メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン アバンギャルド(FR/9AT)
暫定ベスト・イン・Cクラス 2022.03.23 試乗記 全車が電動化された新型「メルセデス・ベンツCクラス」には、もともと豊かなトルクを誇る2リッターディーゼルエンジンをさらにモーターでアシストするぜいたくなパワートレインが搭載されている。「ステーションワゴン」でその仕上がりを試した。SUVの時代でもステーションワゴン
かつてW124型の「Eクラス」のころまでは、メルセデスのステーションワゴンは「ベンツのバン」と呼ばれたこともあった。もちろん、一般的ではなく、クルマ好きの仲間内や業界内での話である。商用バンとは月と鼈(すっぽん)もいいところなのに、あえてそう呼ばれていたのは、メルセデスの「Tモデル」(当時はそういう呼称だった)に対する憧れとやっかみに加え、「仕事人」のための実用車としての敬意がないまぜになったあだ名のようなものと記憶している。
そういえば業界内では「日帰りワゴン」という呼び方もありました。どんなに遠くまで出かけても、ベンツのバンならその日のうちに、あるいはてっぺんを回っても帰ってくることができる、そうせざるを得ない忙しい人のための相棒という意味である。泊まりになんないすかねー、と愚痴をこぼすことも一度ならずありました。最近ファッションピープルかいわいで古い「300TE」などの人気が再燃しているのも、質実剛健な武骨さがカッコいいばかりでなく実用的な性能を併せ持つことが注目されているからだろう。
それが今や、「センシュアルピュアリティー」なるデザインテーマを標榜(ひょうぼう)するメルセデスのワゴンにそんな面影は見られない。まことスポーティーでクールでエレガント、すてきな日常生活と豊かな休日のためのクルマである。初代(W202型)以来、どうしてもCクラスはセダンが多数派というイメージがあったものの、近ごろでは販売比率が7:3と、ステーションワゴンが意外に健闘している。SUV全盛の時代にあっても、セダンと変わらない走行性能と多用途性をともに求める人は、私同様少なくないということだろう。
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ディーゼルにもISG
Cクラスとして5代目にあたる新型でもセダンと同時に発表されていたステーションワゴン版だが、ようやく実際に試すことができるようになった。ステーションワゴンのラインナップは、1.5リッター4気筒ガソリンターボ+ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)の「C200アバンギャルド」と2リッター4気筒ディーゼルターボ+ISGの「C220dアバンギャルド」、それに2022年2月に追加された「C180アバンギャルド」(パワートレインはC200同様だがエンジンの出力とトルクが170PS&250N・mと若干低い)、さらに車高が高いクロスオーバーの「C220d 4MATICオールテレイン」というもの。ただしセダンに設定されているガソリン4MATIC仕様はなく、ワゴンボディーの4WDはディーゼルのオールテレインに絞られる。
今回の試乗車は、そのなかから220dの「AMGライン」装着車、いっぽうでオプションのリアアクスルステアリングは備わらない仕様である。本来リアアクスルステアリングはC180とオールテレインを除く全車に装着可能だが(AMGラインとの同時装着)、最初期に導入されたC200以外にはないらしく、今後も自由に注文するのは難しいという。現在の世界情勢ではその他の装備も同様であることに留意されたい。
ご存じのように、新型Cクラスの特徴は(日本仕様では)すべてISG付きのパワーユニットに統一されたこと。OM654M型と呼ばれる新型ディーゼルターボも同様で、ディーゼル+ISGはメルセデスとしても初めてだという。
再始動が気にならない
ISGが加わって型式名に「M」が付いたディーゼルターボ(クランクシャフトが変更されて排気量も若干拡大)は従来型と比べてわずかにパワーアップ(+6PS/+40N・m)され、最高出力200PS/4200rpmと最大トルク440N・m/1800-2800rpmを生み出す。それに加えて瞬間的とはいえモーターによる20PSと208N・mをいわゆる「EQブースト」として得られるから、実用域でのパンチはたくましい。C200用ガソリン1.5リッター4気筒ターボは204PS/5800-6100rpmと300N・m/1800-4000rpmというスペックだから、ディーゼルのトルクの余裕は明らかで、9段ものATは必要ないのではと思えるぐらいだ。ちなみに欧州仕様の0-100km/h加速は7.4秒というから、ガソリン車よりも車重が90kg重いにもかかわらず、むしろ俊足といえる。
実用域での力強さよりも、新型の大きな特長と思えるのは始動時の振動がほとんど感じられないことだ。アイドリングストップが嫌いだという人は少なくないようだが、それは再始動の際のブルルンという身震いと音が気になるからだろう。街なかのストップ&ゴーでは頻繁にオン/オフを繰り返すが、新しくISG付きとなったこのユニットでは気にならないと言っていい。普通のエンジンではいったん回転が上がってから700rpmほどに下がって落ち着くのが、すべてISG付きの新型Cクラスでは、回転計の針(といってもこれもデジタル画像)がためらいがちにそろりと持ち上がってそのまま安定する。緻密なモーター制御の効果てきめんである。
ディーゼルの場合ターボプレッシャーが十分ではない低回転域のピックアップを苦手とするのだが、そこを補うのが低回転から大トルクを発生するモーターである。軽く踏んだだけでスイッと身軽に動き出す反応の鋭さにディーゼルターボとの相性のよさを実感できる。
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一番落ち着きのある乗り心地
以前に「C200セダン アバンギャルド」(AMGライン&リアアクスルステアリング付き)をリポートした際に、乗り心地が今ひとつふに落ちないとして、スタンダードサスペンションとリアアクスルステアリング非装着車を試すまではちょっと断言できないと書いた。その後「C220dセダン」(AMGラインなし)にも試乗したものの、それも何だか上下動が気になって落ち着きがなく、どれが新型Cクラス本来の乗り心地なのかかえって迷うようなものだった。実際に乗るクルマごとに印象が違うのである。
すべてのグレードをいまだに試すことができない現状では歯切れが悪くなるが、このディーゼルワゴン+AMGライン仕様が今のところ一番バランスがとれているように思う。最初に試乗した上記のC200セダンは後輪操舵のおかげでターンインは鋭く小回りも利くが、それが備わらないこのワゴンでも最小回転半径は5.2mと日本のFWDコンパクトカーと大差ないぐらい優秀だし、ステアリングレスポンスが鈍いということも無論ない。
日本仕様の標準タイヤサイズは17インチだが、AMGライン装着車では前後異サイズの18インチタイヤに格上げされ、スポーツサスペンション仕様となるというが、こちらのほうが標準仕様よりも全体的にフラットでフリクション感が気にならなかった。ガンガン長距離を走る人には当然220dのAMGラインを薦めたいところだが、スタンダードの足まわりもあれが実力とはちょっと納得できない思いも残る。頼りにならない、と言われればまったくそのとおりだが、メルセデスは過去にもこういう状況があった。そのうえこのご時勢である。焦らずじっくり構えるのが吉、が私の本音である。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1820×1455mm
ホイールベース:2865mm
車重:1850kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/3600rpm
エンジン最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/1800-2800rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:208N・m(21.2kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:18.2km/リッター(WLTCモード)
価格:705万円/テスト車=819万7000円
オプション装備:メタリックペイント<オパリスホワイト>(21万1000円)/ベーシックパッケージ(15万4000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(22万3000円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(23万3000円)/AMGライン(32万6000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:855km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:431.7km
使用燃料:29.2リッター(軽油)
参考燃費:14.8km/リッター(満タン法)/15.4km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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