マセラティ・ギブリ ディーゼル(FR/8AT)/クアトロポルテ ディーゼル(FR/8AT)
刺激的にも優雅にも 2014.12.17 試乗記 100年にわたる歴史の中で初のディーゼルエンジンを搭載した「ギブリ」と「クアトロポルテ」。両モデルの試乗を通し、マセラティの未来を担うパワーユニットの実力を探った。世界戦略のカギを握るエンジン
まずもって優れたレーシングカーコンストラクターであったこと、そしてプロダクションモデルにおいても半世紀以上にわたりスポーツ&ラグジュアリーカーを供し続けていること。
100年に及ぶマセラティの歴史は、ひもとけばこのような言葉で彩られる。
もちろん、そのどこにも「ディーゼル」というキーワードは現れない。彼らにとって史上初となるそのエンジンは、新世代のギブリとクアトロポルテの両方に搭載され、販売地域によっては4割以上の比率を占めるに至っているという。2015年に5万台を販売するメーカーへと飛躍するという、多くの人が訝(いぶか)しがった彼らのコミットメントは、まさに来年投入予定のSUV「レヴァンテ」によって達成される見通しがついてきた。そのレヴァンテにとっても必須ともなるディーゼルエンジンは、マセラティのビジネスにとってもはや欠くことのできないピースとなっている。
そして、それは海の向こうの出来事には終わらない。ポスト新長期規制をクリアする見込みが立ったそのエンジンを収めたギブリとクアトロポルテが、来年中に日本にも上陸する旨が先日発表された。
よもやマセラティのディーゼルに、この日本でも乗れることになろうとは……。天国の小林彰太郎さんや川上 完さんや徳大寺有恒さんはなんと仰せになるだろうか。もちろんマセラティの側とて、そうしたうるさ型に太鼓判を押されなければ、自らの名を冠する意味がないことは百も承知だろう。果たしてそこに「らしさ」はあるのか。先んじて試乗するチャンスを得た僕の興味も、そこに集中していた。
エンジンサウンドに見るモデルの「すみ分け」
かつてはゼネラルモーターズの傘下にあり、現在はフィアットの100%出資子会社であるイタリアのエンジンサプライヤー、VMモトーリとの共同開発によって生まれたマセラティのディーゼルエンジン。そのレイアウトは60度バンクのV型6気筒であり、3リッターの排気量から275psの最高出力を4000rpmでマークする。これは周囲の平均に照らしてみれば高出力型といえるものだ。もちろんコモンレール式となるそのインジェクターは2000バールと高圧の設定。可変ジオメトリータービンによって立ち上がりからのトルクに厚みを持たせるなど使いやすさにも配慮しており、61.2kgmの最大トルクは2000-2600rpmで発せられるという。
このエンジンはZF製の8段ATと共にギブリとクアトロポルテの双方に搭載され、動力性能的には共に250km/hの最高速と、6.3~6.4秒の0-100km/h加速をもたらしている。一方でCO2排出量は158~163g/kmと、ガソリン車に搭載されるV6ターボに対して3割程度の改善をみているようだ。
日本での名称は確定していないものの、欧州においてはそれぞれ「ギブリ ディーゼル」「クアトロポルテ ディーゼル」と呼ばれる両車を、外観においてそれと見分ける目印はない。タコメーターをのぞきこまなければ、はた目にはガソリンのベースモデルとまったく同一だ。ただし、エンジンを掛ければディーゼルらしいガラガラ気味のノイズはそれなりに響いてくる。
車内に入ればアイドリング時の侵入音は両車ともに十分納得できるレベルにあるが、走り始めるとその差は思いのほか大きい。想像通り、ギブリはそれなりにディーゼルであることを意識させるレベルであるのに対して、クアトロポルテは音からくる違和感を極力封じ込めている。価格および車格的にみれば、クアトロポルテはもはや「メルセデス・ベンツSクラス ロング」並み、つまりショーファードリブンユースも想定したキャラクターとなっているわけで、この辺りはすみ分けの意図も働いているのだろう。
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軽量・コンパクトな設計の恩恵
両車はガソリンモデルと同様、スロットル開度や変速レスポンスの制御をスポーツ走行向きに最適化するマップを搭載している。そのスポーツモードがアクティブな状態では、エキゾーストシステムも経路の変更によりスポーティーなサウンドを響かせるようにしつらえられているが、クアトロポルテのそれはあくまでジェントルな印象をキープしたまま、若干音量を持ち上げる程度のチューニングにとどめられているようだ。が、一方のギブリではそのトーンからして一変、前方で回っているそれがとてもディーゼルとは思えないほど刺激的なサウンドを奏でるように調律されていた。つまり、ギブリの側はディーゼルであろうとスポーティーネスを重視したセットアップを施してあるというわけだ。
パフォーマンスにおいて特筆すべきは、その動力性能よりむしろ運動性能にあるといえるだろう。乗り比べても減速や旋回においてV6ガソリンのベースモデルに対する劣化がほとんど感じられない。その印象の裏付けとなるのが、わずか25kgという重量差である。つまり、マセラティのディーゼルユニットは標準的なそれに対して相当軽量、そしてコンパクトに仕上げられているということだ。鼻先の据わりがズシンと重い同級他車に比べれば、その動きは明らかに軽くてキビキビしている。これらの特徴からみれば、あえてマセラティのディーゼルを選ぶという意義は、クアトロポルテよりむしろギブリの側に強く見いだせるといえそうだ。となると、残念なのは4500rpm付近でパワーの乗りが大きくドロップするディーゼル特有のフィーリングにあるわけだが、回り切る感覚がもう500rpm続けば……という欲張りな願望は、今後のさらなるリファインでかなえられることに期待したい。
(文=渡辺敏史/写真=マセラティジャパン)
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テスト車のデータ
マセラティ・ギブリ ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4971×1945×1461mm
ホイールベース:2998mm
車重:1835kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:275ps(202kW)/4000rpm
最大トルク:61.2kgm(600Nm)/2000-2600rpm
タイヤ:(前)235/50R18/(後)235/50R18
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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マセラティ・クアトロポルテ ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5262×1948×1481mm
ホイールベース:3171mm
車重:1885kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:275ps(202kW)/4000rpm
最大トルク: 61.2kgm(600Nm)/2000-2600rpm
タイヤ:(前)245/45R19/(後)275/40R19
燃費:6.2リッター/100km(約16.1km/リッター)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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