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ボルボXC60 T5 SE(FF/8AT)

クールジャパンなボルボ 2014.03.14 試乗記 下野 康史 「Drive-E」と呼ばれるボルボの新世代パワートレインを搭載した「XC60 T5」。新開発の2リッター4気筒ターボの実力を試した。
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“これから”を担うパワーユニット

おさらいすると、ボルボ初のクロスオーバーSUVが「XC60」である。現行60シリーズには、ほかに「S60」(セダン)と「V60」(ワゴン)があるが、2008年のデビューはXC60が最も早く、09年に国内導入された際には、いわゆる「ぶつからない技術」の「シティセーフティ」を世界に先駆けて全車標準装備するクルマとして話題になった。
ボルボも最近はモデル数が増えたと思ったら、2013年は「ゴルフ」のガチンコライバル「V40」が日本でも大ヒットし、販売の半分を占めるまでになった。そんななかで、XC60のシェアは約1割にとどまる。そのエンジンのひとつが新しくなったことがどれほどのニュースなのか、と思われるかもしれないが、これがビッグニュースなのである。
S60/V60にも搭載された新エンジンは、直噴2リッター4気筒ターボ。「200気圧、つまり2000mの深海の水圧と同じ燃圧」と言われてもピンとこないが、とにかくクラストップの高圧インジェクターをはじめ、高出力と環境性能を両立させる最新技術が盛り込まれている。このユニットは“Drive-E”と名づけられた新世代パワートレインの第1弾で、これから出るボルボのガソリンエンジンはすべてこの直噴2リッター4気筒がベースになる。他の現行モデルも、すべてこのエンジンのチューン違いに換装されていくはずだ。フォードと決別したボルボが社運を賭けて久々に独自開発したメイド・イン・スウェーデンのパワーユニット、という出自に比べたら、旧型比23%改善のJC08モード燃費により、ボルボ初の100%減税をゲット、なんていうニュースはドメスティックなものである。

新開発の直噴2リッター4気筒ターボエンジンは、245psと35.7kgmを発生する。
新開発の直噴2リッター4気筒ターボエンジンは、245psと35.7kgmを発生する。 拡大
テスト車にはオプションの「レザー・パッケージ」(25万円)と本革スポーツシート(10万円)が装着されていた。
テスト車にはオプションの「レザー・パッケージ」(25万円)と本革スポーツシート(10万円)が装着されていた。 拡大

ボルボXC60 T5 SE(FF/8AT)【試乗記】の画像 拡大
後席は40:20:40分割可倒式で、状況に応じて荷室容量を拡大することができる。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
後席は40:20:40分割可倒式で、状況に応じて荷室容量を拡大することができる。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます) 拡大
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回転フィールが軽い

ボルボ車のモデル名に使われる「T4」「T5」「T6」の数字は、エンジンの気筒数ではない。現在、ボルボには4気筒、5気筒、6気筒があり、Tのあとの数字がたまたま符号していることもあるため、勘違いしがちだが、正解は出力区分である。すなわち、200ps以下がT4、201~250psがT5、それ以上がT6だ。と、余談のつもりで書き始めたのだが、そうか、気筒数だけでも3種類あるエンジンのラインナップを4気筒の2リッターに一本化するのが、新しいDrive-E戦略なのか、といま気づいた。
試乗したのは「T5 SE」(559万円)。ベースのT5(499万円)より装備を豪華にした18インチモデルである。旧型よりパワーは5psアップしたが、245psだから、まだT5だ。
興味の焦点はもっぱらパワーユニットだが、まず新型2リッター4気筒ターボ本体の印象を言えば、非常に軽やかな好エンジンである。回転フィールが軽い。結果としてFFながら1.8トン近くあるヘビーウェイトを感じさせない。XC60って、こんなに軽く走ったっけ、と思った。
アイドリングストップ機構が付き、ボタンで選択できるエコプラスモードが新設された。エンジン、変速機、エアコンなどを経済運転させるほか、65km/h以上の軽負荷時にアイドリングで惰性走行させるエココースト機能がこのモードではオンになる。高速道路も少し走ったが、そんなの付いていたっけ、と思うほど違和感なく作動した。


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センターコンソールには、省燃費走行モード「エコプラスモード」の切換ボタンが設置された。
センターコンソールには、省燃費走行モード「エコプラスモード」の切換ボタンが設置された。 拡大
「エコプラスモード」走行時はエンジンレスポンス、シフトタイミングなどが変更され、65km/h以上での走行時にアクセルペダルから足を離すとトランスミッションとエンジンが切り離されて慣性走行する「エココースト」機能が作動する。
「エコプラスモード」走行時はエンジンレスポンス、シフトタイミングなどが変更され、65km/h以上での走行時にアクセルペダルから足を離すとトランスミッションとエンジンが切り離されて慣性走行する「エココースト」機能が作動する。 拡大

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トランスミッションはアイシン製

新型2リッター4気筒ターボに組み合わされる変速機は、アイシンAW製の新しい8段ATである。コード名“AW F8F45”。最大トルク450Nm(45.9kgm)までのエンジンに対応するボルボの新世代ATの役を担う。
このATのおかげで、100km/h時のエンジン回転数は8速トップでわずか1600rpm。5速まで落としてもまだ3000rpmに届かない。3速で4700rpmまで上がったところでやっとエンジンらしい音がする。それくらい新型XC60は静粛性も高い。
先述した高圧インジェクターをはじめ、エンジンの制御は日本のデンソーが担当している。ボルボとデンソーとの関係はすでに長く、98年の5気筒エンジンからだという。新型パワートレインの開発にあたって、まずデンソーに出された注文は、「故障したときもドライバーがパニックにならない運転性能の確保」だったというのが、いかにもボルボらしい。
今回の試乗会では、スウェーデンから来日したパワートレインのプロダクトマネジャーに続いて、アイシンAWとデンソーの開発者も技術解説に立った。ボルボ側のリクエストを受けて、ボルボ・カー・ジャパンが両社に申し入れて快諾してもらったそうだが、輸入車インポーターのプレス試乗会で、日本のサプライヤーがプレゼンテーションをしたのは初めてではなかろうか。
フォードのコントロールから抜け出して、エンジニアリングも製造もオール・スウェディッシュ、と、ボルボのプロダクトマネジャーは強調していたが、クールジャパン的なひいき目で見ると、新エンジンはボルボと日本のサプライヤーとのタッグで生まれたともいえる。その新世代パワートレイン戦略に賭けるボルボ。そう考えると、ますますボルボを応援したくなりませんか?

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸)


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装着されるタイヤのサイズは235/60R18。
装着されるタイヤのサイズは235/60R18。
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テスト車にはオプションの「セーフティ・パッケージ」(20万円)が装着されていた。
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テスト車のデータ

ボルボXC60 T5 SE(FF/8AT)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1890×1715mm
ホイールベース:2775mm
車重:1770kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:245ps(180kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)235/60R18 108V/(後)235/60R18 108V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:559万円/テスト車=644万7000円
オプション装備:メタリックペイント<トワイライトブロンズメタリック>(8万円)/セーフティ・パッケージ(20万円)/レザー・パッケージ(25万円)/本革スポーツシート(10万円)/チルトアップ機構付き電動ガラスサンルーフ(17万2000円)/自動防眩機能付きドアミラー(3万円)/ステアリングホイールヒーター(2万5000円)※価格は、いずれも5%の消費税を含む。

テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:3476km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

ボルボXC60 T5 SE
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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