ルノー・キャプチャー ゼン(FF/6AT)
昔からのフランス車好きに 2014.04.08 試乗記 単なるお買い得仕様にあらず。「ルノー・キャプチャー」のエントリーグレード「ゼン」の、上級グレードとはひと味違う魅力に触れた。モノスペースにSUVのテイストをプラス
春は別れと出会いの季節。だからというわけじゃないけれど、「ルノー・キャプチャー」のデビューと入れ替わるように、ヨーロッパでカタログ落ちしたモデルがあるのを知っているだろうか。正解は「モデュス」。正規輸入されていなかったので、日本では知名度の低いクルマだったけど、2代目「ルーテシア」をベースとしたコンパクトなモノスペースだった。
ルノーのモノスペースといえば、ひとクラス上のCセグメントに「セニック」という、ヨーロッパにおけるこのクラスのミニバンのパイオニア的存在がラインナップされている。こちらは一時期、日本にも正規輸入されていたから、覚えている人もいるだろう。そこでBセグメントにも、似たようなパッケージングを持つモデュスを送り込んだのだが、どうやら思うような結果を残せなかったようだ。
間もなくヨーロッパでは、同じBセグメントのクロスオーバー「日産ジューク」が売り上げを伸ばしはじめる。ルノーと日産はアライアンスを組む仲間だから、もともとSUVが得意な日産にこのジャンルは任せてもよさそうだが、クロスオーバーに注目が集まりつつあるとなれば、無視するわけにはいかない。そこでBセグメントのモノスペースを、クロスオーバーテイストで生まれ変わらせようとしたのだろう。
ルノーとクロスオーバーの結び付きにピンとこない人がいるかもしれない。しかしフランスといえば、ダカールラリーを生んだ地であり、ルノーもこの競技で総合優勝を含む活躍を記している。フランス全体に枠を広げれば、かつてはアフリカに多くの植民地を持っていたし、たぶんパリダカの影響だろう、オフロードバイクで街中を駆け巡るライダーもよく見かける。
そんなエピソードを思い出したのは、試乗したキャプチャーが上級グレードの「インテンス」ではなく、ベースグレードたる「ゼン」だったことが大きい。
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シンプルで落ち着いた内外装
多くの人がキャプチャーと聞いて思い浮かべるのはインテンスの姿であるはずだ。テレビCMや雑誌広告に登場しているのはこちらだし、ルーフをホワイトあるいはブラックで塗り分けたツートンカラーはとにかく目立つ。キャプチャー=ツートンと認識している人さえいるかもしれない。17インチのアルミホイールの造形も動きを感じる。
それに比べると、シングルトーンのボディーをまとうゼンは、16インチのアルミホイールを含めてプレーンだ。日本語の「禅」が語源のこの言葉、フランスでは「冷静」「平静」という意味に使われるそうで、たしかにこのエクステリアには似合っている。
でもシンプルなおかげで、独特のパッケージングがストレートに分かる。ルーテシアより120mmも高いルーフが、ミニバンっぽい印象を与えるのだ。最低地上高も200mmと、80mm上がっているのだが、それ以上に背の高さが目立つ。モノスペース的なキャラクターを持たされたような気がするのだ。「カングー」ほどの空間は必要ないけれど、ルーテシアより広いクルマが欲しいという人のためのルノーという感想を抱いた。
キャビンもまたインテンスより落ち着いている。オレンジ系のカラーコーディネートは用意されず、グレー系のみとなるし、ジップシートクロスと呼ばれる着せ替え可能なシート表皮や、ゴムのワイヤーを使った前席背後のコードポケットもない。
でもパッケージングそのものは共通。前席は乗り降りしやすい絶妙な高さで、後席は一段高く、見晴らしが良い。その後席は160mmもの前後スライドを持つおかげで、格上のCセグメントに匹敵する広さを確保できるし、荷室はフロアボードを上下2段階に移動可能で、後席を畳めば容量を最大で1235リッターまで拡大できる。こうして見てくると、モノスペースに近い空間の持ち主であることが分かるだろう。
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よりしっとりと、よりルノーらしく
パワートレインはグレードによらず共通で、1.2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンに、ルノーではEDCと呼ぶデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。つまりルーテシアと同じ内容だ。
車両重量もグレードによらず1270kgで、ルーテシアより80kg重くなるが、加速はまったく不満なし。しかも最近急速に増えてきたダウンサイジングターボの中では、力の立ち上がりが圧倒的になだらかなので、リラックスしてドライブできる。後で個別に借り出して計測した燃費は、高速道路中心とはいえ16.4km/リッターと上々だった。
ここまでの部分はグレードによる差はないけれど、乗り心地やハンドリングは明確に異なる。インテンスでは205/55R17のタイヤサイズが、ゼンでは205/60R16になるからだ。
数あるクロスオーバーの中でも、キャプチャーはサスペンションストロークを生かした、しっとり感の強い乗り心地が特徴だ。背の高いクルマの走らせ方を熟知したルノーらしいしつけ方である。タイヤのエアボリュームが大きいゼンでは、そのしっとり感がより強調される。昔のルノーを思わせる乗り味なのだ。
その分、このうえなく滑らかなパワーステアリングの切れは、少しだけ穏やかになる。でもコーナーに入れば高次元のロードホールディングを発揮し、安心できるグリップ感を届ける。ステアリングやシートを通してタイヤの状況がしっかり伝わってくるから、数分もすれば自信を持ってペースを上げていける。その点はインテンスと共通だ。
他のブランドからの乗り換えを考えている人にアピールするのは、ツートンカラーや着せ替え可能なシートを備え、フラット感重視の足まわりを持つインテンスだろう。しかし僕のように、昔からフランス車に親しんできた人間は、プレーンな仕立てにインチダウンしたタイヤを履くゼンに引かれる。ルノー・ジャポンは相変わらず好き者の心をつかむのがうまい。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ルノー・キャプチャー ゼン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4125×1780×1565mm
ホイールベース:2605mm
車重:1270kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:120ps(88kW)/4900rpm
最大トルク:19.4kgm(190Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92H/(後)205/60R16 92H(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:--
価格:256万9000円/テスト車=256万9000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:2484km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:168.1km
使用燃料:14.3リッター
参考燃費:11.8km/リッター(満タン法)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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