ホンダ・ジェイド ハイブリッドX(FF/7AT)
ドライバーズ・ミニバン 2015.03.02 試乗記 ホンダが提案する、個性派の6シーター「ジェイド ハイブリッド」に試乗。実際に乗ってみたらどうだった? その走りや、使い勝手を報告する。昔の名前で出ています
シュッとしたホンダの新型ミニバンが、ジェイドである。SUVの「ヴェゼル」と同じ1.5リッターハイブリッドを搭載する。
3列シート6人乗りだから、ミニバンと言って間違いないだろうが、売りのひとつは立体駐車場に入る1530mmの低全高だ。いずれもヒット作だった先代「オデッセイ」や「ストリーム」よりも1cm低い。全幅は1775mmとたっぷり広いから、ワイド&ローのプロポーションが際立つ。斜め前の至近距離から見ると、以前、イギリスからお取り寄せしていた「シビック タイプR ユーロ」のミニバンモデルのようにも見える。
ジェイドはいち早く中国でデビューし、2013年夏から東風ホンダ製の現地生産モデルが販売されている。月に8000台売れているというから、やはり中国市場はデカイ。エンジンは1.8リッター4気筒で、2列シートの5人乗りもある。というか、売れるのはもっぱらそちらで、ミニバンとはみなされていないらしい。考えてみれば、一人っ子政策の国である。
昔からホンダは車名の“物持ち”がいい。ジェイドもかつてオートバイに使っていた名前だ。jadeとは「翡翠(ヒスイ)」の意。ヒスイといえば、原石も加工品も古くから中国の特産品である。この車名を引き出しからピックアップしてきたのには、そんな背景もあるのかもしれない。
3列それぞれに個性
運転席に座ると、ジェイドの居住まいはなかなか新鮮だ。ドライビングポジションは「アコード ハイブリッド」とほぼ同じ。つまり、“セダン並み”ということだが、開放的な視界はやはりミニバンだ。たしかにルーフは低く、フロントウィンドウやピラーの寝かたはセダンを通り越してクーペを思わせる。だが、窮屈感はない。前席のウエストラインをえぐるように下げて、サイドウィンドウの天地を大きくとったのが効いている。
シート配列は2+2+2で、2列目は左右独立のキャプテンシートである。固定式肘掛けを持つ2席は、それぞれ20度の角度が付けられたV字型のレールで配置され、後ろにスライドするにつれて、近づいてゆく。後輪のホイールハウスを避けるための苦肉の策なのだが、ちょっと外側に向いて座っている感じはワルくない。17cm前後スライドするイスを一番後ろに下げれば、脚が組める。前席までの距離は、そうとう広いアコード ハイブリッドの後席よりさらに65mm広いという。
一方、格納式のサードシートは、プラス2か子ども用と考えたほうがいい。クッション座面と床との標高差が小さく、大人だと体育座りをしいられるし、2列目シートを一番前に出してもらっても、足や膝まわりのスペースは狭い。体育座りスタイルから下車するのもけっこうホネである。ボディー全長が4650mmあっても、フロントウィンドウを寝かせたスタイリッシュミニバンなのだから、スペース効率は二の次だ。2列目のキャプテンシートを特等席とするぜいたくな4シーターとして使うのが理想だと思う。
低さが生きるハンドリング
ヴェゼル譲りのパワーユニットは、直噴1.5リッター4バルブDOHCに、モーター内蔵の7段デュアルクラッチ変速機を組み合わせたもの。排気量は同じでも、ポート噴射でアトキンソンサイクルの「フィット」用よりはスポーティーなハイブリッドユニットである。
とはいえ、1530kgの車重はヴェゼルより250kg重い。しかし、乗るとそんなハンディは感じさせなかった。走りだしから軽快で、踏み込めばけっこうパワフルだ。純粋ガソリンエンジンの同級ミニバンと比べてもトップクラスの加速性能を持たせたという説明にも納得がいった。
試乗車のハイブリッドXでJC08モード値は24.2km/リッター。ヴェゼルのハイブリッドXは26.0km/リッターだから、落ち込みは7%ほど。車重はヴェゼルの20%増しなのに不思議だが、今回、実走燃費は測れなかった。
軽快な走りの印象は、低床フロアのシャシーも貢献大である。リアサスペンションに新しいダブルウィッシュボーン式を採用したのも低床化のためだが、そうしたかいあって、ミニバンを運転しているとは思えない低重心感覚がある。低床フロア実現のために、リチウムイオンバッテリーはセンターコンソール部分に立てて置かれることになったが、重量物をホイールベースの中央付近にミドシップすることで操縦性にはメリットがあるとホンダは言っている。
ただし、乗り心地のフトコロは深くない。平滑な路面では吸い付くように滑らかだが、荒れた舗装路や高速道路の継ぎ目では、予想以上に大きめのショックが出がちだ。乗り心地より操縦性のミニバンである。
“技あり”シートは「もう一押し」
ジェイドは、先代のオデッセイと、今はなきストリーム、つまり、よく売れたホンダ流ロールーフミニバンの空席を狙ったクルマといえる。正味1時間ほどの試乗では、大きく上等になったストリームといった印象を受けた。
このクラスにサードシートを与えても、実際に使われるのは年に数回だと、この日、話を聞いた開発スタッフが言っていた。ジェイドの売りは2列目のキャプテンシートだから、サードシートがなければ定員も4人になってしまう。キャプテンシートを採用するなら、サードシートもmustということだろう。
