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ホンダ・ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING(FF/7AT)

ありそうで なかった 2018.07.30 試乗記 マイナーチェンジを機に、ホンダの6シーター「ジェイド」のラインナップに2列シートの5人乗り仕様が登場。そのスポーティーグレードからは、最近のワゴン車には感じられない懐かしい個性が伝わってきた。

ホンダならではの技あり商品

ホンダのミニバンの歴史は1990年代に大ヒットした「オデッセイ」に始まる。当時のミニバンは後輪駆動のワンボックスがベースで、エンジンが1列目の座席の下にあるのがフツウだった。けれど、ホンダの工場は背の高いワンボックスの生産を想定していなかった。それゆえ、天井が低かった。だから、FFの乗用車ベースで多人数乗れるミニバンを構想するしかなかった。それが結果的に、乗用車に近いドライビングポジションで乗れるミニバンの誕生につながり、大ヒット作になった。必要は大ヒットの母だった。

2000年には「ストリーム」という5ナンバー3列シート7人乗りの小型ミニバンを世に問うた。全幅1.7m以下で、全長は4mの半ば。こんなに小さな7人乗りはだれも考えなかった。常識はずれの快作に、三河の大手メーカーがほとんどそっくりのクルマをつくった。結局、日本国民は同じようなカタチのクルマがふたつのメーカーから出てきたことですっかり飽きてしまった。計画の外の陳腐化といってよかった。ストリームはその後、2006年に全面改良を受けて第2世代へと変わるけれど、第1世代のようなヒットは望むべくもなかった。

そこでホンダはもう再度ヒットを飛ばそうと、国内では2015年2月に、3列シート6人乗りの、ストリームの後継というべきジェイドを登場させた。「セダンでもミニバンでもない、新しい乗用車」として開発した。ということが当時のプレスインフォメーションには書かれている。そのことにあらためて注目したい

日本語で「翡翠(ひすい)」という意味のジェイドのサイズは、全長4650×全幅1775×全高1530mmと、もはや5ナンバー枠ではなかったけれど、その代わりタワー式駐車場に一応入庫可能な高さの、使い勝手のよいコンパクトミニバンとして構想された。いや、そもそもは日本向けというより、いまや世界最大の自動車市場となった中国向けだった。その証拠に、ジェイドは2012年の北京モーターショーで発表され、その翌年から東風本田汽車によって生産が始まった。中国向けは最初から2列5人乗り(ワゴン)と3列6人乗り(ミニバン)の2本立てだった。

2015年2月に、「ストリーム」の後継モデルとしてデビューした「ホンダ・ジェイド」。2018年5月には、そのマイナーチェンジ版が発売された。
2015年2月に、「ストリーム」の後継モデルとしてデビューした「ホンダ・ジェイド」。2018年5月には、そのマイナーチェンジ版が発売された。拡大
「ジェイド」のインテリアカラーは、グレードにより黒系または白系(アイボリー)が組み合わされる。
「ジェイド」のインテリアカラーは、グレードにより黒系または白系(アイボリー)が組み合わされる。拡大
センターコンソールの後方には、小物入れスペースが確保されるほか、HDMIとUSBのソケットが備わる。
センターコンソールの後方には、小物入れスペースが確保されるほか、HDMIとUSBのソケットが備わる。拡大
「RS」グレードには、ラックススエードとプライムスムースで仕立てられた、専用デザインのシートが与えられる。
「RS」グレードには、ラックススエードとプライムスムースで仕立てられた、専用デザインのシートが与えられる。拡大
マイナーチェンジ後の「ジェイド」には、安全運転支援システム「ホンダセンシング」が標準装備される。
マイナーチェンジ後の「ジェイド」には、安全運転支援システム「ホンダセンシング」が標準装備される。拡大

