メルセデス・ベンツC180クーペ スポーツ+(FR/7AT)
メルセデスの矜持
2016.04.27
試乗記
セダン、ステーションワゴンに続いて、現行型「メルセデス・ベンツCクラス」の2ドアクーペが日本上陸。上級グレード「C180クーペ スポーツ+」に試乗し、その出来栄えを確かめた。
すっきりきれいなスタイリング
『webCG』を訪れるクルマ好きの皆さんのことだから、きっともう新しい「メルセデス・ベンツEクラス」の姿を確認済みのことと思うが、新世代の「C/E/Sクラス」は似ている。ほぼ相似形だ。遠目に見た際にどのモデルかということよりも、まずメルセデスであることを認知させたいのだろう。メルセデス・ベンツのみならず、アウディもBMWもそう。ジャーマンプレミアムは昔からその傾向があったが、近ごろはそれを強く感じる。
理由はひとつじゃないのだろうが、ひとつには“小さいのが廉価版で、大きいのが豪華版です”という売り方から“どれも等しくメルセデスですので、あとは必要に応じてサイズを決めてください”という売り方をする時代へ移行したのではないか。ユーザーの「どうだっ!」という気持ちのダウンサイジングなのかもしれない。
新しく登場した「Cクラス クーペ」も、同じようにサイズを除けば「Sクラス クーペ」と似ている。ということは、まだ見ぬ次期「Eクラス クーペ」もこんな感じになるのだろう。画像ではなく実車を初めて見ての第一印象は、きれいだなということ。ノッチバックとファストバックの中間的なスタイリングで、「Cクラス セダン」のリアドアを取り除いて上から少し押さえて低くしたようにも見える。すっきりしていて無駄な要素が感じられない。
運転がジェントルになる
試乗したのはC180クーペ スポーツ+。1.6リッター直4ターボエンジンと7段ATを縦置きし、後輪を駆動する。最高出力156ps/5300rpm、最大トルク25.5kgm/1200-4000rpmというパワースペックは、排気量の小ささを考えれば健闘しているが、メルセデス・ベンツのクーペということを考えると控えめだ。
もう少しパワーがあったらな! と感じた場面がなかったわけではないが、それも最初のうちだけ。うまく必要十分なところを突いていると思う。JC08モード燃費は14.9km/リッターと、同じパワートレインを搭載する「C180セダン アバンギャルド」の同17.3km/リッターよりも悪い。
高速道路に乗って加速から巡航へと移行したらこのクルマの真価発揮タイム到来。路面の段差や不整部分をやんわり丸めてからドライバーに伝える上品さは他の追随を許さない。ステアフィールも滑らか。そうしたクルマ側の動的質感の高さにドライバーも自然と応えようとするのか、運転もジェントルになる。だからさらに乗り心地が向上するという好循環に突入する。見た目のためにフロントが225/40R19、リアが255/35R19という大径タイヤが装着されているにもかかわらず、この当たりの柔らかさは不思議なほどだ。
プレミアムの本質がわかっている
クーペといえどもメルセデス・ベンツのオーナー年齢層は高い。ある程度ロー&ワイドなスタイリングが求められるかもしれないが、乗降性、居住性が悪化したのでは受け入れられない。その点、新しいCクラス クーペは抜かりない。リアシートへのアクセスを含め乗降性はセダンとほぼ変わらず。着座位置はいくらか低いものの、決してやり過ぎていない。
リアシートバックを倒すと、天地方向の高さは限られるものの、左右、奥行きともに想像より広かったので驚いた。400リッター。リアシートバックは分割可倒式なのだが、その割合が最も一般的な6:4の2分割ではなく、最近増えてきた4:2:4の3分割。正確には真ん中が2もなくて、4.5:1:4.5の3分割という感じ。乗車定員4名で、セダンよりリアシートの左右幅がなく、センターアームレストがないためにそういう分け方になるのだろうが、そこまでして3分割にする仕事の細かさはさすが。2分割だったら細長い長尺物1本のためにでも左右どちらかのシートバックを倒すしかなく、そうすると3人しか乗車できないが、たとえ真ん中が小さくても3分割だったら、細長い長尺物1本を載せたうえで4人乗車できる。プレミアムの本質はレザーでもウッドでもなく、こういうきめ細かい仕事だと思わせる。
自動運転技術に一日の長
最新のメルセデスだけあって衝突予防系の安全装備は最先端をいく。レーダーセーフティーパッケージで中心的役割を担うディストロニック・プラスが進化していて感心した。レーダーで認識した先行車との間に一定の車間距離を保ってくれる従来の機能に加え、多目的のステレオカメラと各種レーダーの併用によって、車線と先行車の両方を認識し、ステアリング操作をアシストしてくれる。これが実にスムーズなのだ。
白線と先行車の両方を検知し補完するので、ところどころ白線が途切れている田舎道でも追従が途切れないし、逆に先行車がいなくなっても白線に沿って追従が続く。路上駐車を避けてまた車線に戻った前方車両にスムーズについていった時には、むしろ僕がこのクルマについていきたいと思ったほどだ。
お察しの通り、機能的には先行車を自動追従できるだけのシステムが備わっているものの、法規上、ドライバーがステアリングホイールに手を添えていないとステアリングアシスト機能がキャンセルされる仕掛けになっている。とはいえ、アクセルとブレーキに加え、ステアリングも制御することで、メルセデス自ら「部分自動運転を実現」とうたっている。こうやって慎重にちょっとずつ自動運転時代が近づいてきている。
同じような性能をカタログでうたうものの、なかには挙動がスムーズじゃないために安心感を得られないブランドもある。あくまで私見だが――いやそんなこと言ったら原稿全体が私見なのだが――この手の運転アシスト技術については早くから段階的に実用化してきたメーカーに一日の長を感じる。
(文=塩見 智/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC180クーペ スポーツ+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4705×1810×1405mm
ホイールベース:2840mm
車重:1610kg
駆動方式:FR
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7AT
最高出力:156ps(115kW)/5300rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y/(後)255/35R19 96Y(ピレリPゼロ<ランフラット>)
燃費:14.9km/リッター(JC08モード)
価格:585万円/テスト車=629万円
オプション装備:レザーエクスクルーシブパッケージ<本革シート+エアバランスパッケージ(空気清浄機能、パフュームアトマイザー付き)+パノラミックスライディングルーフ(挟み込み防止機能付き)>(35万円)/メタリックペイント<ブリリアントブルー>(9万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:822km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:180.5km
使用燃料:17.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

塩見 智
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。





