シートアレンジのカラクリはホンダのお家芸で、このクルマもよくできている。欲を言えば、荷車としてもうひと工夫ほしかった。2列目シート以降を畳んでも、あちこちに段差やくぼみが残って、フラットな床は奥行き90cm足らずしか現れない。床板がスルスルッと出てくるような仕掛けを考えると、いざという時、6人まで乗れるステーションワゴンとして、さらに使い道も広がると思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ホンダ・ジェイド ハイブリッドX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1775×1530mm
ホイールベース:2760mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:131ps(96kW)/6600rpm
最大トルク:15.8kgm(155Nm)/4600rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップSP SPORT 270)
燃費:24.2km/リッター(JC08モード)
価格:292万円/テスト車=326万5446円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトオーキッドパール>(3万7800円)/ナビ装着用スペシャルパッケージ(3万7800円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(3万5640円)/Gathersナビ<VXM-155VFEi>(23万4206円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1361km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
トヨタ・アクアGRスポーツ(FF/CVT)【試乗記】 2026.11.2 「アクア」のビッグマイナーチェンジに遅れること10カ月。“最新のトヨタ顔”に変身したスポーツコンバージョンモデル「アクアGRスポーツ」が登場した。専用チューニングが施されたボディーや足まわりの仕上がりを、ワインディングロードに連れ出して確かめた。
-
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】 2026.10.31 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
NEW
ポルシェの「ミッションS」にはどんなエンジンが積まれるのか
2026.11.4デイリーコラム「ポルシェ・ミッションS」はリアミドシップレイアウトの次世代スポーツカーだ。興味深いのは“「911」より上”とされる商品のポジションで、911といえば水平対向6気筒、ミッションSにはどんなパワートレインが積まれるのか。状況証拠をもとに検証した。 -
NEW
第135回:アウディデザイン水掛け論(後編) ―モアイ像か、怪物か アウディの未来を決める極限の選択―
2026.11.4カーデザイン曼荼羅「Q9」に「A2 e-tron」に「ヌヴォラーリ」と、方向性の異なるデザインを同時多発的に提案してきたアウディ。かつて先駆的な造形美で世界を瞠目させた彼らは今、どこへ向かおうとしているのか? カーデザインの識者と、フォーシルバーリングスの未来を考えた。 -
第348回:これでスーパーカーは完全に終わった!
2026.11.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。イーロン・マスクが宇宙ロケット技術をクルマに応用し空飛ぶクルマ「テスラ・ロードスター」を発表した。スラスターで姿勢を制御しつつ“飛行”する様子には度肝を抜かれ、「これでスーパーカーは完全に終わった」と思った。 -
多田さんが「わかってるね!」と感じるクルマの特徴は?
2026.11.3あの多田哲哉のクルマQ&Aトヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、新型車に試乗して「このクルマの開発者はよくわかっているなぁ」と感じるのはどんな時か? “出来の違い”が出るポイントについて聞いてみた。 -
BYD ATTO 3 EX AWD(4WD)【試乗記】
2026.11.3試乗記BYDの「ATTO 3」がビッグマイナーチェンジで「ATTO 3 EX」に進化。EXは「EXTEND」「EXPLORE」「EXPERIENCE」を示すとのことだが、それはともかく、前輪駆動から後輪駆動に変わり、パワーも大幅にアップするなど、電気自動車(BEV)としての基本構造がまるで別物になっている。新たに追加された4WDモデルを試す。 -
いま軽自動車を選ぶなら、エンジン車とEVのどちらが得か? リアルな数値でコスパを比較・検証する
2026.11.2デイリーコラム海外ブランドまで参入するなど、近年活況をみせる軽EV。従来型の軽自動車と比べた場合の、コスト面の良しあしは? ホンダの2車種を例にとり、そのコストパフォーマンスを考えよう。





























