スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight(4WD/CVT)
執念が伝わってくる 2014.08.06 試乗記 リアルスポーツカーとグランドツーリングカーの融合を目指して開発された、スバルの新型ワゴン「レヴォーグ」。実際に乗ってみたら、どうなのか? 最もパワフルかつスポーティーなグレードで試した。計画的な“専用車”
ステーションワゴンに、本格スポーツカー級の動力性能と操縦性を求めるマーケットは、世界的にもあまりない。その筆頭がわが日本であり、その土壌を育てたのは間違いなく、歴代の「スバル・レガシィツーリングワゴン」である。
すでにご承知のように、レヴォーグは大きくなってしまったレガシィに代わって、日本の(先代以前の)レガシィファンに向けて開発された「日本ベスト」のスポーツワゴンだ。車体サイズは日本でヒットした4代目レガシィに酷似している。まあ、全幅だけは50mm広くなっているが、周辺の競合車のサイズを考えれば、許容範囲というほかない。
「日本市場のために作った」というのが、日本のエンスージアストに対するレヴォーグ最大の殺し文句であり、それは事実だろう。しかし、「いまどき、富士重工が日本のためだけにクルマを新開発できるのか?」と他人事ながら心配になるが、それは富士重工がもつ技術資源と開発マンパワーを、じつに効率よく使い回したからこそ……でもある。
レヴォーグの、いわゆるプラットフォームは「インプレッサ」系で、2650mmというホイールベースもインプとほぼ同等。インプのフロア周りを丹念に強化して、そこに最新世代の軽量高剛性思想をいれた上屋を組み合わせたのが、レヴォーグの基本骨格である。
荷室の前後長は5代目レガシィと実質同寸で、容量は5代目レガシィ520リッターに対してレヴォーグ522リッター。レヴォーグのパッケージレイアウトは、大きくいうと、インプのキャビン後端にレガシィ級のトランクを背負わせたもの……である。インテリアも各部が入念にグレードアップされているものの、ダッシュボードの基本造形はインプそのままだ。
そして、注目すべきは、レヴォーグの基本骨格や外装のベースデザイン、そして内装デザインは、この秋にも発売というスポーツセダンの新型「WRX」と共通であることだ。つまり、レヴォーグとWRXは車名こそ独自だが、実質的には「ひとつのシリーズのなかでのワゴンとセダン」という関係にある。レヴォーグは日本のために企画された商品だが、かといって孤独な日本専用車などではないのだ。
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なるほど「スポーツカーの走り」
レヴォーグは、2種類の直噴ターボエンジン(1.6リッターと2リッター)と2種類のシャシー(ホイールサイズは17インチと18インチ)をそれぞれ組み合わせたグレード構成となっている。今回連れ出したレヴォーグは、2リッターエンジンに、18インチシャシーを組み合わせた「2.0GT-S」である。つまり、現時点で最強最速のレヴォーグだ。
この18インチシャシーでは、ダンパーが歴代の最強レガシィの代名詞ともいえるビルシュタイン製であることも注目である。レヴォーグでは、こういう小技でも、いちいちファンの琴線をくすぐるようになっている。
レヴォーグの開発チームは、ちょっとしたリップサービスも込めて「レヴォーグの走りはスポーツカーとして開発した」と話している。中でも、この2.0GT-Sの走りは、なるほど「大型トランク付きのスポーツカー」と表現するほかない。
レヴォーグ2.0GT-Sはとにかく速い。そしてギュインギュイン曲がる。エンジンパワーによって4WDシステムを使い分けるのはスバルの伝統で、この2リッターのそれは45:55というリア寄りの駆動配分を基本とするセンターデフを持つタイプ。商品名は「VTD-AWD」で、1.6リッターで使われる油圧多板クラッチ型とは別物。少なくともドライ路面では、40.0kgm超の最大トルクすらシレッと受け止めてくれるのをいいことに、積極的に踏んでいけば、4WDが「クルマを曲げる」方向に生きてくれるのが、如実に体感できる。
完全にスポーツカー扱いをしても、車体はミシリともいわず、バネ下をもてあますそぶりも皆無で、ステアリングはズシッと正確だ。なるほどスポーツカーである。ただ、市街地や高速道をおとなしく走っているかぎりでは、いかにも乗り心地は硬い。いかにもこれを日常使いの乗用車として見ると、絶対的に硬すぎるといわざるを得ないのも事実だ。
愛着すら湧く運転支援
レヴォーグはひとり勝手にスポーツカーしている(?)ワゴンであると同時に、日本車でもっとも進んだ「事前察知安全性&自動運転技術」をもつクルマでもある。いうまでもなく、現時点でレヴォーグでしか手に入れられない「アイサイトver.3」のことである。
従来のアイサイトと比較して、認知障害物の種類や、オートブレーキの作動速度域が大幅拡大したのもver.3の特徴だが、それを公道で安易に試すことははばかられる。
しかし、もうひとつのハイライトであるステアリング制御機能はハッキリと体感できる。高速道でクルマが能動的に車線維持してくれる「アクティブレーンキープ」はちょっとしたものだ。これはもちろん、手放し運転を推奨するものではない……というのが建前なので、ステアリングをフワリとつまんでいる程度だと、数秒から10秒ちょっとでレーンキープ制御は自動的に切れてしまう。
しかし、ステアリングホイールに少しだけ押すような力を加えて「手放しなんてしてませんよ」というメッセージをクルマに送り続ければ、もとからある全速度域対応アクティブクルーズコントロールとあいまって、ゆるやかな郊外高速道路では、ドライバーの積極操作を必要とするケースはほとんどない。好き嫌いを超えて、これには素直に感心する。そして、そのけなげな走りに、まるで生き物やペットに対する愛着に似た感情すら湧いてしまう。
歴代レガシィの影響なのか、日本では、ステーションワゴン・ユーザーが、クルマの走りにもっともうるさい傾向にあると思う。クロスオーバーが台頭してきた昨今「スポーツカーみたいにゴリゴリ走るワゴン」は海外ではあまり理解されない価値観だ。
また、現状の2.0GT-Sの乗り心地はさすがに硬すぎるというほかなく、「今のご時世で、これは明らかにやりすぎ」と冷静にツッコミたくなるのも否定できず、早い段階で乗り心地に対する手当てが入る可能性が高い。しかし、レヴォーグ2.0GT-Sの乗り味に、いかにも「アタマを取りに行ったときのスバル」の執念めいたオーラがただようところを喜ぶスバリストも多いだろう。これを「WRXのワゴン」と考えれば、ちょっと納得がいかなくもない。
(文=佐野弘宗/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:356万4000円/テスト車=365万400円
オプション装備:本革シート<アクセスキー対応運転席シートポジションメモリー機能&フロントシートヒーター付き>+ウェルカムライティング&サテンメッキドアミラー(8万6400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3139km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:187.6km
使用燃料:19.8リッター
参考燃費:9.5km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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