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BMW X1 xDrive25i xライン(4WD/8AT)

セグメントきっての優等生 2016.01.15 試乗記 佐野 弘宗 FFベースのプラットフォームを採用した2代目「BMW X1」の実力を、上級グレード「xDrive25i」の試乗を通してチェックした。

絶妙な存在だった従来モデル

「2」を名乗るハイトワゴン/ミニバンの「アクティブツアラー/グランツアラー」に続いて、コンパクトSUVの新型X1も、エンジンの横置き化と前輪駆動化が実施された。となると、次の「1シリーズ」もFF!? と考えるのが自然だが、それはまだ分からない。1シリーズだけは次期モデルも後輪駆動を守る……という説も一部にはある。

それはともかく、先代X1はCセグメントベースのクロスオーバー/SUVとしては世界的にも希少な縦置きエンジンの後輪駆動レイアウトであることが、大きな売りだった。同等クラスだと「スズキ・エスクード2.4」も縦置きエンジン車だが、即座に思いつくのはそれくらい。BMWが属する高級ブランド系ではX1だけといってよかった。

先代X1独自の売りはほかにもあった。例えば車体サイズ。正確にいうと際立つ低さだった。先代の全高は1.55m前後と、普通のステーションワゴンに毛が生えた程度の背丈しかなく、日本特有の立体駐車場にも対応していた。乗り味はほとんどワゴンなみの低重心感だったが、ワゴンよりはちょっとだけ見晴らしがよく、着座姿勢もより健康的、そして室内も少し広かった。
しかも、先代X1は基本骨格がほぼ「3シリーズ ツーリング」なのに安かった。デビュー当初のスタート価格はなんと353万円! 同じエンジンを積む「3シリーズ」よりも100万円近くも低いプライスタグで登場した。

つまり、先代X1は日本で使うにも、また“手頃な入門BMW”という意味でも、じつに“絶妙”なクルマだった。

BMWのSUVとしては最もコンパクトなボディーサイズの「X1」。2代目は2015年6月に本国で発表され、同年10月に日本に導入された。
BMWのSUVとしては最もコンパクトなボディーサイズの「X1」。2代目は2015年6月に本国で発表され、同年10月に日本に導入された。 拡大
「X1 xDrive25i xライン」のインストゥルメントパネルまわり。内装色は標準モデル、xライン、「Mスポーツ」ともに、ブラックのみの設定となっている。
「X1 xDrive25i xライン」のインストゥルメントパネルまわり。内装色は標準モデル、xライン、「Mスポーツ」ともに、ブラックのみの設定となっている。 拡大
オプションで用意されるパーフォレーテッド・ダコタレザーのシート。「xライン」には、写真のオイスターのほか、ブラック、モカの全3色のシートカラーが用意されている。
オプションで用意されるパーフォレーテッド・ダコタレザーのシート。「xライン」には、写真のオイスターのほか、ブラック、モカの全3色のシートカラーが用意されている。 拡大
リアシートは4:2:4の3分割可倒式。6:4の左右独立スライドおよびリクライニング調整機構が、「xDrive25i」には標準装備、その他のグレードにオプション設定される。
リアシートは4:2:4の3分割可倒式。6:4の左右独立スライドおよびリクライニング調整機構が、「xDrive25i」には標準装備、その他のグレードにオプション設定される。 拡大
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ハイライトは“商品力”の強化

まあ、コンパクトSUVというクラスそのものがカジュアルで使いやすい絶妙感を売りにするが、先代よりわずかに全長が短く、そして背が高くなった新型X1はまさにクラスのド真ん中というべきディメンションになった。価格は競合車比で安くはなくなったが、もっとも安い3気筒のFF車なら400万円を切る。

このように新型X1でも絶妙“感”は健在だが、オタク目線で見ると、「フツーになっちゃったなあ」と、しんみりしてしまうのも正直なところではある。新型X1はフツーになったかわりに、そのフツーの商品力がメチャクチャ高くなったのが、最大のポイントである。

先代は内装の安っぽさが決定的な弱点だったが、新型は小さなボタンひとつ、エアコンのルーバー1枚まで精緻な樹脂成形がなされているところに、先代にはなかったBMWの伝統がうかがえる。高級感と質感は現時点でクラストップと断じられてしかるべきと思う。
さらに室内空間もハッキリと広い。ミニバンにまで使われるプラットフォームだけに、床の低さは印象的なほど。そこに先代より高いルーフを組み合わせて、乗員を健康的なアップライト姿勢で座らせている。先代より全長やホイールベースを短くしてもなお、後席空間やトランク容量が大幅拡大。そしてドイツ御三家でも、新型X1は現時点でもっともルーミーなクルマとなった。

