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ホンダ・シャトル ハイブリッドZ(FF/7AT)/シャトル ハイブリッドX(FF/7AT)/シャトルG(FF/CVT)

もうひと工夫欲しかった 2015.06.09 試乗記 下野 康史 もはや派生車種にあらず。「フィット」の名に別れを告げ、車名も新たに「ホンダ・シャトル」となって登場したホンダの新型コンパクトワゴンの実力を探る。

「フィットではない」と言うけれど

フィットから生まれた新型コンパクトステーションワゴンがシャトルである。
先代は2011年に登場した「フィットシャトル」。ベースを現行の4代目フィットにアップデートしたら、フィットの名前が取れた。同じファミリーネームを付けることで販売台数の上積みに貢献するというメリットを捨てて、あえてシャトルとして独立させたのは、フィットよりアッパークラスというキャラクターとイメージを明確にしたかったからだという。

とはいえ、フロントマスクの化粧で新味を出してはいるものの、リアドアまではフィットと同じである。2530mmのホイールベースも変わらない。違いは、リアシートから後ろをフィットより40cm以上延ばし、たっぷりした荷室空間を与えたこと。立体駐車場ギリギリの1545mm(FF)というトールサイズでステーションワゴンという呼び名は、どうもピンとこないが、現行ホンダ車で唯一、ステーションワゴンを名乗るのがシャトルである。
パワーユニットは、アトキンソンサイクルの1.5リッターにモーターを組み合わせたハイブリッドと、生エンジン(?)の直噴1.5リッターの2種類。いずれもフィットと共通のユニットである。

「ホンダ・シャトル」はコンパクトカー「フィット」のプラットフォームをベースに開発されたワゴンモデルであり、「フィットシャトル」の後継モデルに当たる。
「ホンダ・シャトル」はコンパクトカー「フィット」のプラットフォームをベースに開発されたワゴンモデルであり、「フィットシャトル」の後継モデルに当たる。
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ベース車とは大きく意匠が異なるフロントマスク。「ハイブリッドZ」と「ハイブリッドX」にはLEDヘッドランプが標準装備される。
ベース車とは大きく意匠が異なるフロントマスク。「ハイブリッドZ」と「ハイブリッドX」にはLEDヘッドランプが標準装備される。
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パワーユニットは基本的に「フィット」のものと共通。ハイブリッド車には1.5リッターエンジンと、7段デュアルクラッチ式AT内にモーターを組み込んだ「i-DCD」と呼ばれるシステムが搭載される。
パワーユニットは基本的に「フィット」のものと共通。ハイブリッド車には1.5リッターエンジンと、7段デュアルクラッチ式AT内にモーターを組み込んだ「i-DCD」と呼ばれるシステムが搭載される。
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ハイブリッド車のシフトセレクター。「ハイブリッドZ」「ハイブリッドX」には、マニュアルモード用のシフトパドルも備わる。
ハイブリッド車のシフトセレクター。「ハイブリッドZ」「ハイブリッドX」には、マニュアルモード用のシフトパドルも備わる。
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しっとりと落ち着いた乗り味

横浜~逗子マリーナの約40kmを往復する試乗会で乗ったのは、ハイブリッドの上位モデル、「ハイブリッドZ」と「ハイブリッドX」。最初に試したのはシリーズ最上級のハイブリッドZ(238万円)だった。

内装色は「リゾーターブラウン」という濃淡の茶系ツートーン。助手席ダッシュボードやドアパネルにはウッド風の加飾プレートが貼られている。センターコンソールは高い位置にあり、シフトセレクターの下部はフローティングして物入れになっている。アレっ、フィットってこんなに凝った立体デザインだったっけ。あとで確認すると、もちろんフィットとは異なり、SUVの「ヴェゼル」初出の造形だという。
いずれにしても、フィットよりはひとクラス上に感じられる。そんな印象は、走りだすといっそう強くなった。

