ベントレー・コンチネンタルGT V8 S(4WD/8AT)/コンチネンタルGT V8 S コンバーチブル(4WD/8AT)
GTのもうひとつのあり方 2014.03.12 試乗記 「ベントレー・コンチネンタルGT」シリーズに、よりスポーティーな「V8 S」が加わった。21ps強化されて528psに達した4リッターV8ツインターボエンジンと、引き締められた足まわりがもたらすその走りとは?「V8」モデルを一段とスポーティーに
ここ日本での2003年のデビュー当初には1990万円というプライスタグを掲げており、それが衝撃を巻き起こしもした「コンチネンタルGT」だが、その後、価格はじわじわと上昇しており今では2240万円に達している。そんな中、当時をほうふつとさせる1990万円というベース価格で登場した「コンチネンタルGT V8」が、喝采をもって迎えられたのは当然だったと言っていいだろう。
何しろ周囲のモデルだって10年前に比べれば軒並み価格は上昇していて、例えば「ポルシェ911ターボ」だって、今や2000万円オーバーなのだ。となれば、ポルシェじゃなくてベントレーをと考える人が現れたって不思議ではない。
新登場の「コンチネンタルGT V8 S」は、まさにこうした層にアピールするためのモデルと言える。単に価格がリーズナブルだというだけでなく、軽快なスポーティー性を備えたV8モデルの魅力を一層強調することで、実際に若いか、もしくは気持ちの若いユーザーに初めてのフライングBとして選んでもらおうというわけである。
そんな意気込みは、まず外観に表れている。車高はV8に比べて10mmのローダウン。足元には軽快なオープンスポークデザインの専用20インチホイールが収まる。スプリッターと呼ばれるフロントスポイラー、サイドシルはデザイン上だけでなく空力的な効果も備えたアイテム。そしてフロントフェンダーには“V8 S”のバッジが備わる。決して派手ではない大人のスポーティーさが良い。
より“曲がる”セッティングへ
スペックで目をひくのは、やはりエンジンパワーの向上である。アウディと共同開発された気筒休止機構付きのV型8気筒4リッター直噴ツインターボエンジンは、ECUのマッピングが変更されて最高出力を21ps増の528psに、最大トルクを20Nm増の680Nm(69.3kgm)へとそれぞれ高めている。
公表されている燃費は10.6リッター/100km(約9.4km/リッター)。このパフォーマンスからしてみたら十分、いや十二分と言うべきだろう。大容量の燃料タンクを生かして、航続距離は805km以上と、まさにGTの名にふさわしいパフォーマンスを備えている。
サスペンションのセットアップも完全に見直されている。前述の通り車高を10mm下げたエアサスペンションは、スプリングレートも前43%、後ろ33%と大幅に引き上げており、それに併せて減衰力も強化。リアスタビライザーも54%レートが高められ、ブッシュ類も最大70%硬度アップが図られている。また、前輪のキャンバーも15%寝かされた。
さらに、それに合わせてパワーステアリングには、よりダイレクトなレスポンスを得るべくチューニングを敢行。ESCのプログラムにも手が入れられ、車輪のスリップの許容範囲を広げるとともに絞ったエンジンパワーのリカバリーも迅速化されているという。
このセットアップを見れば、曲がる性能にフォーカスされていることは明らか。これまでとは、ちょっと違った走りを味わえそうな期待が高まる。
リズミカルな足取り
まず乗り込んだのはクーペ。走りだすと、まずはその乗り心地に驚かされた。コンチネンタルGTのイメージからすると、これが相当締め上げられているのだ。
もちろん剛性感たっぷりのボディー、そして適切な減衰力設定のおかげで不快に感じるようなものにはなっていないのだが、この思い切りからはまさに走りへの強い意志を感じることになったのだった。
実際、迫り来るコーナーをひとつふたつ、そこそこのペースでクリアする頃には、その意味をハッキリと実感できた。身のこなしの軽快さは想像以上で、やや重めの反力を返すステアリングを切り込むとノーズがまったく躊躇(ためら)いを見せずに軽やかにイン側へと吸い込まれていく。ステアリングは切り込むというよりは、当てるという感じでちょうどいいぐらいだ。
低速コーナーでもアンダーステアは軽微で、奥で曲率がキツくなるような場面でも舵角(だかく)を増やすだけで素直にラインを引き戻せる。車重2トンをはるかに超えることなど完全に忘れてしまうほどだ。立ち上がりもやはりアンダーステアは軽いから思い切ってアクセルを踏んでいける。いやいや、こんなにリズミカルな走りを、コンチネンタルGTが楽しませてくれるとは想像しなかった。
あまりの楽しさにどんどんペースが上がり、コーナーへの進入スピードも高まっていく。このクルマの場合、オプションのカーボンセラミックブレーキは必須と思っていた方が良さそうである。
積極的に操りたくなるGT
一方、エンジンパワーの向上分については率直に言って明らかに体感できるというほどのものではなかった。もともと、このV型8気筒エンジンは吹け上がりが軽快で、パワーも全域で十二分。21psというのは、つまりたったの4%でしかないのだから、まあ無理はない。
とはいえスペック上、0-100km/h加速は4.8秒から4.5秒に短縮されている。その場で乗り比べれば、差は明らかというところなのだろう。
ちなみに試乗車にはオプションのスポーツエキゾーストが組み込まれていて、その乾いたサウンドが気分を高揚させてくれた。オプションばかりオススメしているようだが、やっぱりこれもゼヒ選びたいところだ。
一般的なGTの条件が、快適な室内でリラックスしたまま長い距離を疲れ知らずでドライブできるといった感じだとしたら、コンチネンタルGT V8 Sの狙いは少し違っているかもしれない。もちろん、そんな風にも過ごせるが、そのステアリングを握ったら、きっともっと積極的に走らせてしまうはずだからだ。そうやって楽しんでいるうちに気付けば随分な距離を走っていた……なんてことに、きっとなる。これもGTのひとつのあり方というところだろうか。
