第223回:【Movie】ハイジの里でヤラライ〜! 大矢アキオ、捨て身の路上調査員「スイス編」
2011.12.09 マッキナ あらモーダ!第223回:ハイジの里でヤラライ〜!大矢アキオ、捨て身の路上調査員「スイス編」
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「ハイジランド」の今
実際に走っているクルマをカウントすることにより、データではわからない本場ムードを感じとっていただく「捨て身の路上調査員シリーズ」。今回はスイス東部グラウビュンデン地方で敢行してみた。より具体的に言うと「ハイジランド」といわれる一帯だ。スイス人の児童文学者ヨハンナ・シュピリ(1827-1901年)があの有名な『アルプスの少女ハイジ』を著すにあたり、その舞台とした地域である。
ちなみに「ハイジランド」と名付けられているものの、日本人が考えるようなテーマパークがあるわけではない。あるのは「ハイジの家」といわれる伝統的な山小屋と売店くらいである。シュピリが滞在した頃とほぼ同じ自然が残されていて、地元や周辺から来た人々がヴァンデルンク(散策)を楽しんでいる。
今回は物語にも登場する山の麓の村、マイエンフェルトの広場で、週末の午後15分間に通り過ぎるクルマを数えてみた。結果は次のとおりである(動画撮影時とは異なります)。
・フォルクスワーゲン:6台
・フォード、オペル、トヨタ:各4台
・BMW、セアト、シュコダ:各3台
・スバル、メルセデス・ベンツ、ルノー、プジョー、ダイハツ:各2台
・日産、アウディ、ポルシェ、ランドローバー、ジープ、サーブ、三菱:各1台
リヒテンシュタイン大公国が近いこともあり、黒地に白文字で記された同国のナンバープレートを掲げたクルマもたびたびやってきた。地元に長らく住む人によると、降雪時の道路整備が迅速ゆえ、冬場もスノータイヤだけで十分で、チェーンは装着したことがないという。
「それでもクルマは頼れる足でないと困る」という彼の言葉を証明するように、ランキングは比較的堅めのブランドが占めた。上位にトヨタが入っているのは、地域のユーザーから一定の信頼を獲得している証しであろう。
ところで、ハイジ村一帯を訪ねて気付くことがある。日本で作られたアニメーション『アルプスの少女ハイジ』は、地元の風景や建物をきわめて忠実に再現していることだ。制作前に行われた現地調査は、かなり綿密なものだったに違いない。ときは1970年代前半。海外旅行などまだまだ高価で、限られた人しか行けなかった時代だ。アニメーションの制作費用など、今と同じかそれ以上に限られていたに違いない。にもかかわらず世界に輸出しても恥ずかしくないクオリティーを達成している。『ベルサイユのばら』とともに、30数年が経過した今でも欧州で繰り返しテレビ放映されたり、DVD化されて店頭に並んでいるのは、その証といえよう。
またボク自身の経験ではアニメ版『ハイジ』は、『ルパン三世』と並んでヨーロッパ製だと勘違いされている代表的日本アニメである。
それは1960年代に、「トヨタ2000GT」や「マツダ・コスモスポーツ」を生み出した日本の自動車産業に勝るとも劣らない偉業であるとボクは評価したい。
ということで、爽快でのどかな景色とともに動画をお楽しみください。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
【Movie】大矢アキオ、捨て身の路上調査員「スイス編」(前編)
【Movie】大矢アキオ、捨て身の路上調査員「スイス編」(後編)
(撮影・編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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