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【スペック】全長×全幅×全高=4825×1825×1470mm/ホイールベース=2775mm/車重=1550kg/駆動方式=FF/2.5リッター直4DOHC16バルブ(160ps/5700rpm、21.7kgm/4500rpm)+交流同期電動機(143ps、27.5kgm)/価格=317万円(テスト車=350万750円/ステアリングスイッチ+HDDナビゲーションシステム&音声ガイダンス付きカラーバックガイドモニター=33万750円))

トヨタ・カムリ ハイブリッド“Gパッケージ”(FF/CVT)【試乗記】

いままでにないトヨタ 2011.10.12 試乗記 下野 康史 トヨタ・カムリ ハイブリッド“Gパッケージ”(FF/CVT)
……350万750円

ミドル級セダン「トヨタ・カムリ」の8代目がデビュー。新たなハイブリッドシステムを手に入れた、新型の走りや乗り心地をリポートする。

前のとは全然違う

今度の「カムリ」は全車ハイブリッドである。2002年から9年連続の全米ベストセラーカー。世界9カ所の工場で年間90万台もつくられる大物トヨタ車なのに、セダンダメダメの日本だと、モデル末期の最近などは平均月販100台にも届かない。それならばと、ハイブリッドの“印籠”標準装備としたのが8代目カムリの国内戦略である。

北米向けカムリには2006年からすでに2.4リッターのハイブリッドモデルがあったが、新型では160psの2.5リッター4気筒(無鉛レギュラー仕様)を新調した。旧型の拡大版ではなく、アトキンソンサイクルやクールEGR(排ガス再循環)システムを採用したバランスシャフト付きの新開発エンジンである。一方、日本だと「SAI(サイ)」や「レクサスHS250h」に使われている105kW(143ps)のモーターやニッケル水素電池などの電気系はキャリーオーバーである。

カムリはアメリカで月に3万台以上売れるクルマだが、ハイブリッドは1000〜1500台と人気がなかった。向こうでも「ハイブリッドといえばプリウス」と思われているのが大きな理由だが、市場調査をすると、「もっとパワーを」と「もっと低燃費を」という声が高かった。要はハイブリッドに対する期待値に対して、出来が中途半端だったのだ。

旧型のカムリのハイブリッドには乗ったことがないが、SAIやHS250hは経験している。その2台がとりあえず比較の基準かなと思いつつ試乗に臨んだのだが、驚いた。まったく別物だった。個人的には2011サプライズ大賞をあげたいクルマである。

6年半ぶりに一新された「トヨタ・カムリ」。日本市場で扱われる新型は、ハイブリッドモデルのみとなった。
6年半ぶりに一新された「トヨタ・カムリ」。日本市場で扱われる新型は、ハイブリッドモデルのみとなった。 拡大
パワーユニットは、2.5リッターガソリンエンジン(160ps、21.7kgm)とモーター(143ps、27.5kgm)の組み合わせ。システム全体で最高出力205psを発生する。
パワーユニットは、2.5リッターガソリンエンジン(160ps、21.7kgm)とモーター(143ps、27.5kgm)の組み合わせ。システム全体で最高出力205psを発生する。 拡大
サイドビュー。前傾姿勢を強調したデザインで、力強さとクリーンさをアピールする。
サイドビュー。前傾姿勢を強調したデザインで、力強さとクリーンさをアピールする。 拡大
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「ビーエムの直6」みたい

最初の“ひと加速”でまず驚いたのは、速いことである。今やハイブリッドはちっとも遅いクルマではないが、このカムリは控えめに言っても「第一印象、俊足セダン」である。エンジニアに聞いたら、0-100km/h=7.8秒というから当然だ。メルセデスの「Sクラス ハイブリッド」並みではないか。「クラウンハイブリッド」より速いと思ったのだが、さすがにあれは3.5リッターV6の余裕で、6.2秒だそうだ(ホンマかいな)。