まだ実際にも若いつもりの筆者にとって、シリーズ中一番のお気に入りとなったコンチネンタルGT V8 Sは、日本には2014年の秋口に上陸するもようだ。価格はV8とW12の中間辺りとなりそう。この価格帯のプレミアムスポーツの購入を検討しているといううらやましいアナタには、秋まで待つ価値はあるかもよと伝えておこう。
(文=島下泰久/写真=ベントレー モーターズ)
テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGT V8 S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4806×1944×1404mm
ホイールベース:2746mm
車重:2295kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:528ps(389kW)/6000rpm
最大トルク:69.3kgm(680Nm)/1700rpm
タイヤ:(前)275/40ZR20/(後)275/40ZR20
燃費:10.6リッター/100km(約9.4km/リッター。EUドライブサイクル 複合モード)
価格:--/テスト車=--
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ベントレー・コンチネンタルGT V8 S コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4806×1944×1403mm
ホイールベース:2746mm
車重:2470kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:528ps(389kW)/6000rpm
最大トルク:69.3kgm(680Nm)/1700rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21/(後)275/35ZR21
燃費:10.9リッター/100km(約9.2km/リッター。EUドライブサイクル 複合モード)
価格:--/テスト車=--
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
メルセデスAMG GTクーペ/メルセデスAMG GT 4ドアクーペ【試乗記】 2026.3.31 メルセデスAMGの「GT63 S Eパフォーマンス クーペ」と「GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション」は、同じAMG GTを名乗りながらも片や2ドア、こなた4ドアのクーペモデルだ。この両者には、どんな特徴や違いがあるのか。クローズドコースで確かめた。
-
レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)【試乗記】 2026.3.30 スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。
-
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】 2026.3.28 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
NEW
街から看板が消えたシェルがエンジンオイルで再出発 ブランドの強みを生かせるか
2026.4.2デイリーコラムサービスステーションの再編で、おなじみの看板が街から消えたシェルは、エンジンオイルで存在感を示そうとしている。F1パイロットも登場した新製品の発表イベントで感じたシェルの強みと、ブランド再構築の道筋をリポートする。 -
NEW
第955回:イタリアでは事情が違う? ニュースにおける高級外車の“実名報道”を考える
2026.4.2マッキナ あらモーダ!目立つから仕方ない? ベントレーやランボルギーニといった高級輸入車だけが、事故を起こすたびに“実名報道”されてしまう理由とは? この現象は日本固有のものなのか? イタリア在住の大矢アキオが、日本の事故報道におけるふとした疑問を掘り下げる。 -
NEW
MINIクーパー コンバーチブルS(FF/7AT)
2026.4.2JAIA輸入車試乗会2026JAIA輸入車試乗会で「ディフェンダー」の次に乗り込んだのは新型「MINIクーパー コンバーチブルS」。重厚でタフな世界から一転、屋根を全開にして走りだせば、飛ばさなくても笑みがこぼれる、幸せな時間が待っていた。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)/CR-V e:HEV RS(4WD)【試乗記】
2026.4.1試乗記ホンダの「CR-V」が日本市場に帰ってきた。先代モデルの発売時(2018年)も2年ぶりの復活で(少し)盛り上がっていたが、今回もまた3年半ぶりの復活である。モデルライフが途切れ途切れなところは気になるものの、新型のすっきりと上質な乗り味はまぎれもなくプレミアムな領域に達している。 -
今こそブランドの伝統と強みを前面に マツダと三菱のPHEVを乗り比べる
2026.4.1デイリーコラム日産自動車をはじめとした国産6ブランドがBEVとPHEVを集めた合同試乗会を開催。マツダと三菱のPHEVを乗り比べ、それぞれの特性や開発陣の考え方の違い、近い将来に向けたビジョンなどに思いをはせた。 -
第107回:さよならワグナー(後編) ―革新から正統へ 変節するメルセデスと欧州カーデザインの未来―
2026.4.1カーデザイン曼荼羅「EQ」シリーズの失敗を機に、保守的なイメージへ大転換! メルセデス・ベンツのカーデザインは、一体どこへ向かおうとしているのか? 名物デザイナー、ゴードン・ワグナー氏の退任を機に、スリーポインテッドスターと欧州カーデザインの未来を考えた。

