X1が横置きエンジンとなった背景には、当然のごとく、MINIも含めた開発資産の効率化もあろう。ただ、新旧X1をならべて「ほら、どっちが使いやすいですか?」だの「同じ値段ならどっちが良いクルマですか?」と問われれば、10人中9人は新型を選ぶだろう。
まあ、それこそが新型X1最大のねらいどころだ。BMWはマニア気質の企業であるが、マニア専業ビジネスをしているわけではない。

新型「X1」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4455×1820×1610mmと、従来モデルと比べて全長が短くなった一方、全幅と全高は拡大している。
新型「X1」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4455×1820×1610mmと、従来モデルと比べて全長が短くなった一方、全幅と全高は拡大している。 拡大
センターコンソールは助手席側に仕切りを設けた“ドライバーオリエンテッド”な意匠が特徴。ほかのBMW車と同じく、8段ATのシフトセレクターや走行モードの切り替え機構、ダイヤル式のインフォテインメントシステムのコントローラーなどが備わる。
センターコンソールは助手席側に仕切りを設けた“ドライバーオリエンテッド”な意匠が特徴。ほかのBMW車と同じく、8段ATのシフトセレクターや走行モードの切り替え機構、ダイヤル式のインフォテインメントシステムのコントローラーなどが備わる。 拡大
オーディオや空調の操作パネルなどが設けられたセンタークラスターまわり。「xライン」にはウッドとブラック塗装の、2種類の装飾パネルが用意される。
オーディオや空調の操作パネルなどが設けられたセンタークラスターまわり。「xライン」にはウッドとブラック塗装の、2種類の装飾パネルが用意される。 拡大
後席を起こした状態でのラゲッジルームの容量は、従来モデルより85リッター大きい505リッター。12Vの電源ソケットや収納ネットなどが標準装備される。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)
後席を起こした状態でのラゲッジルームの容量は、従来モデルより85リッター大きい505リッター。12Vの電源ソケットや収納ネットなどが標準装備される。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます) 拡大

昨今のBMW製SUVに共通する乗り味

今回試乗したのは新型X1のラインナップで最高性能となる「xDrive 25i」。2リッターターボの高過給圧版で、最大トルクは自然吸気の3.5リッターなみ。そんな25iの駆動方式は「xDrive」……つまり、後輪にオンデマンドカップリングを追加した4WDのみ。ちなみに、ドイツ本国でもFFなのは末っ子の「18i」(とディーゼルの「18d」)だけで、その他は(日本未導入のディーゼルモデルである「20d」や「25d」も含めて)全車4WDである。

新型X1のxDriveも最新鋭のオンデマンド4WDらしく、アクセルの踏み具合やステアリング角度などを含む多数のパラメーターから、先回りして積極的にエンジントルクを後輪に吸い出すタイプだ。これほどの大トルクでありながら、どう踏んでもフロントが暴れる兆候すら見せない。といってFR的な挙動というわけではなく、あくまでドシッと安定した走りだ。

こうして前輪の負担をうまく減じているためか、ステアリングフィールは良好。先行したツアラー系よりは滑らかな感じ。パワステは軽いほうではないが、先代X1のそれが(男性の私でもドッコイショと声が出るくらいの)確信犯的な激重セッティングだったこともあって、トータルの乗り味も、先代より圧倒的に気安い。

ステアリングの利きもツアラー系やMINIに通じる強力なものだが、セダンばりに路面にひっついてみせた先代とは少しちがって、ロールは小さくない。ロール剛性を上げすぎず、限界一歩手前で「やりすぎかな……」と自覚させる背高グルマらしさは、意図的に残されたものだろう。これは最新の「X3」や「X5」にも共通する、昨今のBMW製SUVの味つけだ。個人的には必要以上にスポーツカーみたいに走る背高グルマよりは好ましいと思う。

