BMW X1 xDrive20i xライン(4WD/8AT)
失ったものはなにもない 2015.11.28 試乗記 これまでのFR系プラットフォームに別れを告げ、新たにエンジン横置きのFF系プラットフォームを採用した新型「BMW X1」。その走りの実力と、大幅に進化を遂げたというパッケージングを確かめた。シャシーもパワートレインも一新
うたい文句はSUVならぬ「SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)」。日本でも人気の高いBMW X1がおよそ6年ぶりにモデルチェンジした。
BMWのモデルチェンジだから、外観は旧型のイメージを引き継ぐが、それでも新型は一見して顔(フロントマスク)が前よりも濃くなり、サイドパネルのプレスラインは深く、シャープになった。Xシリーズの末席にお邪魔します、みたいだった控えめな先代より存在感が増したと思う。
旧型比で全長は-30mm、全幅は+20mm、全高は+35mmと、ボディーサイズに大きな変更はないが、中身のほうは土台から一新されている。FRからFFプラットフォームに変わったのである。横置きされるエンジンも、新世代の直噴モジュラーユニットに変わった。
発売第1弾は2リッター4気筒ターボの「20i」と「25i」。この両モデルにはオンデマンド四駆の「xDrive」が備わる。少し遅れてくる「18i」は前輪駆動だ。こんな立派な押し出しのSUV、じゃなくってSAVが1.5リッターの3気筒で動くという、なかなか楽しみなモデルである。
今回、試乗したのは20iの中位グレード、「xライン」(492万円)だ。
より軽く、より力強く
走り始めると、先代よりちょっと大きなクルマになったなと感じたのが新型の第一印象だ。着座位置が4cm近く高くなり、アイポイントがかさ上げされたことが効いているかもしれない。
エンジンは192psを発生する2リッター4気筒ターボ。8段ATを含めて、「2シリーズ」のFFプラットフォーム系「220iアクティブツアラー」や「グランツアラー」用と同じものである。
1年半ほど前に旧型X1のxDrive20i xラインに試乗していたので、それとの比較でいうと、エンジンは184psからわずかにパワーアップしているし、車重は30kg軽くなっている。ひとまわり大きくなった感じを与えながら、走りはさらに軽快さを増している。最初のひと踏みでグワッとせり出す力強さは、フォルクスワーゲンの直噴4気筒ターボ+DSGに似ている。
回転フィールはすばらしく滑らかだ。低いギアでトップエンドまで回したときのスムーズさは、2リッターよりもっと小さいエンジンをイメージさせる。音も静かだが、ただし、ゼロ発進から普通に加速すると、1速の2000rpm台あたりでカタカタカタという打刻音のようなものが聞こえる。高圧の燃料ポンプの音だろうか。べつにイヤな音ではないが、特徴的な音である。
フロントの重さを感じさせない
ぼくの経験によると、平日の首都圏で見かけるX1は女性ドライバーの比率が高い。そういうクルマが、こんなところをこんなふうに走りゃしないよなあと思いつつ、いつものワインディングロードをハイペースで駆け抜けると、新型はこれまで以上にかろやかなフットワークを見せた。
車検証の前後軸重から計算すると、試乗車の前後重量配分は56対44である。それに対して、FRプラットフォームだった旧型xDrive20i xラインは50.8対49.2だった。前輪荷重でいえば、新型は旧型より70kg増えている。それだけフロントが重くなっているにもかかわらず、操縦感覚が変わらないばかりか、むしろ以前より軽快に感じさせるとは、立派というか、不思議ですらある。
BMWの FRレイアウトは、前後重量配分が50対50。だから、余人をもって代え難い「駆けぬける歓び」があるのだ、とBMW自身もアピールしてきたはずなのに、話が違うじゃないか! という話だが、こういう理不尽さならもちろん歓迎である。
偏差値の高いクルマ
FFプラットフォームになって、一番の現世御利益はリアシートに座るとわかる。フロア中央部に依然としてセンタートンネルはあるが、大きなカマボコのような旧型とは違って、出っ張りが角断面になり、嵩(かさ)も小さくなった。
旧型はシートが低すぎて、座ると閉所感を覚えたが、新型の後席は座面が6cm以上あがり、グンと見晴らしがよくなった。
テールゲートは電動式。後席の背もたれは、荷室のスイッチでパタパタパタと3分割に倒れてフラットな荷室をつくる。ほぼ500万円のクルマだけあって、さすがに至れり尽くせりだと思ったら、これらは「デビューパッケージ」というオプション(37万4000円)の一部だった。あいかわらずBMWはしっかりしている。デビュー祝いならサービスしなさいよと思ってしまったが、実際、難癖をつけるとすれば、それくらいしか見当たらない、非常に偏差値の高いクルマである。
なんとなく心情的にFRプラットフォームの先代に肩入れしたかったが、実際乗って、使ってみると、さすが6年ぶりのニューモデルというほかない。FFプラットフォーム化が周到に練られた戦略であることを実感させた。
約450kmを走って、燃費は10.8km/リッターだった。車重1660kgの4WDとしてはワルくない。以前乗った旧型xDrive20i xラインの実走燃費より2割近くよかった。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
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テスト車のデータ
BMW X1 xDrive20i xライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4455×1820×1610mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250-4600rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95W/(後)225/50R18 95W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:492万円/テスト車=573万1000円
オプション装備: BMWコネクテッドドライブ・プレミアム(6万1000円)/デビューパッケージ<コンフォートパッケージ+ハイラインパッケージ+Yスポークスタイリング511 アロイホイール+BMW Individualアンソラジット・ルーフライニング>(37万4000円)/アドバンスド・アクティブセーフティーパッケージ(15万5000円)/電動フロントシート(12万8000円)/メタリックペイント(9万3000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:304km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:446.5km
使用燃料:41.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.8km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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