第237回:東京〜神戸530km
「ボルボXC60エコドライブチャレンジ」に参戦
2014.04.18
エディターから一言
![]() |
2014年3月に行われた、メディア対抗の「VOLVO NEW DRIVE-E パワートレイン エコドライブチャレンジ 2014」に『webCG』も参加した。
「Drive-E」のエコ性能を体験
せっかく、新型2リッター直4ターボエンジン搭載の「XC60 T5 SE」を、東京から神戸までという長距離で味見できるのだから、オイシイところを思う存分堪能したいところだが、今回はエコランということで、当然ながら燃費を意識して走らなければならない。
アクセルペダルの上の右足に、自由に力を込めることが許されないおよそ530kmのドライブは、かなりの我慢が強いられるものになるのではないかと予想していたが、その覚悟はいい意味で裏切られた。
ボルボご自慢の新世代パワートレイン「Drive-E」は、ボルボ自らが開発しスウェーデンのシュブデにある工場で生産される2リッター直4直噴ターボの「T5エンジン」に、こちらも新開発となる8段ATが組み合わされる。
新型T5エンジンは、最高出力245ps、最大トルク35.7kgmを発生し、従来型より5psと3kgmアップしながら、燃費性能はJC08モードで23%改善の13.6km/リッターを達成している。これによって、XC60のT5モデルはボルボで初めてエコカー減税の100%減税対象車となった。「パワーがアップして燃費も向上したXC60で、ぜひエコドライビングを楽しんでください」というのが今回の企画を主催するボルボ・カー・ジャパンの狙いである。
朝7時30分に東京タワー近くにあるボルボ・カー・ジャパンの本社を出発し、一路神戸空港を目指した。参加したのは自動車メディアを中心とした12媒体で、往路と復路でそれぞれ6媒体ずつが記録に挑戦する。
『webCG』からは工藤と、高橋カメラマンが参戦することとなった。『webCG』チームは往路の参戦で、復路組は翌日の朝に神戸空港から東京へと戻ってくる。
復路は都内の渋滞に見舞われてからのゴールになるはずなので、往路チームの方が有利では? との予想で往路組を選んだのだが、果たしてそれが吉と出るか凶と出るか……。
絶妙な8段AT
出発してすぐ、首都高の芝公園入り口から都心環状線に乗り、3号線から東名〜新東名〜伊勢湾岸道〜東名阪〜新名神〜名神というルートで神戸空港を目指すことにした。
XC60には省燃費走行ができる「エコプラスモード」が搭載されている。センターコンソールのボタンを押せば、シフトのタイミングやエンジンレスポンス、アイドリングストップのタイミングを省燃費方向に振った設定になるほか、トランスミッションとエンジンを切り離して慣性走行する「エココースト機能」が作動する。
このエコプラスモードは、エンジンキーを抜くたびにオフになってしまうので、スタート後は忘れずにオンにしなければ、今日の勝負に勝ち目はない。
忘れないように「エコプラス、エコプラス」と念じながら首都高を走った。
幸いなことに首都高の流れは順調だったので、難なく東京料金所を越えて東名へと入ることができた。それ以降は、一番左の車線をATが8速に入る80km/hで巡航していった。
当初は、人間が車速をコントロールするよりも、アダプティブクルーズコントロール(ACC)のお世話になった方が燃費向上に貢献するだろうと思い、設定していたのだが、ACCがオンだと先ほど述べた「エココースト機能」が動作しないことに気づいたので、人力クルーズコントロールに切り替えた。
加減速をできるだけせず、無駄なアクセルのオンオフなくスムーズに走ることが要求されるエコランは、普通のドライビングにもまして右足のコントロールに気をつかう。なのでACCが使えないのは体力的につらいものがあるが、アイシンAW製の8段ATはシフトのタイミングもスピードも絶妙なので、例えばゆるい上り勾配でほんの少しアクセルに力を込めると、まるで意図をくみ取ったかのように「トン」とシフトダウンしてくれる。かゆいところに手の届くようなこの感じはとても気持ちがよく、そして疲労も少ない。まるでよく気がつく有能な部下を持ったような気分だ。
エココーストで燃費アップを狙う