日本仕様のエンジンは1.5リッター直3ガソリンターボと、出力の異なる2種類の2リッター直4ガソリンターボの全3種類。「xDrive25i」には、最高出力231ps、最大トルク35.7kgmの2リッター直4ガソリンターボが搭載される。
日本仕様のエンジンは1.5リッター直3ガソリンターボと、出力の異なる2種類の2リッター直4ガソリンターボの全3種類。「xDrive25i」には、最高出力231ps、最大トルク35.7kgmの2リッター直4ガソリンターボが搭載される。 拡大
2リッター直4ターボエンジン搭載モデルの駆動システムには、「xDrive」と呼ばれるオンデマンド4WDが採用される。
2リッター直4ターボエンジン搭載モデルの駆動システムには、「xDrive」と呼ばれるオンデマンド4WDが採用される。 拡大
新型「X1」では、全グレードで走行モード切り替え機構が標準装備となる。
新型「X1」では、全グレードで走行モード切り替え機構が標準装備となる。 拡大
ボディーカラーは全10色。テスト車には有償色であるメタリックペイントの「ミネラルホワイト」が用いられていた。
ボディーカラーは全10色。テスト車には有償色であるメタリックペイントの「ミネラルホワイト」が用いられていた。 拡大

“いいクルマ”になった

今後の熟成を期待したい点をあえて指摘するなら、乗り心地だ。まあ、アクティブツアラーのデビュー当初よりはこなれた感はあるものの、この価格帯の高級車、しかもグレードが穏健系の「xライン」であることを考えると、あと一歩の滑らかさがほしい。
試乗車がオプションの19インチタイヤだったことは考慮すべきとしても、今どきのこのクラスなら、路面のアタリももう少し滑らかに履きこなしてくれてもいい。

そうした重箱のスミはあるにしても、それはグレードやオプション選びで、ある程度は好みに合わせることが可能。繰り返すが、基本的な商品力は高い。質感、居住性、使い勝手、BMW風味のステアリング、思わずほしくなる安楽便利装備……と、チェックリストで採点すると、確実にトップの点数をたたき出す優等生でもある。BMWなのに(笑)。

私自身はオタク体質なので、あの絶妙にエンスーで、いかにもBMWだった先代X1への郷愁もある。ただ、ドイツ御三家のバトルは激しさを増すいっぽうで、このセグメントはそれ以外のライバルも膨大。この巨大市場できっちりメシを食えることが、会社全体の安定に直結する。X1をフツーにいいクルマにすることは、BMWの経営にとって、ゆずれない一線だったのだろう。

前出のスズキ・エスクード2.4も、最終的にはフェードアウトする可能性が高い。そうなれば、洋の東西、価格の高低を問わずに、このクラスは全車FFベースで横ならびとなる。
そんななかで、このクラスで今もっともトンがっているのは……と考えたら、たぶん「メルセデス・ベンツGLA」だ。新型X1は機械式の立駐からはみ出したが、かわりにGLAが立駐におさまる。そしてGLAは走りはクラス屈指の俊敏ゴリゴリ系。メルセデスなのに(笑)。攻守逆転?

(文=佐野弘宗/写真=田村 弥)

JC08モード計測における「xDrive25i」の燃費は、14.3km/リッターとなっている。
JC08モード計測における「xDrive25i」の燃費は、14.3km/リッターとなっている。 拡大
標準仕様のタイヤサイズは、標準モデルが225/55R17、「xライン」と「Mスポーツ」が225/50R18。テスト車にはオプションで用意される225/45R19サイズのタイヤが装着されていた。
標準仕様のタイヤサイズは、標準モデルが225/55R17、「xライン」と「Mスポーツ」が225/50R18。テスト車にはオプションで用意される225/45R19サイズのタイヤが装着されていた。 拡大
ヘッドランプはLED式。フロントバンパーにはフォグランプが標準装備される。
ヘッドランプはLED式。フロントバンパーにはフォグランプが標準装備される。 拡大
 
BMW X1 xDrive25i xライン(4WD/8AT)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

BMW X1 xDrive25i xライン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4455×1820×1610mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231ps(170kW)/5000rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-4500rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W/(後)225/45R19 92W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:14.3km/リッター(JC08モード)
価格:569万円/テスト車=619万8000円
オプション装備: BMWコネクテッドドライブ・プレミアム(6万1000円)/デビューパッケージ<ハイラインパッケージ+Yスポークスタイリング511 アロイホイール+BMW Individualアンソラジット・ルーフライニング>(25万9000円)/BMWヘッドアップディスプレイ(9万5000円)/メタリックペイント(9万3000円)

テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2614km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
 

BMW X1 xDrive25i xライン
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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