スズキ・エスクード(4WD/6AT)
オフロードと決別せよ 2015.12.15 試乗記 受け継いだのは外観デザインと車名だけ? 本格クロカンだった従来モデルからすべてが一新された4代目「スズキ・エスクード」の、欧州で鍛えられた自慢のオンロード性能を試す。“併売”に見るスズキの本音
4代目となった新型エスクードは、その立ち位置を理解するのがちょっと難しいクルマだ。なぜなら、「エスクード」という名前を受け継いでいるから。
ベースとなるのは「SX4 Sクロス」。すなわちFFベースの電子制御式オンデマンド4WDを採用したSUVであり、その点が併売される3代目(モノコック+ラダーフレームのビルトインラダーフレームを持つライトクロカン4WD)とは異なる部分。つまり、エスクードは現行モデルにして“ガチ系ヨンク”とは完全に別れを告げたことになる。それでもガチ系、すなわち3代目も売り続けているあたりに、スズキの迷いというか、世間の動向を様子見しているしたたかさのようなものが感じられる。
世の中的にはクロカンよりもSUV。泥や岩を乗り越えずとも、雪道やちょっとした段差を安全に走れればいい。ただ、スズキにはこれまでエスクードや「ジムニー」で培ってきたクロカン四駆の歴史があり、それによって育まれたユーザーの土壌が今どれくらい残っているのかは見定めたい。そんなところが本音なのではないのだろうか。
懐かしくて爽やかな直4エンジンと6段AT
搭載されるエンジンはやはりSX4 Sクロスと同じ1.6リッター4気筒。直噴でもターボでもないエンジンは最高出力が117ps/6000rpm、最大トルクが15.4kgm/4400rpmと、時流には完璧に乗り遅れた“やや高回転型”で、代わりに燃料はレギュラーガソリンを使用する。ちなみに、欧州では1.4リッター直噴ターボが発売秒読み段階にあるとのこと。税制を考えれば、日本にもこれを入れればいいのに……と思わざるを得ない。
トランスミッションはSX4 SクロスのCVTに対してトルコン式の6段AT。横着しているとマニュアルモードに入ってしまうストレートゲートはせっかちな人にとっては億劫(おっくう)だろうが、トルコン自体の制御は至ってまとも。ステアリングにはシフトパドルも備わるからその節度感をリニアに味わうことができる。
そしてこのふたつが組み合わさって走ると、最近すっかり消えうせた“回る感じ”が味わえる。しかもエンジンが強烈な高回転型ではないから、それが全然煩わしくない。もうこうなると自分が現行エスクードを好きになっていることがわかる。そのどことなく懐かしい走りに、瓶ラムネのような爽やかさを感じるのである。またそのJC08モード燃費はFF車で18.2km/リッターと、ガソリンエンジン車としては、いい線をいっている。
確かに感じられるモノコックシャシーの恩恵
シャシーもまた、悪くない。いや、むしろかなりいい。
欧州が全てではないが、走ることに重きを置いた地域で育てられたそのフットワークはもっちり&シッカリしていて、なおかつ軽快感がある。これぞモノコックシャシーの恩恵であり、それによってアシが素直に伸び縮みする。欧州フォードやフィアットのようにロールをうまく制御するコシの強さ、フォルクスワーゲンのような堅牢(けんろう)さを感じさせながらも、最終的にはスズキとしての軽やかさが残る。
重心が高い分、SX4 Sクロスほどの“座り”は出せず、コーナリング時における初期のロールスピードの速さに戸惑う部分もあるが、これは試乗車が走行距離1000kmに満たない新車だったせいもあるだろう。「コンチネンタル・コンチエココンタクト5」の剛性にダンパーやブッシュが追従せず、お互いに反発してしまう感じがあるのだが、スポーツモードに入れれば、より積極的に後輪を駆動させるよう4WDの制御が変わってスタビリティーが増し(ついでにアクセルワークに対するエンジン回転の追従性も上がる)ちょっと運転しやすくなる。その効果は、時に「あれ、パワステのアシスト量も変わってる?」と感じてしまうほど。総じて筆者にはスポーツモードありきの方が運転しやすかった。
声高にオフロード性能を語らずとも
問題があるとすれば、間違いなくインテリアだ。
Sマークを取ってしまえば「マイチェンした『レンジローバー イヴォーク』です」と言ってもちょっと怒られるだけで済みそうなルックスをしているのに(要するに、いい意味で日本車っぽくない)、内装は驚くほどに質感が低い。ブラック&シルバーで温かみのまったくない配色に、カッチカチのプラスチック製インパネやインナードアパネルを与えたら、オーナーが悲しくなるとは思わないのだろうか? ハンガリーじゃダイジョブなのか? メーター中央にあるデジタルパネルが、いまどきカラーじゃなくてブルーがかったモノトーンであることに疑問は感じないのだろうか? まるで昭和だ。
もしこのまま売るなら、車両本体価格は200万円を切るべきだ! と力説したいところだが、そこにミリ波レーダー式の安全装備やESP(車両安定補助システム)、EBD(電子制御式制動力分配システム)、ヒルディセントコントロールといった装備がキッチリ盛られているのだから……ギャップが激しすぎる。
シートは実直な作りで座り心地がよく、適度なホールド性とともに快適な長距離ドライブを可能としている。ここにお金を掛け過ぎてしまったのだろうか?
現行エスクードを端的に表現すれば、もう完璧に「クロカン風のシティー四駆」である。どうやらスズキはそれを認めていないらしいが、SX4 Sクロスとのすみ分けは、そのゴツいルックスと高いアイポイントで十分だろう。
こうした重心が高いクルマを作るにあたって、旋回性と操安性を高める四輪制御はあってしかるべき現代水準の装備。オンロードでの確かな恩恵があり、その上で雪道も走れ、万が一の時のためにロックモードを備える、というスタンスでよいと思うのだ。
そう堂々と言ってしまっていいほど、オンロードでのエスクードの走りはしっかりとしている。このクルマはきっと、乗れば乗るほどかわいくなる。本当に問題なのは“クロカンかどうか”ではなく、あのインテリアを許していることだ。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
スズキ・エスクード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4175×1775×1610mm
ホイールベース:2500mm
車重:1210kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6AT
最高出力:117ps(86kW)/6000rpm
最大トルク:15.4kgm(151Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:17.4km/リッター(JC08モード)
価格:234万3600円/テスト車=256万9536円
オプション装備:ボディーカラー<アトランティスターコイズパールメタリックブラック2トーンルーフ>(4万3200円)/スタンダードメモリーナビセット<パナソニック>(14万4018円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万142円)/ETC車載器(1万8576円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:904km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:580.0km
使用燃料:46.2リッター
参考燃費:12.6km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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