすがはメルセデスらしい走りだナ」と感じさせてくれる部分だ。
例の強心臓が“量産ユニット最強”を実感させてくれたのは、主に2300rpmあたりから上のゾーンだ。
その回転数より下でも、基本設計を共にするGLA250用ユニットと比べて遜色はなく、十分太いトルク感を味わわせてくれる。が、よりターボブーストが強力に働く前述の領域に持ち込んでアクセルペダルを深く踏み込めば、「これはちょっと尋常ではないな」と誰もが納得するに違いない力強さで、体がシートバックに押しつけられるのだ。
そんなパワーユニットと並んで、日常シーンでもこのモデルの走りはひと味違うと教えられたのが、いかにも強靱(きょうじん)な設計を連想させられるブレーキ。フロントに4ピストンフィクスドキャリパーをおごったうえで、ドリルドディスクローターを用いるこのモデルのブレーキは、そのペダルタッチも利き味も秀逸。決して“エンジンパワー負け”などしていない。
より強化された「AMGパフォーマンス・サスペンション」が採用されているため、その乗り味はさすがにハードだ。それでも、「確かに硬いがさほど不快ではなく、むしろ“荒っぽさ”が目立ったこれまでの前輪駆動型メルセデスよりも、クルージングが楽」と思えたのも事実だった。
居住性はもちろん、後席使用時で100リッター以上を上乗せしたラゲッジスペースを設けるなど、Aクラスに劣らぬ実用性もアピールするGLAクラス――もしかすると、これこそが、新世代のコンパクトメルセデスの真打ちといえるのかもしれない。
(文=河村康彦/写真=メルセデス・ベンツ日本)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLA250 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4417×1804×1494mm
ホイールベース:2699mm
車重:1505kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:210ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/45R19 95V(後)235/45R19 95V(グッドイヤー・エフィシェントグリップ)
燃費:6.5-6.6リッター/100km(約15.2-15.4km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--
オプション装備:--
※欧州仕様車の数値
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
メルセデス・ベンツGLA45 AMG エディション1
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4445×1804×1479mm
ホイールベース:2699mm
車重:1510kg(燃料90%搭載時)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:360ps(265kW)/6000rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/2250-5000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR20 96Y(後)235/40ZR20 96Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:--
オプション装備:--
※欧州仕様車の数値
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。