軸足はミニバンからワゴンへ

一方、日本仕様においてはミニバンのみとされた。発表時のパワートレインは1.5リッター直4+電気モーター内蔵型7段DCTのハイブリッドのみで、中国版もそうだけれど、2列目にキャプテンシートを採用。しかもこの2列目は、リアのホイールハウスを避けるよう前後V字型にスライドすることで、より広いレッグルームを確保していた。もっとも、後方に引いた際には両者の間は当然狭まるから、足元をうんと広くして隣の人との距離をくっつけるとなると、できることは限られてくる、という気はする。

それはともかく、ホイールベース2760mmの小型車で、3列目シートの住人のレッグルームを稼ぐべく、ホンダお得意のセンタータンク方式ながら、従来にない超薄型を開発して、2列目シートのちょうどフロア下に出っ張ることなくおさめた。これにより2列目シートの座面のクッションの厚さも確保できた、というのがホンダの主張だ。

このジェイドに2018年5月、マイナーチェンジが施され、車種構成が変更になった。2015年5月(ということはデビューの3カ月後)に1.5リッターVTECターボエンジンを搭載するスポーティー仕様「RS」が追加されていたわけだけれど、このRSが、3列シート6人乗りから、2列シート5人乗りに改められた。と同時に1.5リッター+モーターのハイブリッドでも新たに選択できるようになった。つまり、RSは5人乗りで、パワートレインは2種類選べるようになった。これによりジェイドは、6人乗りミニバン市場に片足を残しつつ、5人乗りワゴン市場へも進出したことになる。
 
というわけで、最新型ジェイドの月間の目標販売台数は500台。フェイスリフトを受けた5月に通称名別の登録台数の統計で50位に顔を出した。前置きが長くなった。インプレッションにとりかかろう。

「ホンダ・ジェイド」の全高は、グレードにより1530mmまたは1540mm。多くの立体駐車場が利用可能となっている。
「ホンダ・ジェイド」の全高は、グレードにより1530mmまたは1540mm。多くの立体駐車場が利用可能となっている。拡大
3人掛けの後席。前後にスライドできないものの、背もたれのリクライニング機能が備わっている。
3人掛けの後席。前後にスライドできないものの、背もたれのリクライニング機能が備わっている。拡大
後席の中央席は、左右席用の大型アームレストやカップホルダーを兼ねる。
後席の中央席は、左右席用の大型アームレストやカップホルダーを兼ねる。拡大
1.5リッター直4エンジンをベースとするハイブリッドユニット。JC08モードの燃費値は24.2km/リッター。
1.5リッター直4エンジンをベースとするハイブリッドユニット。JC08モードの燃費値は24.2km/リッター。拡大
「ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING」のフロントまわり。ブラックのLEDヘッドランプやダーククロームメッキ仕上げのフォグランプモールディングが特徴となっている。
「ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING」のフロントまわり。ブラックのLEDヘッドランプやダーククロームメッキ仕上げのフォグランプモールディングが特徴となっている。拡大

インテリアのムードは上々

試乗車は「ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING」である。ジェイドはこれを機に、全モデル、ホンダの安全運転支援システム「ホンダセンシング」が標準装備化された。

車両価格は、ハイブリッドゆえにジェイドの中で最も高価で289万8720円。RS専用のボディーカラーである「プレミアムクリスタルオレンジ・メタリック&ブラックルーフ」は11万8800円高だから、300万円を超える。そのかいあって、新型ジェイドのイメージカラーをまとったこれはまぶしいぐらい鮮烈で、イカしている。

運転席に乗り込むと本革巻きのステアリングホイールにはボディー色と同じオレンジのステッチが入っている。RS専用コンビシートは、ラックススエードと合成皮革の組み合わせで、これまたオレンジのステッチが入っている。ただ、RSのボディー色はオレンジに限定されているものではなくて、ホワイトやらレッドやらブルーやらを選んでも、内装はブラック×オレンジのステッチの組み合わせしかない。なぜなの? という疑問はボディー色に合わせてステッチをいちいち変えるほどの予算がなかった、と推測することで片付けるとして、少なくともオレンジ色のボディー色のジェイドRSのインテリアはスポーティーかつおしゃれなムードが漂っている。インストゥルメントパネルとドアの内側の一部にカーボン調のパネルが用いられていたりもして。