フィット家からの“独立”を納得させるのは、足まわりである。車重がフィットより100kg以上重いこともあるだろうが、シャトルの乗り心地はよりしっとり落ち着いている。ダンパーは全グレードがザックス製(フィットはショーワ)。中でもハイブリッドのZとXには振幅感応型ダンパーが付く。大入力時の性能に合わせると、低速低負荷時のザラついた乗り心地には目をつぶらないといけない、という二律背反を解消したダンパーだ。ホンダ車での採用は初めてではないが、ZとXの乗り心地のよさには少なからず貢献していると思われる。

「ハイブリッドZ」のインテリア。
「ハイブリッドZ」のインテリア。
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「プライムスムース」と呼ばれる合成皮革とファブリックのコンビシート。
「プライムスムース」と呼ばれる合成皮革とファブリックのコンビシート。
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シフトセレクターの下の収納スペースには、USBやHDMIのコネクターが備わっている。
シフトセレクターの下の収納スペースには、USBやHDMIのコネクターが備わっている。
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16インチのアルミホイールが用意されるのは、最上級グレードの「ハイブリッドZ」のみ。
16インチのアルミホイールが用意されるのは、最上級グレードの「ハイブリッドZ」のみ。
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アドバンテージは荷室にあり

フィットに対するシャトル最大のアドバンテージは、荷室の広さと使い勝手である。平常時の荷室フロアは、シャトルのほうが奥行きで26cm、幅で48cm(いずれも実測)も広い。リアシートの背もたれを倒して、フルフラットにすると、カーペットの上で173cm(フィットは143cm)の奥行きがとれる。
フィットのテールゲート開口部には、高さ10cmほどの敷居があるが、シャトルはステーションワゴンだから、いわゆる“掃き出し”で、邪魔な出っ張りがない。重い箱モノをズルズル押し引きしながら出し入れすることができる。
さらにシャトルはリチウムイオン電池を収めるIPU(インテリジェントパワーユニット)の吸気ダクトを扁平(へんぺい)化して、荷室フロアの地上高をフィットより6cm下げている。床の地上高は54cmと低く、荷室の使い勝手のよさに大きく貢献している。

ハイブリッドのZとXに備わるマルチユースバスケットもシャトルの新趣向である。後席背もたれの背後に付く格納式の物入れだ。プレゼンテーションでは「大切な物を入れるためのスペース」と説明されたが、荷室のこんなところに入れる大事なものって、何だろうか。カタログでは、花束とオシャレな帽子が載っていて、なんじゃそりゃという感じだ。

「ハイブリッドZ」のラゲッジルーム。本文中の“掃き出し”とは、荷室の床面と開口部に段差がない状態をさす。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
「ハイブリッドZ」のラゲッジルーム。本文中の“掃き出し”とは、荷室の床面と開口部に段差がない状態をさす。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
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荷室の床下に備わる収納スペース。仕様によって容量が異なり、ハイブリッドのFF車では30リッターとなる。
荷室の床下に備わる収納スペース。仕様によって容量が異なり、ハイブリッドのFF車では30リッターとなる。
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リアシートの後方に設けられたマルチユースバスケット。使わないときは畳んでおくことができる。
リアシートの後方に設けられたマルチユースバスケット。使わないときは畳んでおくことができる。
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他のホンダ車と同じく、リアシートには座面の跳ね上げ機構を採用している。
他のホンダ車と同じく、リアシートには座面の跳ね上げ機構を採用している。
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より差別化を図るために

立ち上がりの受注では、9割近くがハイブリッド、中でも中間グレードのハイブリッドX(219万円)が最も高い人気を持つという。

ハイブリッドではない直噴1.5リッターモデル、「G」(169万円)にも短時間ながら乗ってみたが、ベーシックモデルびいきの筆者でも、シャトルはハイブリッドをお薦めする。ハイブリッドZ、Xに比べると、乗り心地の質感が明らかに劣る。
今回、実走燃費は計測できなかったが、試乗車の車載燃費計は、Gで14km/リッター台、ハイブリッドのZとXがいずれも17km/リッター台を示していた。

