第1回:事故の発生率が約6割も減少
アイサイト搭載車は最高ランク JNCAP予防安全性能評価の成果とこれから
クルマとともに進化する“安全”の指標
2016.02.25
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スバルが独自開発した運転支援システム「アイサイト」。このシステムを搭載するすべてのモデルが、予防安全性能アセスメントで最高ランクの評価「ASV+」を獲得し、話題を集めている。予防安全装備の性能をはかるこの評価制度では、どのような試験が行われているのか。自動車事故対策機構(NASVA)の担当者に話を聞いた。
2014年からJNCAPに追加されたテスト項目
スタイリング、エンジンパワー、乗り心地、ブランドなど、クルマ選びの判断基準となる要素はいろいろある。最近そこに新たな項目が加わった。自動ブレーキに代表される予防安全性能だ。ユーザーの関心は高く、ディーラーでは自動ブレーキが装備されているかという質問が増えていると聞く。
どのメーカーも安全性を強調するが、ユーザーがそれぞれの優劣を比較するのは不可能だ。店頭で実車を見ても性能の詳細はわからないし、試乗してみたところで試すわけにはいかない。だから、第三者機関がテストする必要がある。日本では国土交通省と独立行政法人の自動車事故対策機構(NASVA)が評価を行い、結果を公表している。試験の内容や基準について、NASVA自動車アセスメント部長の大森隆弘氏に話をうかがった。
「NASVAは自動車事故対策の専門機関で、事故被害者の支援、事故防止のための安全指導、安全情報を提供するアセスメントという3つの業務があります。療護施設の運営も行っていて、事故被害者を支えるのは重要な役割ですね。ただ、究極的には被害者をゼロにするのが理想ですから、安全性能を評価する意義は大きいんです。JNCAPと呼ばれる自動車アセスメントは、1995年に始まっています。衝突試験を行い、乗員保護性能評価や歩行者保護性能評価を実施してきました。2014年からは、それに加えて予防安全性能評価を行っています」
スバルのアイサイトが知られるようになり、3、4年前から急速に自動ブレーキに対する関心が高まっていった。国産車、輸入車を問わず多くのメーカーが予防安全の装備に力を入れるようになり、JNCAPにも新たなテスト項目が追加されることになったわけだ。
「被害軽減ブレーキの試験では、試験車を20km/hから60km/hまで5km/h刻みのスピードで模擬車両に接近させ、ブレーキの作動状況を確認。模擬車両が静止している場合と20km/hで走行している場合の2つのケースで行い、32点満点で評価します」
■「スバル・フォレスター」の被害軽減ブレーキ試験の様子
→スバルの安全技術を紹介する「New SUBARU SAFETY」はこちら。
第2回:事故の発生率が約6割も減少 「スバル・フォレスター」でアイサイトの実力を試す
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急速な技術の進歩によって“満点”が続出
模擬車両にぶつかってしまっても、速度の低減率によって一定の得点が与えられる。事故被害を減らすことになれば効果があったと判定されるのだ。リアルワールドの事故ではさまざまな不確定要素が想定されるが、試験で高得点を出せば実際の事故防止にも効果があると考えられる。
「カメラ、ミリ波レーダー、レーザーレーダーなどの検知装置がありますが、どれを使っても差が出ないように配慮した設定にしてあります。排ガスの試験とは違い、メーカーが基準クリアのために対策することは難しいですね。予防安全の試験は実際のシチュエーションに準じた形で行われますから、単純に検知できるかどうかなんです」
特別な状況だけで働く装置ではないので、パターンを決めてそこだけ性能を上げるようなことはできない。また、被害軽減ブレーキ以外の試験結果も評価には反映される。
「車線はみ出し警報には8点が与えられます。60km/h以上の速度で走行し、白線からはみ出した際に警報を発する状況を確認します。事故被害軽減に貢献する割合を算定して、1点が同じ価値になるように配点しています。後方視界情報の試験もあり、こちらは6点満点です。総合点で2点以上を獲得すると先進安全車(ASV)に、12点以上であれば先進安全車プラス(ASV+)に認定されます」
わずか2点で先進安全車に認定されるというのは、あまりにも基準が甘いように思われる。実際の試験結果を見てもすべての車種がASV認定されており、最近試験したクルマは軒並み最高ランクのASV+を獲得している。これではハードルが低すぎて、差がよくわからない。
「確かに、現在ではどのクルマも高い点数を取るようになって、満点も続出しています。ただ、2014年は普通車の平均点は16点でした。それが、昨年(2015年)になると30点になっています。自動車メーカーの技術開発が急激に進んだんですね。当初の目的は先進安全装置を備えたクルマの開発を促進することでした。だから、まずは先進安全車を出してもらおうという考え方からハードルを低めに設定したわけです。それでも被害軽減ブレーキで32点を取るのは大変だと思っていたんですが、自動車メーカーがいい形で競争した結果、多くのクルマがクリアしてしまいました」
技術革新に合わせて進化する評価の方法
差がつかなくなったことは、予防安全性能評価がもたらした成果なのだ。ただ、このままではユーザーが安全性を比較するツールとしては不十分だ。例えばスバルは以前から高得点をあげていて評価車種すべてが最高ランクのASV+を獲得しているが、現在の評価基準だとアドバンテージが見えにくい。
実際、スバルのアイサイト搭載車については、
「来年度から、試験内容が大きく変わる予定です。国土交通省の検討会で方針が話し合われることになっていて、その結果を受けて実施方法を決めることになります」
予防安全性能評価は一斉にテストしているわけではなく、随時順番に行われている。来年度は新しい基準が決まった時点で新方式の試験が行われることになるようだ。
「衝突安全性能も含め、JNCAPはユーロNCAPなどと連携してほぼ同一の試験方法を採用しています。ただ、日本のアセスメントは日本の事故実態を反映した内容となっていますから、ほかの国のものとは少し違いもありますね。ヨーロッパはハイスピードを重視したテストを行っています。日本でももう少し高い速度での評価を行うようになるかもしれません」
予防安全技術は急速に進歩しているので、新たな試験項目が加えられていくはずだ。斜め後方の車両を感知するブラインドスポットモニターなどにも得点が与えられるようになるかもしれない。来年度からの変更で最も大きいのは、対人被害軽減ブレーキ試験の導入だ。
「高度なシステムでは、車両だけでなく歩行者も感知する機能が組み込まれるようになりました。事故防止に効果が大きいと考えられますので、試験項目に入れていくことになるでしょう。判定結果も現在の2段階からもっと細かくすることを考えています。5段階の星で示している衝突安全のように、差がよくわかるような方法が望ましいですね」
技術の進歩に合わせて適切な試験方法と判定基準が定められれば、予防安全性能はこれまで以上にクルマ選びの重要なファクターになるだろう。点数は販売成績に結びつくことになる。
「メーカーも事故を減らすために真剣に努力しています。NASVAはそれを公平に評価し、ユーザーとの橋渡しの役割を担っていきたいと考えています」
NASVAのウェブサイトでは、車種ごとに予防安全性能評価の動画を見ることができる。技術の優劣がビジュアルで示されるので、数字以上にわかりやすい。自動車購入を考えているなら必見だ。
(文=鈴木真人/写真=自動車事故対策機構、富士重工業、webCG/動画=自動車事故対策機構)
→スバルの安全技術を紹介する「New SUBARU SAFETY」はこちら。
→自動車事故対策機構(NASVA)オフィシャルサイト
第2回:事故の発生率が約6割も減少 「スバル・フォレスター」でアイサイトの実力を試す
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。