第5回:見て、乗って、思わずため息
輸入車チョイ乗りリポート~1000万円オーバー編~
2014.03.13
JAIA輸入車試乗会2014
インポートカーのなかでも、文字通りに“ケタ違い”の存在であるお値段4ケタ万円の高級車たち。思わず嘆息してしまうようなその魅力を、ドイツ、イギリス、イタリアの計4台のプレミアムカーを通して紹介しよう。
スーパーなスーパーカー
アウディRS 6アバント……1520万円
世にいうスーパーカーは、スーパーなところが限られている。「目をむくような加速」や「異次元のコーナリング」を味わわせてくれる反面、2人しか乗れなかったり、荷物が積めなかったり、車高が低すぎて街中で気を使ったり。
悲しいかな、「あこがれのあの人は、いっしょにいるとストレスばかり……」なんてことになりかねない。
そんなネガを拭い去る“真のスーパーカー”こそ、「RS 6アバント」だ。なにせ、5人乗りである。しかもワゴンなのである。
たっぷり積めて、当たり前。後席だって、ひざの前にはこぶしが3個。「アウディドライブセレクト」で“ダイナミック”(一番ハードな走行モード)を選んでも、掛け心地は快適そのもの。これなら、安心してみんなをエスコートできる……0-100km/h=3.9秒の走りで!
それがどれほどのものかって? 同じ四駆で比べるなら、ポルシェの「911カレラ4」(4.5秒)はブッチぎり。「フェラーリ・フォー」(3.7秒)も、うかうかしてはいられない。なにも飛ばさなくてもいい。560psのワゴンというだけで、痛快なことこのうえない。
「日常でもフルに役立つ、スーパーなスーパーカー」。1500万円はお値打ちと思いますが、いかがでしょう?
(文=webCG 関/写真=峰 昌宏)
現実となった「近未来」
メルセデス・ベンツS550ロング……1535万円
最高に居心地がいいことを「天国」と例えるならば、「メルセデス・ベンツS550ロング」は「天国に一番近いクルマ」と言ってもいいだろう。
もちろんこの例えを自動車に持ち込むと「縁起でもない」ということになるのは分かっている。最新のテクノロジーを駆使したドライバー支援システム「インテリジェントドライブ」によって、S550ロングは安全性も世界トップレベルなのだから、そういった意味では(あまり品のいい例えではないが)「一番遠いクルマ」でもある。
最新の安全・快適装備は「近未来」を現実の物にしている。レーダーセンサーとステレオカメラ、赤外線カメラによる車両周辺の監視は、「条件によっては」とのただし書きがつくものの、人間の注意力よりも高性能だ。
新型「Sクラス」の目玉ともいうべき技術、カメラで検知した路面の凹凸にあわせてボディーの動きを制御する「マジックボディコントロール」もまさしく未来だ。試乗してみて、効果のほどは……実を言うとあまりよく分からなかったのだが、こういった技術はむしろ「分からない」方がうまく働いているということなのだろう。「何かが作動している」という違和感を覚えることはなかった。
それにしても、ここ数年の安全装備の進歩には目を見張るものがある。このまま行けば、本当に近い将来「交通事故ゼロ」の世の中が実現するかもしれない。そのためにはこのS550ロングに搭載されているようなハイテク安全装備が、低価格車にも普及する必要がある。
お金持ちの方には、どんどんS550ロングを購入していただき、安全装備の価格低下に貢献してもらいたいものだ。
(文=工藤考浩/写真=峰 昌宏)
ひとつも無駄がない!
マクラーレン12Cスパイダー……3000万円
「緊張ではない、解放するスポーツだ。」
1990年に「ホンダNSX」がデビューしたときのキャッチフレーズである。マクラーレンが送り出した初のロードカー「F1」を設計したゴードン・マーレーは、その開発にあたってNSXをベンチマークにしていたという。
それから20年余りを経て登場した「12Cスパイダー」も、まさにそんな一台だ。ドライバーはリラックスして、運転だけに集中できる。
今回の試乗会のスターは「ランボルギーニ・アヴェンタドール」だったけれど、一番“乗れる”(気分になる)クルマはこの12Cスパイダー。誤解を恐れずに言えば、それはもう、想像をはるかに超えた“気安さ”である。
625psのハイパワー。ミドシップの後輪駆動。0-100km/h加速3.1秒、0-400m加速10.8秒。これらスペックや派手なスタイルは、乗り込むまでやや緊張を強いるけれど、シートに着いてドアを閉めれば別世界。ドライビングポジションは見事に決まるし、走り始めた瞬間から快適至極。掛け値なしに高級サルーン並み。そしてアクセルを踏み込めば、あまりの速さに目が回る。こんな乗り物ほかにある!?
12Cをガレージにおさめるのは、フェラーリやポルシェなど、さまざまなマシンを乗り継いできた人が大半だとか。まぁ、それはそうだろう。人生初のスーパーカーとしてこれを選ぶのは、あまりに理性的に過ぎるもの。
(文=webCG 近藤/写真=峰 昌宏)
つくづく高嶺の花
ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4……4100万2500円
コックピットドリルを受けて、12気筒に火を入れる。はやる気持ちを抑えながら顔を上げると、大勢のギャラリーがこっちを見ている。ガイシャばかりの試乗会でも、別格の存在感。イタリアン・スーパーカーの面目躍如だ。
極太タイヤが跳ね上げる小石の音を聞きながら、一般道に躍り出る――なんて前フリをしたところで、今回はチョイ乗り。“真の実力”なんてわかりません。申し訳ありません。
それでも、背後からのごう音だけで、どれほどのクルマなのかはうかがい知れる。戦闘機ばりのインテリアも、これで何ができるのかを無言のまま伝える。
そんな猛牛「アヴェンタドール」は、街中で驚くほど扱いやすい。まずATというのがひとつ。そのシフトやアクセルの反応も、基本的にマイルドだ。段差のある駐車場では、フロント部分を持ち上げられる。
ようやく後ろが見えないことに気付いて「カウンタック・リバース」(ドアを上げてサイドシルに腰掛け、車外を直接見ながらバックする方法)を試してみるも、なんのことはない、リアビューカメラも付いていた。
これなら毎日だって乗れそうだ。まずは宝くじを買うことだ! 鼻息を荒くして発着場に戻ってくると、なぜかみんなが笑っている。「驚くほど似合わない」って……。
おカネがあっても、買っちゃダメ!? 誠に高嶺(高値)の花である。
(文=webCG 関/写真=峰 昌宏)
※価格は、いずれも5%の消費税を含む。

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。