マツダ・ロードスター プロトタイプ(FR/6MT)
ライトウェイト・スポーツカーの原点へ 2015.02.12 試乗記 歴代で最もコンパクトなボディーを持ち、車重は約1トンに抑えられた新型「マツダ・ロードスター」。ライトウェイト・スポーツカーの原点へ回帰した4代目の走りは、「走ること、操ることの楽しさ」に満ちていた。プロトタイプのステアリングを握った。ベストバランスは16インチタイヤ
新型ロードスターを初めて目の前にしたとき、まず感じたのは「カッコよさ」だった。
スポーツカーは「走りを楽しむ」クルマであると同時に「姿を楽しむ」クルマでもある。
新型ロードスターは、タイヤ位置、後退したウインドスクリーン、ドライバーの着座位置を見ただけで走りへの期待は高まる。
同時に、低く鋭い構えのノーズ、キャラクターラインを使わず、プレスの抑揚だけでダイナミックな表情を造り込んだサイド、グッと絞り込んだリア……「コンパクトなサイズの中にエネルギーが凝縮されている」といった印象のデザイン面でもまた、スポーツカーファンの心をわしづかみするだろう。
タイヤは16インチが標準で、オプションに17インチも用意される。
「いまどき16インチ?」と思う人もいるかもしれないが、「16インチでも十分にカッコはついている」と、僕の目には映った。ちなみに、エンジニアの話では「走りのベストバランスは16インチ」とのことである。
3915×1730×1235mmのスリーサイズには驚くと同時に感激した。1989年に誕生した初代ロードスターに対して、全幅こそ55mm大きいが、全長は55mmも短い。
さらに驚いたのは重量。まだ正式に発表されてはいないが、「1トンを切るか切らないか」といったところのようだ。初代モデルがMT車で940~990kgだったことを考えると、安全性、装備、快適性等々のレベルが大きく押し上げられている現在、これは、「圧倒的!」ともいえる軽さであり、ロードスターにかけたマツダの意気込みと熱さが強烈に伝わってくる。モデルチェンジの度にサイズは大きくなり、重量が増す……これがふつうの流れだが、ロードスターは4代目にして、そんな流れを断ち切り、「コンパクトで軽量」というライトウェイト・スポーツカーの原点に完全に立ち戻ったということになる。
開けてよし、閉めてよし
手動式ソフトトップのデキもいい。
幌(ほろ)はしっかりした構造で、高速でもばたついたりしない。開閉も楽で、運転席に座ったまま、体を後ろにひねって手を伸ばせば取っ手に手が届き、簡単に引き上げられる。
あとはフックを固定するだけ。ただし、体が鈍っているような人は、「ひねって手を伸ばしてちょっと力を入れる」ことで、背筋辺りがビビッとくるかもしれない。それも、簡単なストレッチを日課にすれば解決できる。
オープンでのコックピットへの風の巻き込みもよく抑えられている。サイドウィンドウさえ上げておけば、ハイウェイ走行も心地よく楽しめる。事実上、日本のハイウェイの速い流れとなっている130km/hくらいなら、後頭部の髪が少し乱れる程度でしかない。
ちなみに、幌を上げた時のプロポーションもいい。ちょっと古典的な香りもあるが、力強く、バランスのいい姿である。
1.5リッターとは思えぬ速さ
そろそろ走りの報告を始めよう。
まずは、コックピットの印象だが、デザイン的にはディテール面で課題を残しているところもあるが、機能的にはスポーツカーの条件を高水準で満たしている。なによりうれしいのは思い通りのドライビングポジションが決まること。これはスポーツカーたるクルマの最重要項目だが、文句なしである。
エンジンはむろん4気筒。北米モデルには2リッターエンジンが積まれるが、日本仕様は1.5リッターで130ps/6500rpm、15.0kgm/4000rpmを引き出す。今回の試乗車は6段MTだったが、当然ATも開発されているはずである。
走りだしてすぐ感じたのは加速のよさ。
エンジンと6段MTのマッチングもよく、潜在的期待値のちょっと上をプロットし続けるようなトルク感/パワー感で加速する。
絶対的にはそう速くはないはずだが、感覚的にはかなり速い。とても「1.5リッター」とは思えない速さ、力強さを感じさせるのだ。
1トンという軽量さがもたらすものが多いにしても、人間の感覚、スポーツカー好きの感覚を、よく研究し、知っていることがもたらしたチューニングの結果だと思う。
身のこなしは「人馬一体」だが、軽々しい一体感ではなく、しっとりしなやかな一体感。
かつてのマツダの神経質なキビキビ感とは別物だ。あくまでもスムーズに、ドライバーの意思を忠実にフォローする。少し切り増すことはあっても、戻し舵(だ)を求められることは少ない。重心の低さとバランスのよさも、2~3のコーナーを抜ければすぐわかる。
「懐の深い」身のこなし
新型ロードスターには、心地よい軽快さとともに、高い安定感と安心感がある。
試乗車は「試作段階のクルマです。抑えて、大事に走ってください」と言われたのだが、走りだすと、自在にコントロールできるし、追い込んでの「懐の深さ」もすぐわかった。
……ので、楽しくて、ついついペースは上がってしまった。
日本車で「懐の深い」クルマはめったにないが、ロードスターは間違いなく「めったにない一台」である。コーナーにブレーキングを残して飛び込んでゆくような時も、しっかり足を踏ん張り、意図したラインにピタリと寄ってくれるので、攻めることが楽しくて仕方がない。上記のようにタイヤは16インチだが、「グリップは十分!」だし、エンジニアの言うとおり、クルマとのバランスがいい。
アクセル、クラッチ、トランスミッション、ブレーキ等々の操作系の調和もいいので、ほとんど無意識下でコントロールできるのもうれしいし、走りのリズムにも乗りやすい。
新型ロードスターは、ライトウェイト・スポーツカーの原点に戻って「走ること、操ることの楽しさ」を徹底して追い求めている。
一度ステアリングを握ったら、きっと誰もが、「ずっと握り続けていたい! ずっと走り続けていたい!」と思うはずだ。
四半世紀前と同様、マツダは再び、ライトウェイト・スポーツカーが目指すべき「新たな基準」を生み出した。拍手を送りたい!
(文=岡崎宏司/写真=マツダ)
テスト車のデータ
マツダ・ロードスター プロトタイプ(FR/6MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915*×1730×1235mm
ホイールベース:2315mm
車重:1000kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16/(後)195/50R16
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
*全長はライセンスプレートなしの数値。
※データはすべて暫定値であり、変更されることがあります。
テスト車の年式:--年型(プロトタイプ)
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

岡崎 宏司
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