ホンダ・ステップワゴン スパーダ(FF/CVT)
サプライズ満載ミニバン 2015.08.07 試乗記 上にも横にも開くテールゲートからエンジンまで、いろいろなところが新しくなった、ホンダのミニバン「ステップワゴン スパーダ」。実際に乗ってみたら……? その使い勝手や走り、燃費などを報告する。どこでも使える技ありドア
今年に入ってから、ホンダは最高級サルーンの新型「レジェンド」を出し、軽スポーツカーの「S660」を発売した。その一方、「ジェイド」「シャトル」「ステップワゴン」と、人やモノを積むワゴン系を立て続けに発表した。やっぱりこっちがホンダの“本業”という感じだ。
その中にあって、新型ステップワゴンの売りは、ベースグレードを除く全モデルに備わる“わくわくゲート”である。通常通り、上ヒンジでガバッと開くテールゲートに、横開き機構も設けた。
今度のステップワゴンは、後ろが上にも横にも開く。そう聞いた時、まるで冷蔵庫の左右両開きドアを思わせるそんな画期的テールゲートを、ついに「ミニバンのホンダ」がつくったのか!? と思ったのだが、そうじゃないんですね。横に開くのは全幅の半分強だけ。完全な横開きと上開きのハイブリッドというわけではなかった。
試乗車は、若向きでスポーティーな内外装をまとうスパーダ。早速、筆者の自宅ガレージで後ろを開けようとしたら、図らずもわくわくゲートが役に立った。
車庫の高さは2mちょうど。ステップワゴンのボディー全高は1840mm。ノーマルなら大丈夫なのだが、スパーダは、テールゲートから10cm以上突き出したルーフスポイラーが天井にぶつかってしまって、ほとんど上開きができないのだ。わくわくゲートなら、上方に一切場所をとらないし、後ろに1mスペースがあれば、全開にできる。
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“わくわく”は条件次第
だが、実際にわくわくゲートを使ってみると、そんなにわくわくしなかった。
3列目シートを格納し、2列目を一番前に追いやると、「ルノー・カングー」もかくやの大容量荷室が広がる。ためしに、わくわくゲートからMTBを立てたまま積んでみたのだが、観音開きにガバッと開くカングーと違って、開口部の幅が狭い(実測63cm)のが難点である。しかもドアは直角までは開かないので、なおさら窮屈に感じる。
そんな大きなモノを出し入れする時は、広いところへ出て、テールゲートを上開きにすればいいわけだが、横開き構造を内蔵したゲートはそうとう重く、開閉にかなりの力がいる。電動機構が欲しいところである。
わくわくゲートから3列目シートにアクセスできるというのも、ひとつのうたい文句である。TVコマーシャルでも、野球少年がバットを肩にかついだまま乗り込んでゆく。でも、フルに3列目シートを設置していたら、野球小僧は背もたれを乗り越えていかなければならない。人を乗せることがメインのミニバンであることを考えると、果たしてそんなにわくわくゲートを使う機会があるだろうかという気がした。
といったように、クルマの一番後ろから話を始めてしまったが、ステアリングを握って走りだすと、5代目ステップワゴンはなかなか新鮮な乗り味のミニバンである。
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運転すればココロときめく
エンジンは、ジェイドにも搭載された新開発の直噴1.5リッター4気筒ターボ。先代は2リッター4気筒だったから、ダウンサイジングターボ化である。
この新エンジンがすばらしい。150psのパワーは同じだが、20.7kgmのトルクは旧型2リッターを上回り、力不足は感じない。なによりもいいのはエンジンのコンパクト感で、小さなものが滑らかに回る、気持ちのいい回転フィールが全域にわたって味わえる。
このエンジンで「S1500」を作ったらどうだろう。昔のおじさんは、実に気持ちよく回った初代「CR-X」の1.5リッターSOHCを思い出した。
標準のシートは、2列目がキャプテンシートの7人乗りだが、試乗車は2列目にオプションの6:4分割式シートが付いて、定員8人。このクラスのミニバンとしては、最も高い収容能力を誇る。車重は1.7トンに近い。
つまり、立派なガタイのピープルキャリアが、すごく小さなエンジンで動いている。そんなサプライズ感が新型ステップワゴンのおもしろさである。低いウエストラインやダッシュボードのおかげで、運転席からの視界は抜群にいい。ミニバンは大きくてイヤだとアレルギーを示していた女性ドライバーにも、このクルマは好まれるのではないだろうか。
CVTとエンジンとの相性はよく、CVTならではのシームレスな加速が、エンジンの滑らかさをさらに強調する。ひとつ気になったのは、エンジンブレーキの利きがほとんど期待できないこと。セレクターにOD(オーバードライブ)解除スイッチのようなものも付いていない。最上級の「スパーダ クールスピリット」にしか装備されないパドルシフトをもっと広く採用してもらいたい。
次なるテーマも見えてきた!?
好印象のダウンサイジングターボのおかげで、まるで1.3リッターの「フィット」を運転しているような気軽さで動かせる8シーターミニバンが、このステップワゴンである。
自慢のわくわくゲートを使ってみると、これならルノー・カングー式の観音開きでいいのではないかと思った。観音開きならチョイ開けもできるし、全開にしても後ろにスペースは取らない。
だが、日本のミニバンや背高ワゴンで上開きが好まれるのは、開けたテールゲートを屋根として使えるからだろう。ステップワゴンのテールゲートも、少年サッカーチームひとつくらいは雨宿りできそうなほど大きい。
海辺へ行くと、テールゲートで雨や日差しを防いで、イスに座って釣りをしている人を見かける。キャンピングカーのオーニング(日よけ)は風に弱いが、テールゲートはなにしろボディーに付いているから、ちょっとやそっとの風ではびくともしない。
やっぱり「ミニバンのホンダ」には、上開きと観音開きの両方ができるテールゲートを実現してもらいたい。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=三浦孝明)
テスト車のデータ
ホンダ・ステップワゴン スパーダ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4735×1695×1840mm
ホイールベース:2890mm
車重:1690kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150ps(110kW)/5500rpm
最大トルク:20.7kgm(203Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92H/(後)205/60R16 92H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:272万5000円/テスト車=333万5200円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムスパイスパープル・パール>(3万7800円)/Hondaインターナビ+リンクアップフリー+ETC(22万6800円)/マルチビューカメラ&リアエンターテインメントシステムパッケージ(10万8000円)/Honda SENSING(10万8000円)/リア右側パワースライドドア(5万4000円)/2列目ベンチシート(2万1600円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット プレミアム(5万4000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4245km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:357.3km
使用燃料:27.4リッター
参考燃費:13.0km/リッター(満タン法)/11.5km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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