スカットルが低くて、1980~90年代のホンダ車の特徴である、グラスエリアの広い良好な視界が広がっていて、筆者はけっこういいな、と思った。着座姿勢は、出自がミニバンであることを考えるとますます低い。「セダンでもミニバンでもない新しい乗り物」をつくろうとした開発者の意図がよくわかるような気もする。

試乗車は「プレミアムクリスタルオレンジ・メタリック」のボディーカラーとブラックルーフの2トーンカラー仕立て。ボディーと同色のルーフカラーも選べる。
試乗車は「プレミアムクリスタルオレンジ・メタリック」のボディーカラーとブラックルーフの2トーンカラー仕立て。ボディーと同色のルーフカラーも選べる。拡大

「ジェイド」の「RS」グレードには、走行時の騒音を抑える18インチのノイズリデューシングアルミホイールが装着される。


	「ジェイド」の「RS」グレードには、走行時の騒音を抑える18インチのノイズリデューシングアルミホイールが装着される。
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リアコンビランプも、ダーク調の「RS」専用品が与えられる。
リアコンビランプも、ダーク調の「RS」専用品が与えられる。拡大
コックピットにおける視界のよさは、「ジェイド」のセリングポイントのひとつ。
コックピットにおける視界のよさは、「ジェイド」のセリングポイントのひとつ。拡大
後席側から見た「ジェイド」5人乗り仕様の室内。「RS」グレードの場合、ステッチをはじめとするさまざまな部分にオレンジのアクセントが添えられる。
後席側から見た「ジェイド」5人乗り仕様の室内。「RS」グレードの場合、ステッチをはじめとするさまざまな部分にオレンジのアクセントが添えられる。拡大

60年代のスターのような

エンジンは、ま、ハイブリッドなのだから当然だけれど、スターターを押してもメチャクチャ静かである。バッテリーがビンビンである限り、モーターが主導権を握っていて、しばらく内燃機関は眠っている。

高速道路にあがってフル加速を試みると、1496ccの直噴エンジンたるこれは、環境問題によって手も足も縛られている割には、快音を発する。最高出力131psを6600rpmで、最大トルク155Nmを4600rpmで発生し、電気モーターとの連携によって、とりわけ初期加速にハイブリッド特有のなめらかな加速を披露する。電気モーターの最高出力は29.5ps/1313-2000rpm、最大トルクは160Nm/0-1313rpmで、とりわけトルクの支援は心強い。さりとて、モーレツに速いかといえば、それを期待されるかたもいらっしゃらないとは思うけれど、あくまで実用車の範囲である。乗り心地は基本的にフラットで、良路では特に文句がない。225/45R18サイズの「ダンロップSP SPORT MAXX 050」をちゃんと履きこなしている。

してみると、ジェイド ハイブリッドRSの魅力は、雰囲気が適度にスポーティーなワゴンという、いまどきありそうで、実はなかなか得難いキャラクターにありそうだ。3列目のシートを取っ払ったことによって、2列目のシートの居住空間が大幅に広がった、ということはない。キャプテンシートの代わりに普通のベンチシートになったのだから、むしろ華やかさは減じたというべきだろう。たぶん。たぶん、というのは直接比較していないためである。荷室も、驚くほど広くはない。カタログを見ると、27インチの自転車が前輪を外すと縦に入るようではある。それだけ入れば、ま、十分ではあるだろう。

基本的に同じ1.5リッター+モーターのハイブリッドを搭載する「ホンダ・シャトル」とどう違う? シャトルは「フィット」のワゴンで、ホイールベースがフィットと同じ2530mmしかない。ジェイドもフィットベースかもしれないけれど、もうちょっとでかい。シャトルに比べると、1クラス上で、100万円近く高いわけである。ジェイドRS は、シャトルのカッコつけたおにいさんなのだ。

