第322回:日産は自動運転に本気です!
「IDSコンセプト」に見る次世代モビリティー
2015.11.01
エディターから一言
拡大 |
2015年10月28日、日産自動車は第44回東京モーターショーの会場で、自動運転技術を盛り込んだ電気自動車(EV)「IDSコンセプト」を発表した。その技術的な特徴や開発の課題など、日産の取り組みをリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
2020年には街で乗れる
IDSコンセプトは「ニッサン・インテリジェント・ドライビング」という、日産が目指す自動運転のコンセプトから生まれた。
2013年8月、日産のカルロス・ゴーン社長兼CEOは「2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載する」と宣言した。
その後「2015年度中に商用車を含めたほぼ全てのカテゴリーでエマージェンシーブレーキを採用する」と明言し、2015年10月29日には「高速道路から一般道までの自動運転が可能な実験車両での公道テストを開始した」と発表。自動運転に向けたさまざまな取り組みが行われている。
自動運転の実用化には、技術的な面もさることながら、法律上解決すべき問題も残されているが、日本政府も2020年の自動運転実用化を目指し、特区制度を活用した実証実験などを積極的にバックアップし始めたようだ。
事がうまく運べば、東京オリンピックまでに自動運転のタクシーが東京都内を走ることになるのだろう。まさしく近未来である。
そんな中で今回発表されたIDSコンセプトには、日産は自動運転をどうあるべきだと考えているのか、自動運転技術をどのように進化させていきたいのか、そのメッセージが込められているように感じた。
乗り方にあわせてトランスフォーム!?
「運転は、しなくて済むのならしたくない」という考え方の人は、たぶん世の中に多いのだろうが、それでも「運転するのが好き好き派(以下、運好派)」も一定数いるはずだ。きっと、『webCG』にアクセスして、今この記事を読んでくださっているあなたもこの一派だろう。わが同士よ!
果たして自動運転が実用化すると、われわれ運好派は異教徒のように迫害され、自由を奪われてしまうのだろうか。
「いや、そうではない」と日産は考えてくれているようだ。
IDSコンセプトは、AI(人工知能)を使った自動運転で走行するPDモード(パイロットドライブ)と、自分で運転を楽しめるMDモード(マニュアルドライブ)を備えている。そして、このモードを切り替えると、インテリアまでそれに応じて切り替わるのだ。
PDモードの場合、普通のクルマではステアリングホイールが置かれている部分に、タブレット端末のようなインターフェイスがあり、これを操作して目的地を設定し、あとは自動で運んでもらう。4つあるシートも、乗員同士が会話しやすいように内向きに配置され、くつろいだスタイルで移動できる。
MDモードにすると、室内はトランスフォーム。タブレット端末は変身ロボのように姿を変えて、ステアリングホイールとなる。フロアにはスロットルとブレーキペダルが生えだし、シートも真っすぐ前を向く。
もちろんMDモードの際にも各種の安全装備は仕事を続け、ドライバーを補佐してくれる。
運好派にとっては、例えば都内から箱根の麓まではPDモードで仕事に集中しながら移動し、1時間だけMDモードでワインディングロードを楽しんで、帰りはまたPDモードで仕事……などという使い方ができるのだ。何とすてきなのでしょう。
想像していたら今すぐ欲しくなってきた。
「意思の疎通」が大きな課題
こんな風に、自動運転というとバラ色な未来的に捉えてしまいがちだが、自動運転が実用化されて困ることは、全くないのだろうか?
例えば、プログラムのバグによって、前を走る上司が乗ったクルマをあおってしまったり、あるいはシステムがハッキングされて、歯医者や税務署など、筆者が行きたくないようなところに連れて行かれたり……などなど、最悪の状況も想像してしまうのだが、問題点はもっと身近なところにあるらしい。
それは、「歩行者との意思疎通」だというのだ。
街の中で歩行者や自転車は、ドライバーのしぐさや表情を見て横断歩道を渡るなどの判断をしていることが多いと、専門家は話す。確かに、私も歩いている時はドライバーとアイコンタクトをとって、自分を認識しているかどうか判断している。
ところが自動運転では、そもそも運転者不在なので、このクルマがこちらに気づいているかどうかを知るすべがないのだ。
なるほど、それは困る。
そこでIDSコンセプトには、ボディーを囲むように、光るラインを設けた。車両が歩行者や自転車を認識すると、「あなたを見てますよ」と示すように、相手がいる方向のラインが白く光る。そして「おさきにどうぞ」とライン全体を青く発光させるのだ。
ただ、この合図は、その意味が社会に浸透しなければ用をなさない。なので、IDSコンセプトはフロントガラス下に電光掲示板で「おさきにどうぞ」という文字を表示し、青い光の意味を補完する。
この文字、正直「ちょっとカッコ悪いな」と思ったが、わかりやすさというのも大切だ。
自動運転が社会に溶け込むまでのプロセスを考えているという点で、IDSコンセプトは新しい提案をしているように思う。
テレビCMで矢沢永吉が「やっちゃえ」なんて言っているが、日産はかなり本気で自動運転をやっちゃおうとしているに違いない。
IDSコンセプトからはそんな本気さが見えてくる。
(文=工藤考浩/写真=工藤考浩、日産自動車、webCG)

工藤 考浩
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























