第23回:元リーフタクシー運転手、最新型「リーフ」に仰天する(その1)
スゲーッ!!(都心ドライブ編)
2016.03.16
矢貫 隆の現場が俺を呼んでいる!?
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電気自動車「日産リーフ」(初期型)の電費の悪さに泣いたエッセイ、『リーフタクシーの営業日誌』から2年4カ月。航続距離が格段に伸びたと評判の最新型を、ノンフィクションライターにして元リーフタクシー運転手の矢貫 隆が試した。その実力やいかに?
元リーフタクシー運転手
「これ、いいかもしれない」
「たぶん、これ、すごいかも」
日産自動車グローバル本社(横浜市西区)の駐車場をでてすぐには首都高に乗らず、みなとみらいのあたりを少しだけ走り、すると予想とまるで違うものだから、あれッ!? と思い、もう少し走って、おやッ!? と、8割方は驚きの疑問符が脳裏をかすめ、10分も走った頃には冒頭のごとき確信に近い印象を抱くようになっていた。
何の話かって?
もちろん、最新型リーフの「電費」のことだ。
さかのぼること2年と2カ月ほど前、私はリーフタクシーの運転手だったわけで、電費騒動に満ちたその物語は『リーフタクシーの営業日誌』を読んでもらうとして、とにかく初期型の電費の悪さときたら、それはもう、タクシー用としては絶望的だった。
特に冬場がひどい。
2月の寒い朝、充電満タン状態のリーフのスイッチをONにすると走行可能距離が150kmと表示される。寒いからヒーターを入れる。すると、外気温にもよるけれど、さっきまでの150kmは一気に80kmくらいに落ちてしまう。しかも、実際に走りだすと80kmは話半分と見なければならず、真冬は40kmほど走ったら急速充電に向かわないといけなかった。
それが、私が営業車として走らせていたリーフタクシー。
永ちゃんが「やっちゃえ日産」と画面のなかから語りかけてくる。
でも、あの電費じゃあ、ね、とテレビに向かって返しながら、しかし、あれからバッテリーの性能が格段に上ったとのうわさの真偽のほどを知りたくなって、ならばリーフタクシーが難儀した真冬に試乗させていただきたいと考えた。ヒーターを使用する真冬こそ、リーフの電費を試す絶好の時期なのだ。
という経緯で最新型リーフのハンドルを握った元リーフタクシーの運転手は、走りだしたら、すぐにバッテリー残量を示すマークがひとつ減るに決まってると過去の体験から決めつけていた。
ところが、なのである。
減らない。
えッ!? 減らないの?
意外な展開をすぐに察知した元リーフタクシー運転手は、走りだして10分で、初期型と最新型の段違いのバッテリー性能を感じていた。そして、その好意的なファーストインプレッションは、かつてリーフタクシーで営業した地域を8時間ほど走った後も変わることはなかった。いや、違うな。ずいぶん変わった。最初の印象から「かもしれない」と「たぶん」と「かも」が取れたのだから。

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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