エココースト機能は、数百メートル先に遅い先行車がいる時などに、アクセルペダルをすっと抜くと、タコメーターの針がストンと落ちて慣性走行に入り、先行車に接近してブレーキを踏むと、コースト機能がキャンセルされる。トランスミッションとエンジンがつながる時のショックは、注意していても気づかないほどで、これもドライビングに不快感を与えるものではない。
エココースト機能を働かせると、メーターパネルに表示される瞬間燃費計の数値がどんどん伸びるので、それが面白くて長い下り坂でどこまで慣性走行できるか何度も試してしまった。
思えば小学生の頃、坂の多い街に住んでいた私は、坂の上からどれだけ自転車をこがずに街を走れるかをあれこれ実験したものだ。
「ああ、エココーストだったんだな、あの頃のオレ」と回想に浸っているうちに、XC60は新東名の浜松SAに差し掛かっていた。
ちょっと早めの昼食を取ろうとSAのパーキングにクルマを止めて車外に出ると、激しい風が吹いていた。東京を出た時は穏やかだったのだが、台風のような風が吹いていたとは、XC60の車内では感じることはできなかった。
私は普段の足として、古い軽バンに乗っているのだが、こんな風の日は真っすぐ走るだけで一苦労だ。20年も昔の軽バンと比較するのはあんまりにもあんまりだが、まだ冷たい春の強風に頰をたたかれながら、あらためてXC60はいいクルマだと思い知ったのだった。
ここまでの走行距離は240km、燃費計は16.5km/リッターを示していた。
のんびりととんかつ定食などを食べていたら、ゴールの制限時間である16時まであまり余裕がないことに気づいた。この時点で残り時間はおよそ5時間で、ゴールまでは約300km。
このまま80km/hのペースで走行すれば間に合わなくはないが、途中で渋滞にハマってしまったら制限時間をオーバーするかもしれない。
燃費計の推移と残りの距離、ゴール時間を計算しながら、ややペースアップして走行することにしよう。
はたして順位は?
静岡県から愛知県に入っても、相変わらず風は強い。時折ハンドルに風を感じるようになってきた。強風が燃費値に悪影響を及ぼすことは、できるだけ楽に自転車を前に進ませることばかり考えていた小学生の時分に身をもって経験しているので、だんだん往路を選択したことへの不安が増してきた。
もし明日天候が穏やかになったら、復路のチームに有利になるかもしれない。そう思うと、右足の力も弱くなってくる。
やや混雑する音羽蒲郡から岡崎を抜け、伊勢湾岸道に入るとさらに風は強まり、新名神の山間部に入ると、雪もちらついてきた。
さらに困ったことに、当初通行予定だった名神高速で事故渋滞という表示が。渋滞にハマってしまえば、燃費は悪化するし、制限時間に間に合わなくなる恐れがある。多少遠回りにも思えるが京滋バイパスを経由して神戸を目指した方がよさそうだ。しかし、100kmを残り2時間、都市高速を走行することを考えると、ほとんど余裕がない。
京滋バイパスから阪神高速13号東大阪線を通過し、阪神高速3号神戸線へと入る。ラッキーなことにここも渋滞しておらず、スムーズに走ることができた。この分でいくと制限時間前にゴールできそうだ。
XC60は兵庫県に入り、甲子園球場が見えてきた。ゴールは間もなくである。ここまで休憩をはさんで7時間近く運転してきたが、疲労感はあまりない。
いつもなら長時間座っているとお尻が痛くなってしまうのだが、XC60のシートは私の体にあっているのか、そういったこともなく、このまま空港から飛行機で帰るのではなく、XC60を運転して帰ってもいいかと思えるくらいだ。なんならいっそこのまま自宅まで運転して帰りたい。などと思いつつ、XC60は阪神高速を降りて、ポートアイランドに入った。いよいよゴールである。
慣れない道で車線変更に戸惑いながらも、目的地の神戸空港へと到着した。
タイムリミットまで15分を残してのゴールである。
総走行距離は530km、そして注目の燃費値は16.3km/リッターであった。
翌日に復路チームの挑戦が控えていることもあり、この時点ではわれわれの順位は発表されなかったのだが、後日送られてきた順位表によると、『webCG』チームは、なんと、ドロドロドロドロ(ドラムロールの音)……第4位という成績であった!
