メルセデス・ベンツCLA180シューティングブレーク スポーツ(FF/7AT)
よりしなやかに、よりメルセデスらしく 2015.07.24 試乗記 「メルセデス・ベンツCLAクラス」にワゴンボディーの「シューティングブレーク」が登場。伸びやかなスタイリングで話題を集める同車だが、走りについても注目すべきトピックが隠れていた。タイヤの変更だけでは説明できない
ワゴンとクーペのクロスオーバー――CLAシューティングブレークの“キモ”は、そこにあるに違いない。
かくして、そんなこのモデルを矯めつ眇(すが)めつ眺めてみると、なるほど「刺さる人には刺さりそう」なのがそのスタイリングだ。
リアのコンビネーションランプが分割されるのを嫌い、開口幅が狭くなるのを承知の上でゲートがそれを避けて通るなどという、いわば“ワゴンとしての禁じ手”がまかり通るのも、このモデルがもはや「Cクラス」や「Eクラス」のワゴンのようなメルセデスのラインナップの“本道”ではなく、「こんなデザインは嫌だ!」と嫌悪の感を抱く人が現れることをあらかじめ許容した、半ばニッチな商品であるからこそなのだ。
フロントシート上で過ごす限り、先行販売中の4ドアクーペ版と変わるところがないのは当然。ルーフラインが、水平近い角度のままより後方まで引かれたおかげで、リアシート着座時のヘッドスペースにより大きい余裕があるのはうれしいプレゼントである。これにより、キャビン空間は何とか“フル4シーター”と呼ぶに足る水準を満たしているのは確かだが、見た目の流麗さをキープすべくサイドのウィンドウグラフィックはあくまでクーペ流儀で、それゆえリアシートへの乗降時の頭の運びがタイトなのは、その個性溢(あふ)れるルックスに免じて許すしかない部分であるだろう。
びっくりしたのは、日本デビュー時に早々のタイミングで乗った、4ドアクーペ版とのフットワーク・テイストの大きな違いだった。
実は「本国への発注のタイミングがより早かった『オレンジアート エディション』を除いて、これまで日本が独自にオーダーしていたランフラットタイヤの採用を取りやめた」と聞いていたので、メルセデスの作品らしからず荒々しかったその乗り味が、より“まとも”な方向へと向かうであろうことは想定の範囲内だった。
ところが、今回乗ったCLA180シューティングブレーク スポーツは、“それだけでは説明がつかない”ほどよりしなやかに、言葉を変えれば「よりメルセデスらしい乗り味」へと進化を遂げていたのだ。
もちろん、ボディー形状が変わり、その剛性や重量配分が変化したことで、それに対応すべくサスペンションのセッティングが4ドアクーペとは異なるものとされた可能性も否定はできない。
けれども、率直なところ、「それだけでは説明がつかない」という印象を受けたのだ。そもそも4ドアクーペ版も含めたリファインが行われたのではないか? と、そんな想像を抱かされるのである。
いずれにしても、ローンチからある程度の時間が経過して、CLAの乗り味が「よい方向に向かっている」ことは確かだと思う。それが、シューティングブレークに乗って得られた最大の成果であったりもしたのだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸)
【スペック】
全長×全幅×全高=4685×1780×1435mm/ホイールベース=2700mm/車重=1500kg/駆動方式=FF/エンジン=1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(122ps/5000rpm、20.4kgm/1250-4000rpm)/トランスミッション=7AT/燃費=15.9km/リッター(JC08モード)/価格=428万円

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
