開発スタッフによると、想定するガチンコライバルは「トヨタ・カローラフィールダー」だという。1.5リッターハイブリッドのステーションワゴンというスペックを考えると、たしかにそうかもしれないが、しかし実際のところ、シャトルの最大のライバルはやはりフィットだろう。
ひとクラス上の上等な雰囲気と、建て増しによる大きくて使いやすい荷室がシャトルの魅力である。だが、フィットとのけっこうな価格差を考えると、もうひと工夫あってもよかった。もう1列とは言わない、ボディー後部の中央にもう1席、格納式のオケージョナルシートを与えて6人乗りにするとか。例えばそんな遊びがあってもよかったように思う。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)

ラインナップは、ガソリン車が「G」の1グレードなのに対し、ハイブリッド車には「ハイブリッド」「ハイブリッドX」「ハイブリッドZ」の3グレードが用意される。
ラインナップは、ガソリン車が「G」の1グレードなのに対し、ハイブリッド車には「ハイブリッド」「ハイブリッドX」「ハイブリッドZ」の3グレードが用意される。
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ガソリン車の「G」。価格はハイブリッド車の廉価グレードより30万円安い、169万円(FF車)となっている。
ガソリン車の「G」。価格はハイブリッド車の廉価グレードより30万円安い、169万円(FF車)となっている。
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「G」のインテリア。アナログ式のメーターやシフトセレクターのまわりのデザインなどが、ハイブリッド車との大きな違いとなる。
「G」のインテリア。アナログ式のメーターやシフトセレクターのまわりのデザインなどが、ハイブリッド車との大きな違いとなる。
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「ハイブリッドX」
「ハイブリッドX」
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ホンダ・シャトル ハイブリッドZ
ホンダ・シャトル ハイブリッドZ 拡大

テスト車のデータ

ホンダ・シャトル ハイブリッドZ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4400×1695×1545mm
ホイールベース:2530mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm
システム最高出力:137ps(101kW)
システム最大トルク:17.3kgm(170Nm)
タイヤ:(前)185/55R16 83V(後)185/55R16 83V(ブリヂストン・トランザER370)
燃費:29.6km/リッター(JC08モード)
価格:238万円/テスト車=259万8057円
オプション装備:ボディーカラー<ミスティックガーネット・パール>(3万2400円)/Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器(18万5657円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ホンダ・シャトル ハイブリッドX
ホンダ・シャトル ハイブリッドX 拡大

ホンダ・シャトル ハイブリッドX

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4400×1695×1545mm
ホイールベース:2530mm
車重:1220kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
最高出力:110ps(81kW)/6000rpm
最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpm
モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm
システム最高出力:137ps(101kW)
システム最大トルク:17.3kgm(170Nm)
タイヤ:(前)185/60R15 84H(後)185/60R15 84H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:32.0km/リッター(JC08モード)
価格:219万円/テスト車=240万8057円
オプション装備:ボディーカラー<ティンテッドシルバー・メタリック>(3万2400円)/Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器(18万5657円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

ホンダ・シャトルG
ホンダ・シャトルG
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ホンダ・シャトルG

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4400×1695×1545mm
ホイールベース:2530mm
車重:1130kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:132ps(97kW)/6000rpm
最大トルク:15.8kgm(155Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)185/60R15 84H(後)185/60R15 84H(ヨコハマ・ブルーアースE50)
燃費:21.8km/リッター(JC08モード)
価格:169万円/テスト車=191万8960円
オプション装備:ナビ装着スペシャルパッケージ(4万1143円)/あんしんパッケージ(6万1560円)/LEDヘッドライト(6万6857円)/Hondaスマートキーシステム(3万2400円)/プラズマクラスター付きオートエアコン+スーパーUVカットフロントドアガラス+IRカットフロントウィンドウガラス+IRカットフロントドアガラス(2万7000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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