トヨタ86“GRMN”(FR/6MT)
モータースポーツの血が通う 2016.04.08 試乗記 リソースは“ニュル”の優勝マシン。モータースポーツで得た知見をもとに、GAZOO Racingが開発したコンプリートカー「トヨタ86“GRMN”」。100台限定、お値段648万円で販売された特別な86の実力を、ひのき舞台であるサーキットで試した。コーナー3つで全然違う
ブランドの認知度で先行する日産のNISMOに対し、トヨタは昨2015年、レーシング部門をGAZOO Racingに統一し、レクサスも含めたすべてのレース活動をここに集約した。NISMOはモータースポーツから得た知見、経験をフィードバックした独自のコンプリートカー製作に乗り出しているが、2007年に活動を始めたGAZOO Racingも、その2年後の2009年には初のコンプリートカー「iQ GRMN」をリリースしている。日本を代表するトヨタと日産は、ともに高性能なコンプリートチューニングカーを開発するセクションを持っているのだ。そして、このGAZOO Racingがとびっきりのロードカーとして誕生させたのが86“GRMN”である。
ロードカーといっても、その性格はむしろサーキット走行のためのモデルと評した方がよく、GAZOO Racingの本質を見事に体現した、モータースポーツのファンを「見る」から「参加する」へ誘う一台ともいえる。生産台数は100台。価格は648万円と、ノーマル86から見れば倍以上のプライスだが、それでもなお格安と言わしめるほどに凝ったマシンである。残念ながらネットでの予約注文はすでに受付終了となっている。
ちなみに、開発上のベースとなっているのは2012年、2014年とニュルブルクリンク24時間レースで2度のクラス優勝を果たした「GAZOO Racing 86 Nurレースカー」。レースで得たノウハウを投入、といううたい文句はよく目にするが、86“GRMN”ではベース車そのものズバリがレースで活躍した車両というのだから、ユーザーにとってもわかりやすい。実際、ノーマルの86からは軽量化、空力性能アップ、駆動系と足まわりのチューニング、内装のドレスアップと、考えうるすべての部分がレーシーなものへと変更されている。
試乗の地となった袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、深い感銘を受けることになった。まず、1コーナーからフルスロットルで3速へシフトアップ。この時、エンジンの驚くほど軽い吹け上がりとスムーズな回転フィールに驚かされた。次いで軽い右の高速コーナーではステアフィールの正確さに驚かされ、そして下りの右コーナー進入ではそのブレーキ性能の高さに驚かされ、86の衣を着ながらも、それが全くの別物であることを思い知ったというわけである。
ボディーはベースモデル比で1.8倍の剛性を達成しているということで、すべての動きがシャキッと確実で、その挙動には常に高い安定性が感じられる。なにより、極めて高い制動性能を安定して発揮するブレーキに、レーシングカーという出自を感じさせる。エンジンは最高出力が219ps、最大トルクが22.1kgmと、それぞれ19ps、1.2kgmのアップとなっているが、徹底したフリクションの低減やレスポンスの向上などで、それよりもはるかに高い動力性能を得ているように感じられる。コーナリング時のバランスのよさも印象的で、これにはアイシンが作り上げたMCB(モーション・コントロール・ビーム)という減衰機能付きのパフォーマンスロッドも寄与しているようだ。
ピットを出て、3つ目のコーナーに進入するまでにこれだけのことを実感した。サーキットを走行して楽しいと思える市販モデルに出会ったのは久々である。
(文=中村孝仁/写真=高橋信宏)
【スペック】
全長×全幅×全高=4290×1775×1300mm/ホイールベース=2570mm/車重=1230kg/駆動方式=FR/エンジン=2リッター水平4 DOHC 16バルブ(219ps/7300rpm、22.1kgm/5200rpm)/トランスミッション=6MT/燃費=--/価格=648万円
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中村 孝仁
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