マツダ・ロードスターSスペシャルパッケージ(FR/6MT)/ロードスターSスペシャルパッケージ(FR/6AT)
ライトウェイトスポーツの本分 2015.03.20 試乗記 「軽量コンパクト」という原理原則に立ち返った4代目「マツダ・ロードスター」。2015年6月の販売開始を前に、その走りを試す機会を得た。最軽量グレードの重さは990kg
横浜で新型ロードスターのプレス試乗会が開かれた。6月の発売まではまだ3カ月あるのに、基地となったホテルのロビーには「ソウルレッド」の一台が展示され、デザイナーのプレゼンテーションもその実車を囲んで行われた。その気ならだれでも聞くことができた公開プレゼンである。
3月20日付で明らかになったのは、スペックと装備と価格。これらが出そろったことで、販売の予約受付も始まった。
4代目になる新型(ND)のハイライトはなんといってもその軽さだ。エンジンを2リッターから1.5リッターにサイズダウンしたとはいえ、3グレードあるうちの最軽量「S」では、先代(NC)の最軽量モデルより120kg軽い990kgを達成している。3915mmの全長は、ロードスター史上最も短く、その2座オープンボディーには、NCより多くのアルミや高張力鋼板が使われた。そのほか、グラム作戦と呼ばれる軽量化を徹底した結果の1トン大台切りである。
エンジンはすでに明らかにされていた131psの1.5リッター4気筒。「アクセラ」用(111ps)をブラッシュアップした直噴ユニットである。
1台90分枠で乗ったのは、いずれも「Sスぺシャルパッケージ」のMTとAT。990kgのSは競争激甚で乗り損ねたが、スペシャルパッケージのMTでも1010kgにとどまる。軽量の広告塔として、SではLSDやリアのスタビライザーが省かれているため、量販モデルは中級グレードのスペシャルパッケージになると思われる。
ファーストタッチから気持ちいい
軽量設計は、走る前からわかった。シートに座り、座面裏に手を入れてスタンスを合わせようとしたそのスライドレバーが、細い。スズキか!?
トランクオープナーとフューエルリッドオープナーが、室内のどこを探してもない。トランクを開けるのは、ボディー外側のボタンのみ。給油口のフタはエンジンをきって、フタを押すと開く。車内からの遠隔操作機構はない。助手席グローブボックスを付けなかったのも、シートのスプリングを金属バネから樹脂のネットに変えたのも軽量化のためだという。
走りだしても、軽い。まず乗り心地がかろやかだ。エンジンの回転も軽い。新採用された電動パワーステアリングの操舵(そうだ)力も、爽やかに軽い。それらの相乗効果で、ファーストタッチから実に気持ちよく軽いクルマである。いろいろなものが軽くても、骨格のボディーはしっかり固い。スカットルシェイクなんていう専門用語を忘れさせるくらい剛性感の高いオープンボディーである。
鍛造クランクシャフトやFRレイアウト用に設計された4-2-1のタコ足排気マニホールドなど、専用部品がインストールされたエンジンは7500rpmまでストレスなく回る。1.5リッターの自然吸気だから、トルクでまい進するばか力はないが、日常的に「胸のすく加速」が味わえる。
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どちらのトランスミッションも捨てがたい
さらにMTモデルでいいのは、そのMTそのものである。トップギアが直結のクロスレシオ6段を操るシフトレバーのタッチがすばらしい。2010年で終わった「シビック タイプR」(FD2)と並ぶ日本車MTのベストフィールだと思う。小さな球形シフトノブを持つ短いシフトレバーがアイドリング中にフルフル震えるのは、軽量フライホイールがもたらす武者震いである。アイドリングストップが働けばもちろん消える。
これまでのロードスターのMT販売比率は8割にのぼるという。このAT王国にあって、痛快なまでのMTシェアである。だが、今度はATも魅力を増した。
アイシン・エィ・ダブリュ製の6段ATには、新たにブリッピング機能が付いた。シフトパドルのタッチもスポーティーになった。変速は素早い。しかも、シフトアップ/ダウンの際にはタコメーターの針が機械式のようにピッピッと上がり下がりして、カッコイイ。「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」や「ポルシェ911」のデュアルクラッチ自動MTをほうふつさせる。針のダンピングを省いて、そういう演出にしたのだという。左膝のコラーゲンが足りなくなった中高年の専有物にしたくないATである。
そういえば、四十肩、五十肩のベテランドライバー、あるいは非力な女性などにうれしいのが、新しいソフトトップである。コックピット後ろにあるレバーを引くと、畳まれていた幌(ほろ)がバネの力で上方に少し伸び上がる。取っ手に手を入れ、そこから一気に幌を前へ繰り出し、レバーをロックする。手間も力もいらない。折り畳み傘と同じくらい簡単に開け閉めできる。面倒くさいから開けないという言い訳はもう通用しない。
初代のファンにこそ試してほしい
2台の新型ロードスターに乗っていて、その乗り味が何かに似ているゾと考えて、最後に思い当たった。「フォルクスワーゲンup!」である。
という感想をチーフエンジニアの山本修弘さんに伝えると、一瞬、顔が曇ったような気がしたが、これはほめ言葉である。up!の軽さ、そしてup!だけでなく、「ポロ」や「ゴルフ」などのフォルクスワーゲン車に共通して感じるフリクションのなさ、つまり滑らかな作動感が、新型ロードスターはよく似ているなと思ったのである。
数カ月前、先代NCの「RS」に試乗した。まだ記憶に新しいあのクルマと比べると、NDはまるで冬物から春物に衣替えしたかのように身軽だ。当のオーナーさえたじろがせるパワーではなく、おのれの軽さを武器に走るというライトウェイトスポーツカーの本質に、初代NA以上に向き合ったのがNDである。
初の公道試乗会に並んだ広島ナンバーの10台は、いずれも先行量産車である。ユーザーにデリバリーされるクルマが今回のものとまったく同じなら、今も根強いNA信奉者にも「最良のロードスターは最新のロードスター」と感じてもらえるだろう。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
マツダ・ロードスターSスペシャルパッケージ(6MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1010kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:17.2km/リッター
価格: 270万円/テスト車=297万円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドプレミアムメタリック>(5万4000円)/セーフティーパッケージ<ブラインド・スポット・モニタリング[リア・クロス・トラフィック・アラート機能付き]+ハイビーム・コントロールシステム+アダプティブ・フロントライティング・システム+車線逸脱警報システム>(10万8000円)/CV/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/Boseサウンドシステム<AUDIOPILOT 2>+9スピーカー(7万5600円)
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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マツダ・ロードスターSスペシャルパッケージ(6AT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1050kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:18.6km/リッター
価格: 280万8000円/テスト車=302万4000円
オプション装備:セーフティーパッケージ<ブラインド・スポット・モニタリング[リア・クロス・トラフィック・アラート機能付き]+ハイビーム・コントロールシステム+アダプティブ・フロントライティング・システム+車線逸脱警報システム>(10万8000円)/CV/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)/Boseサウンドシステム<AUDIOPILOT 2>+9スピーカー(7万5600円)
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
※数値はいずれも2015年3月現在のもの。発売までに変更される可能性があります。

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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