感嘆符を付けるような成績ではないように思われるかもしれないが、実は往路チームでは第1位だったのである。
ちなみに総合順位は優勝が『CAR GRAPHIC』の17.6km/リッター。第2位が同点で『Motor Magazine』『オートックワン』の17.3km/リッターであった。
優勝の『CAR GRAPHIC』には1.3km/リッターもの差を付けられてしまった。これの差に天候がどれくらい影響しているのかはわからないが、2リッターターボで1.8トン近くもあるクルマが、17km/リッターを超えるような燃費値を記録するなんて、20年前なら想像だにできなかっただろう。私の20年落ち軽バンの場合、同じようなペースで走っても、せいぜい14km/リッターだから、技術の進歩はすさまじいものがある。
CO2の排出量と燃費のこと、さらにボルボが誇る安全性能を考えれば(そして預金残高のことを考えなければ)、今すぐXC60に買い換えた方がいいのだろう。
530kmをともにしたXC60に後ろ髪をひかれながら、帰りの飛行機に乗ったのであった。
(文=工藤考浩/写真=高橋信宏)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

工藤 考浩
-
第842回:スバルのドライブアプリ「SUBAROAD」で赤城のニュルブルクリンクを体感する 2025.8.5 ドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」をご存じだろうか。そのネーミングからも想像できるように、スバルがスバル車オーナー向けにリリースするスマホアプリである。実際に同アプリを使用したドライブの印象をリポートする。
-
第841回:大切なのは喜びと楽しさの追求 マセラティが考えるイタリアンラグジュアリーの本質 2025.7.29 イタリアを代表するラグジュアリーカーのマセラティ……というのはよく聞く文句だが、彼らが体現する「イタリアンラグジュアリー」とは、どういうものなのか? マセラティ ジャパンのラウンドテーブルに参加し、彼らが提供する価値について考えた。
-
第840回:北の大地を「レヴォーグ レイバック」で疾駆! 霧多布岬でスバルの未来を思う 2025.7.23 スバルのクロスオーバーSUV「レヴォーグ レイバック」で、目指すは霧多布岬! 爽快な北海道ドライブを通してリポーターが感じた、スバルの魅力と課題とは? チキンを頬張り、ラッコを探し、六連星のブランド改革に思いをはせる。
-
第839回:「最後まで続く性能」は本当か? ミシュランの最新コンフォートタイヤ「プライマシー5」を試す 2025.7.18 2025年3月に販売が始まったミシュランの「プライマシー5」。「静粛性に優れ、上質で快適な乗り心地と長く続く安心感を提供する」と紹介される最新プレミアムコンフォートタイヤの実力を、さまざまなシチュエーションが設定されたテストコースで試した。
-
第838回:あの名手、あの名車が麦畑を激走! 味わい深いベルギー・イープルラリー観戦記 2025.7.5 美しい街や麦畑のなかを、「セリカ」や「インプレッサ」が駆ける! ベルギーで催されたイープルラリーを、ラリーカメラマンの山本佳吾さんがリポート。歴戦の名手が、懐かしの名車が参戦する海外ラリーのだいご味を、あざやかな写真とともにお届けする。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。