トヨタ・カムリ ハイブリッド“Gパッケージ”(FF/CVT)【試乗記】
いままでにないトヨタ 2011.10.12 試乗記 トヨタ・カムリ ハイブリッド“Gパッケージ”(FF/CVT)……350万750円
ミドル級セダン「トヨタ・カムリ」の8代目がデビュー。新たなハイブリッドシステムを手に入れた、新型の走りや乗り心地をリポートする。
前のとは全然違う
今度の「カムリ」は全車ハイブリッドである。2002年から9年連続の全米ベストセラーカー。世界9カ所の工場で年間90万台もつくられる大物トヨタ車なのに、セダンダメダメの日本だと、モデル末期の最近などは平均月販100台にも届かない。それならばと、ハイブリッドの“印籠”標準装備としたのが8代目カムリの国内戦略である。
北米向けカムリには2006年からすでに2.4リッターのハイブリッドモデルがあったが、新型では160psの2.5リッター4気筒(無鉛レギュラー仕様)を新調した。旧型の拡大版ではなく、アトキンソンサイクルやクールEGR(排ガス再循環)システムを採用したバランスシャフト付きの新開発エンジンである。一方、日本だと「SAI(サイ)」や「レクサスHS250h」に使われている105kW(143ps)のモーターやニッケル水素電池などの電気系はキャリーオーバーである。
カムリはアメリカで月に3万台以上売れるクルマだが、ハイブリッドは1000〜1500台と人気がなかった。向こうでも「ハイブリッドといえばプリウス」と思われているのが大きな理由だが、市場調査をすると、「もっとパワーを」と「もっと低燃費を」という声が高かった。要はハイブリッドに対する期待値に対して、出来が中途半端だったのだ。
旧型のカムリのハイブリッドには乗ったことがないが、SAIやHS250hは経験している。その2台がとりあえず比較の基準かなと思いつつ試乗に臨んだのだが、驚いた。まったく別物だった。個人的には2011サプライズ大賞をあげたいクルマである。
「ビーエムの直6」みたい
最初の“ひと加速”でまず驚いたのは、速いことである。今やハイブリッドはちっとも遅いクルマではないが、このカムリは控えめに言っても「第一印象、俊足セダン」である。エンジニアに聞いたら、0-100km/h=7.8秒というから当然だ。メルセデスの「Sクラス ハイブリッド」並みではないか。「クラウンハイブリッド」より速いと思ったのだが、さすがにあれは3.5リッターV6の余裕で、6.2秒だそうだ(ホンマかいな)。
でも、カムリの驚きは、速さだけではない。パワーユニットがすごく気持ちいいのである。トヨタのハイブリッド車の加速感は、一概に「フワーッ」としている。“伸びる”けれど、レスポンスはよくない。腹話術のいっこく堂じゃないけど、「加速が、遅れて、出るよ」みたいなキャラは、独特の動力分割機構を使うトヨタ方式の特徴というか、宿命みたいなものかと思っていたら、そうではなかった。こんなにレスポンスのいい、ダイレクトなハイブリッドもつくれるのだ。
右足の操作に対して、まったくディレイなしに回転が上下する。隔靴掻痒(そうよう)感ゼロの自然なアクセルペダルを踏み込めば、豊かで上質なトルクがわき上がる。滑らかさと力強さは、まるでBMWの直6みたいである。そう、「大きな4気筒」にありがちな大味な回転フィールを持たないのもこのエンジンのいいところだ。80km/hあたりからの追い越し加速なんか本当に心地いいし、速い。2.4リッターの旧型に対して、低速トルクを2割も増やせたのが新エンジンの大きなアドバンテージだという。トヨタSAIの“眠たい加速感”を思い出すと、その説明には納得がいった。
伝統的で、新しい
もうひとつ、“カムリハイブリッド”で好印象だったのは、電動パワーステアリングの操舵(そうだ)感である。操舵力は最近のドイツ車よりむしろ重めで、そのためか、ちょっと前の「メルセデスCクラス」みたいな上等な操舵フィールを感じた。トヨタ車のベスト・ステアリングではないかと思った。
お台場のMEGA WEBを基地にした試乗会だったので、ハンドリングをウンヌンするような走り方はできなかった。足まわりは乗り心地重視のコンフォート志向で、とくにスポーツセダンのような味つけはされていない。
燃費も満タン法では測れなかったが、車載コンピューターの平均燃費は16km/リッター台を示していた。10・15モード燃費値はSAIやHS250hの23.0km/リッターを上回る26.5km/リッター。といってもプリウスの最高38.0km/リッターには遠くおよばないから、“燃費いのち”で選ぶハイブリッドではない。とはいえ、そっち派の人も「304万円から」の価格は気になるだろう。
日本初登場のカムリハイブリッドは、ハイブリッドカーというよりも、まず「いいエンジンのクルマ」である。SAIやプリウスのようなEVっぽい新しさは希薄だが、ハイブリッドでも、こういうコンベンショナルな、フツーのクルマを待っていたという人は、トヨタ党のなかにはけっこう多いような気がする。しかもトヨタの中型セダンなのに、ハンドルを握っていて退屈じゃないのだ!
セダンだと、やはり30〜40代の世代が飛びつくとは思えない。カッコいいステーションワゴンをつくったらどうだろうか。
(文=下野康史/写真=高橋信宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
NEW
軽商用BEVの切り札「ダイハツe-アトレー」に試乗! 街の小さな働き者のBEVシフトを考える
2026.3.20デイリーコラム軽商用車界の大御所ダイハツから、いよいよ電気自動車(BEV)の「e-ハイゼット カーゴ/e-アトレー」が登場! スズキやトヨタにも供給される軽商用BEVの切り札は、どれほどの実力を秘めているのか? “働く軽”に慣れ親しんだ編集部員が、その可能性に触れた。 -
NEW
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)
2026.3.20JAIA輸入車試乗会2026アルファ・ロメオのエントリーモデルと位置づけられる、コンパクトSUV「ジュニア」。ステランティスには、主要メカニズムを共有する兄弟車がいくつも存在するが、このクルマならではの持ち味とは? 試乗したwebCGスタッフのリポート。 -
NEW
第288回:自称詩人は中古車で自由を表現する? 『自然は君に何を語るのか』
2026.3.20読んでますカー、観てますカー「月刊ホン・サンス」第5弾は『自然は君に何を語るのか』。恋人の両親に初めて会う自称詩人は、気まずい空気の中で次第に感情を抑制できなくなっていく。「キア・プライド」が小道具としていい味! -
NEW
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】
2026.3.20試乗記民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション編
2026.3.19webCG Moviesトヨタで「86」や「スープラ」といったスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんが、日本を代表するスポーツカーのひとつである「マツダ・ロードスター」に試乗し、クルマづくりについて語ります。 -
ホンダがまさかの巨額赤字に転落 米国生産車の日本導入への影響は?
2026.3.19デイリーコラム本田技研工業の「Honda 0サルーン」を含む、電気自動車3車種の開発・販売中止に関連する巨額赤字転落という衝撃的なトピックに埋もれてしまった感のある米国生産車2モデルの日本導入計画。その導入予定車両の特徴と、同計画の今後を分析する。






























