スバル・インプレッサスポーツ ハイブリッド2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
違いは燃費だけにあらず 2015.07.27 試乗記 スバルにとって2番目のハイブリッドモデルとなる「インプレッサスポーツ ハイブリッド」が登場。CVTにモーターを組み合わせたスバル独自のパワーユニットと、専用チューニングのサスペンションが織り成す走りを試した。地味ではあるが確かな進化
4代目となる現行「インプレッサ」が登場したのは2011年のこと。以降、年次ごとに細かなリファインが施され、2014年秋にはフェイスリフトを含むマイナーチェンジが施されている。
マイナーチェンジ? フェイスリフト? と、お思いの方、意外と多いのではないだろうか。実は僕もスバルの側に言われるまで、インプレッサの意匠変更なんて気づきもしなかった。よくよく見れば前期型に対してバンパー形状が若干勇ましくなり、サイドインテーク風にブラックアウトされた部位にメッキの加飾も施されている。
気づかない自分の鈍さを棚に上げて言うのもなんだが、昔からスバルはこういう仕事が本当に下手だ。もっとこう、バーンと変わった感を出せばいいのに、既納客への遠慮もあるのかサラッとまとめてしまう。
「いやほんと、そうなんですよ。予算が少ないってえのもあるんですが、ウチは見せ方が苦手で……」
と、仰せになるエンジニアの方々は、そんな自分たちの所業が、実はまんざら嫌でもなさそうだ。お化粧下手でも中身はユーザーを裏切らないという姿勢は昨年のマイナーチェンジでも貫かれていて、ダンパーの減衰力やスプリングのバネレートを再設定した上で、ステアリングのギアレシオを若干クイック化し、乗り心地と操舵(そうだ)応答の整合性を高めている。フロントウィンドウ取り付け部の構造を変更し、吸音材を適所に追加することで静粛性も高めているが、遮音対策は実はこれが2度目だ。
普通のユーザーにとってはアイサイトがバージョン3になったことの方がよっぽど大事なのかもしれない。しかし、乗り比べでもしないと伝わりづらいこれらの改善項目が功を奏して、現状のインプレッサはスバルの現行車の中ではダントツの、かつ国内Cセグメントの中でも「マツダ・アクセラ」と比肩する優れたドライバビリティーを備えている。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に「メルセデス・ベンツAクラス」「ボルボV40」「フォード・フォーカス」……と、世界の強豪ひしめくこのセグメントで、日本代表を託すならこの2台をおいて考えられないだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ドライバビリティーのためのハイブリッド
そんなインプレッサのハッチバックである「スポーツ」に、このほどハイブリッドモデルが追加された。その基本的なメカニズムは、先に投入されている「XVハイブリッド」と違いはない。エンジンは150psを発生する自然吸気の2リッター水平対向4気筒。その後方に、リニアトロニック(CVT)と13.6ps/6.6kgmのコンパクトなモーターを組み合わせた、ミッションケース一体型のドライブトレインが搭載され、駆動方式は4WDとなっている。5.5Ahのニッケル水素バッテリーはインバーターやコンバーター、コントロールユニットなどとともに後方の荷室下に収められるため、荷室容量は標準的なグレードに対して1割ほど天地に狭い。
システムの傾向はトヨタの「THS」のように発進や街中でバンバンEV走行をするというよりも、低負荷巡航時や下り坂などでエンジンを頻繁にカットしたり、減速エネルギーを回生したりという、ホンダの「IMA」に似たマイルドタイプといえるだろう。
それゆえ燃費は20.4km/リッターと、同じ2リッターエンジン&CVTを搭載するガソリン車からの伸びは25%程度。エコカー減税も「免税対象」ではなく、基準車に対して4万円ほど多く適用される程度だ。同一グレードでの価格差は25万円程度なので、ハイブリッドにまつわる負担は実質的に20万円強という感じになる。
スバルのハイブリッドは、縦置きCVTのプライマリープーリーの後ろにモーターを置くという構造上、モーターのサイズがどうしても制限される。あくまで燃費マターで考えると、そこが致命的だ。ゆえに、商品としては「一にも二にも節約」というのではなく、別の魅力を持たせる必要がある。このクルマが、専用エクステリアとともに17インチの大径タイヤや専用セッティングのサスペンションを備えたスペシャルモデルという扱いになっているのはこのためだ。とあらば、ハイブリッドもむしろドライバビリティーの側に寄与しなければならないだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
悩ましいガソリン車との差額
それが最も顕著に感じられるのは、日常域でのスピードコントロールのリニアリティーだ。アクセルの踏みしろとエンジン回転数が一致しないというCVT特有のズレ感、そしてよくラバーフィールと例えられる加速の間延び感は、よく抑えられている。特に、発進から60km/h程度までのタウンスピード領域において、ドライバーの意図した通りに加速するよう、セットアップには留意したという。XVハイブリッドでの経験値を踏まえ、差し障りのないところまでマージンを削りつつ、バッテリーのレスポンス(入出力の大きさや速さ)を高めるなど、独自のセットアップでモーターを積極的に活用しているそうだ。
低偏平タイヤに合わせて設定されたサスセットは乗り心地についてはごくわずかに硬さを感じる場面もあるが、操舵ゲインは確実に高められている。普段乗りでのキビキビ感向上を狙ったものだろうが、その目的はきれいに果たしているといえるだろう。
果たして、この差異に対して20万円ほどの余計な出費が適切か否か。それを判断する上で、ひとつ引っかかるのがアイサイトだ。ハイブリッド車には全車速追従クルーズコントロールと連動して、モーターの使用領域を最大化する「ECOクルーズコントロール」機能が設けられている。その制御ロジックの関係で、ひとつ古い世代のアイサイトバージョン2が用いられているのだ。しかし制御項目が増え、アルゴリズムもより実践的となったバージョン3を知るにつけ、いまさらバージョン2には戻りたくないというジレンマもあるだろう。「それはクルマの動的本質とは関係ない」と思いつつ、この機能が今やスバルにとってのキラーコンテンツになっているのも確かなわけで……。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
スバル・インプレッサスポーツ ハイブリッド2.0i-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1755×1490mm
ホイールベース:2645mm
車重:1500kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:150ps(110kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4200rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:6.6kgm(65Nm)
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:263万5200円/テスト車=289万4400円
オプション装備:SDナビゲーション<リアビューカメラ・地デジアンテナ・ステアリングリモコンスイッチ付き>+HIDロービームランプ<ポップアップウオッシャー付き>(25万9200円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:830km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。




























