シトロエンC4カクタス 1.2 PureTech 110 S&S(FF/5MT)/1.6 e-HDi 92(FF/6AT)
クロスオーバーのシトロエン的解釈 2014.07.31 試乗記 最近流行の小型クロスオーバーも、シトロエンが手がけるとこんなに魅力的になる! 単に見た目がユニークなだけではない、シトロエン的逆転の発想に満ちた「C4カクタス」に、オランダ・アムステルダムで試乗した。66年後の「2CV」
The car that answers today's questions.――2014年春のジュネーブモーターショーでデビューしたシトロエンの新型車、「C4カクタス」に与えられたキャッチコピーだ。このクルマが単なる「C4」の派生車種ではないことが、これだけでも分かろう。
「時は流れ、ユーザーの好みも変わった。そんな今にふさわしいクルマは?」という問いに対する、シトロエンの回答なのだ。2013年秋のフランクフルトモーターショーにコンセプトカーが出展されたときは、今後のCラインのマニフェストであるとも表明していた。
オランダの首都アムステルダムで行われた国際試乗会のプレゼンテーションで、そんな説明がなされるころ、スクリーンに映し出されたのはあの「2CV」だった。2CVが構築したシトロエン流ファミリーカーの世界を、66年後の2014年基準で書き換えたモデルといえるかもしれない。
たしかにその中身は、2CVをほうふつとさせるところがある。そのひとつが、本国仕様のベースグレードで現行C4ハッチバックより200kgも軽い965kgと、1トン切りを実現していること。もう100kgぐらいの軽量化じゃ驚くに値しないというわけだ。
その軽量化の手法が変わっている。一番大きいのはC4を名乗りながらプラットフォームは「C3」のストレッチ版としたこと。ほかにもリアドアの窓は外開きとして、後席の左右分割をやめるなど、逆転の発想の連続だ。全長4157×全幅1729×全高1480mmというボディーサイズもC4より小柄で、全長は同じPSAグループの「プジョー2008」に近い。
軽いので環境性能も高く、ディーゼル車の1kmあたりCO2排出量は82gにすぎない。それに先端技術を多用した減量ではなく、モッタイナイ式ダイエットなので、フランスでの価格はC4より少し安いぐらいなのだ。でもC4カクタス、一部の国産車にあるような、安さと燃費の良さだけがウリのクルマではなかった。
すべては豊かな日常のために
C4カクタスが安さと燃費の良さだけがウリのクルマでないことは、スタイリングを見れば納得してもらえるだろう。ボディーサイドの衝撃吸収パネル「エアバンプ」をはじめ、新型「C4ピカソ」に続く導入となる上下2段のヘッドランプ、フローティング風ルーフなど、独創の応酬。それでいてベースとなるボディーラインは無駄な抑揚など一切なく、シンプルに徹している。
エアバンプを指で押した感じは、フコフコ。フニャフニャではないがカチカチでもない。ちゃんとへこむ。剛性感が命といわれる自動車の車体で、こんなソフトタッチが味わえるとは。他車のドアやショッピングカートの衝撃を和らげるという効果以上に、視覚と触感によるアピールがハンパない。
インテリアも負けてない。大小2枚のデジタルディスプレイが並んだインパネはアバンギャルド。一方で助手席側のグローブボックスやドアグリップなど、クラフトマンシップがもたらすぬくもりを感じさせる部分もある。最近のクルマにしてはインパネが低いと思ったら、助手席側エアバッグは天井に仕込まれていた。
前席は、2ペダルドライブのETGではベンチタイプとなる。これも2CVをほうふつとさせる。中央に生えたセレクターレバーっぽいのはパーキングブレーキで、センターパネル下のD/N/Rと書かれたボタンとシフトパドルで変速を行う。しかもそのシートに腰を下ろしたら、ふっかりと沈み込んだ。シトロエンそのものだった。
それに比べると後席はやや硬めだが、身長170cmの僕が楽に座れる空間は確保されていた。しかもC3より130mmも長く、C4とほぼ同じ2595mmというロングホイールベースのおかげで、シートの端がホイールハウスに蹴られていない。こんな部分にもシトロエンの伝統が受け継がれているのである。
脈々と流れる小型シトロエンの伝統
今回はガソリン1.2リッター直列3気筒ターボと5段MT、ディーゼル1.6リッター直列4気筒ターボと6段ETGの組み合わせを試した。前者はC3に積まれるユニットの過給版だ。日本仕様はこのエンジンと5段ETGのコンビで、輸入に向けた準備が進められているという。
エアポートホテルの駐車場を出て、多くの空港がそうであるように、絡まった糸のような道の中からルートを選び、高速道路に乗る。なにしろ車体が軽いので、加速はトルクの小さいガソリンでも十分。ターボのトルクの効果は絶大で、引っ張らなくても楽にヨーロッパの速い流れに乗れる。
とはいえ、もちろん力強さではディーゼルが上だ。こちらはETGのスムーズさも印象に残った。トルクの余裕が変速時の違和感を目立たなくしているのかもしれない。ただその代わり、鼻先は重い。かといってガソリン車が軽快極まるかというと、ちょっと違う。ノーズの動きはスッスッと気持ち良いけれど、その後の身のこなしはゆったりしているのだ。
その動きは、C3をベースにホイールベースを伸ばしたという成り立ちと一致していた。乗り心地にも同じことがいえた。いまの量産車としてはかなりソフト。スピードを上げるとそこに、ロングホイールベースならではのおだやかな揺れが加わっていく。
まるでハイドロニューマチックみたいだった。具体的には「BX」を思い出した。あれも軽量ボディーにロングホイールベースとソフトな足を組み合わせていた。車体寸法や重量も近く、表示方法こそ違うが速度計がデジタルであることまで同じだ。
試乗後、商品企画担当のレティシア・ラコンブさんにそのことを打ち明けたら、彼女も「そう思うわ!」と同意してくれた。作り手が2CVやBXなど、過去の小型シトロエンの魅力を理解しているからこそ、表面的な造形から根底に流れる思想まで、どこをとってもシトロエンらしいと思えるクルマを生み出せたのだろう。
あとは私たちがその気持ちに応える番だ。あなたがこの形に好意を寄せたなら、C4カクタスはしっかりその想いに応えてくれるだろう。日本導入に向けて、まずは貯金だ。
(文=森口将之/写真=シトロエン)
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テスト車のデータ
シトロエンC4カクタス 1.2 PureTech 110 S&S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4157×1729×1530mm
ホイールベース:2595mm
車重:1020kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:110ps(81kW)/5500rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/1500rpm
タイヤ:(前)205/55R16/(後)205/55R16
燃費:4.6リッター/100km(約21.7km/リッター)(欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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シトロエンC4カクタス 1.6 e-HDi 92
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4157×1729×1530mm
ホイールベース:2595mm
車重:1055kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 SOHC 8バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92ps(68kW)/4000rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)205/55R16/(後)205/55R16
燃費:3.5リッター/100km(約28.6km/リッター)(欧州複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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