カッコつけたおにいさん、というと筆者は石原裕次郎とか小林 旭とか、あるいは若大将の加山雄三とかの60年代の銀幕のスターを思い浮かべる。さすがに古すぎる? ですよねぇ……。申し上げたかったのは、近頃このクラスでカッコつけたおにいさんのためのクルマが日本車であっただろうか? ということである。すぐに浮かぶ答えは「スバル・レヴォーグ1.6GT EyeSight」だけれど、つまりジェイドRSはいまや日本ではごく限られていそうなマーケットをターゲットにしているように筆者には思われる。

単に筆者のカン違いかもしれないけれど、ジェイドをごくたまに見かけたりすると、どこか懐かしい風が吹いてくるような気がする。う~む、気のせいかしら。あ。いまのいま、高度経済成長の真っただ中にある中国市場向けに開発されたモデルだから……なのかもしれない。

(文=今尾直樹/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

マイナーチェンジでは、デュアルクラッチ式7段ATのギアレシオと駆動力制御も見直され、発進加速時のレスポンス向上が図られた。
マイナーチェンジでは、デュアルクラッチ式7段ATのギアレシオと駆動力制御も見直され、発進加速時のレスポンス向上が図られた。拡大
天地に薄いデザインのメーターパネル。前方視界を確保する意味もある。
天地に薄いデザインのメーターパネル。前方視界を確保する意味もある。拡大
センターコンソールのカップホルダー。助手席側(写真左側)は、リンク状のホルダーを収納すれば小物を入れるトレーとして使える。
センターコンソールのカップホルダー。助手席側(写真左側)は、リンク状のホルダーを収納すれば小物を入れるトレーとして使える。拡大
後席の背もたれを倒し、荷室空間を最大にした状態。床面のうち後席からなる部分は、完全にはフラットにならない。
後席の背もたれを倒し、荷室空間を最大にした状態。床面のうち後席からなる部分は、完全にはフラットにならない。拡大
「RS」グレードには、専用カラー(ブラック)のハイマウントストップランプが装着される。
「RS」グレードには、専用カラー(ブラック)のハイマウントストップランプが装着される。拡大
今回は、高速道路を主体に約240kmの距離を試乗。燃費は満タン法で16.1km/リッター、車載の燃費計で15.7km/リッターを記録した。
今回は、高速道路を主体に約240kmの距離を試乗。燃費は満タン法で16.1km/リッター、車載の燃費計で15.7km/リッターを記録した。拡大

テスト車のデータ

ホンダ・ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1775×1540mm
ホイールベース:2760mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:131ps(96kW)/6600rpm
エンジン最大トルク:155Nm(15.8kgm)/4600rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:24.2km/リッター(JC08モード)
価格:289万8720円/テスト車=335万6640円
オプション装備:車体色<プレミアムクリスタルオレンジ・メタリック&ブラックルーフ>(11万8800円)/ナビ装着用スペシャルパッケージ+ETC車載器(4万3200円) ※以下、販売店オプション Gathersナビゲーションシステム(20万5200円)/プラカーペットマット(4万1040円)/ドライブレコーダー(2万7000円)/リアカメラde安心プラス(2万2680円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2016km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:242.0km
使用燃料:15.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.1km/リッター(満タン法)/15.7km/リッター(車載燃費計計測値)

ホンダ・ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING
ホンダ・ジェイド ハイブリッドRS Honda SENSING拡大
試乗車には、8インチディスプレイの純正ナビゲーションシステム(販売店オプション)が装着されていた。
試乗車には、8インチディスプレイの純正ナビゲーションシステム(販売店オプション)が装着されていた。拡大
荷室のフロアボード下にも予備の収納スペースが確保される。
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