でも、カムリの驚きは、速さだけではない。パワーユニットがすごく気持ちいいのである。トヨタのハイブリッド車の加速感は、一概に「フワーッ」としている。“伸びる”けれど、レスポンスはよくない。腹話術のいっこく堂じゃないけど、「加速が、遅れて、出るよ」みたいなキャラは、独特の動力分割機構を使うトヨタ方式の特徴というか、宿命みたいなものかと思っていたら、そうではなかった。こんなにレスポンスのいい、ダイレクトなハイブリッドもつくれるのだ。

右足の操作に対して、まったくディレイなしに回転が上下する。隔靴掻痒(そうよう)感ゼロの自然なアクセルペダルを踏み込めば、豊かで上質なトルクがわき上がる。滑らかさと力強さは、まるでBMWの直6みたいである。そう、「大きな4気筒」にありがちな大味な回転フィールを持たないのもこのエンジンのいいところだ。80km/hあたりからの追い越し加速なんか本当に心地いいし、速い。2.4リッターの旧型に対して、低速トルクを2割も増やせたのが新エンジンの大きなアドバンテージだという。トヨタSAIの“眠たい加速感”を思い出すと、その説明には納得がいった。


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運転席まわりのデザインは先代から大きく変わるものではないが、インストゥルメントパネル表面にソフトな素材が用いられるなど、質感の向上が図られた。
運転席まわりのデザインは先代から大きく変わるものではないが、インストゥルメントパネル表面にソフトな素材が用いられるなど、質感の向上が図られた。 拡大
アナログ的な意匠が採用された計器類。写真左から、ハイブリッドシステムインジケーター、速度計、燃費計。
アナログ的な意匠が採用された計器類。写真左から、ハイブリッドシステムインジケーター、速度計、燃費計。 拡大
荷室容量は440リッターが確保される。右側のみに限られるものの、後席はハイブリッドカーにしては珍しい可倒式。長尺物の積載に対応する。
荷室容量は440リッターが確保される。右側のみに限られるものの、後席はハイブリッドカーにしては珍しい可倒式。長尺物の積載に対応する。 拡大

伝統的で、新しい

もうひとつ、“カムリハイブリッド”で好印象だったのは、電動パワーステアリングの操舵(そうだ)感である。操舵力は最近のドイツ車よりむしろ重めで、そのためか、ちょっと前の「メルセデスCクラス」みたいな上等な操舵フィールを感じた。トヨタ車のベスト・ステアリングではないかと思った。

お台場のMEGA WEBを基地にした試乗会だったので、ハンドリングをウンヌンするような走り方はできなかった。足まわりは乗り心地重視のコンフォート志向で、とくにスポーツセダンのような味つけはされていない。

燃費も満タン法では測れなかったが、車載コンピューターの平均燃費は16km/リッター台を示していた。10・15モード燃費値はSAIやHS250hの23.0km/リッターを上回る26.5km/リッター。といってもプリウスの最高38.0km/リッターには遠くおよばないから、“燃費いのち”で選ぶハイブリッドではない。とはいえ、そっち派の人も「304万円から」の価格は気になるだろう。

日本初登場のカムリハイブリッドは、ハイブリッドカーというよりも、まず「いいエンジンのクルマ」である。SAIやプリウスのようなEVっぽい新しさは希薄だが、ハイブリッドでも、こういうコンベンショナルな、フツーのクルマを待っていたという人は、トヨタ党のなかにはけっこう多いような気がする。しかもトヨタの中型セダンなのに、ハンドルを握っていて退屈じゃないのだ!
セダンだと、やはり30〜40代の世代が飛びつくとは思えない。カッコいいステーションワゴンをつくったらどうだろうか。

(文=下野康史/写真=高橋信宏)


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エコドライブの達成値はG-BOOKセンターにも送信され、エコドライブ・ランキングやドライブ履歴などの形で記録される。
エコドライブの達成値はG-BOOKセンターにも送信され、エコドライブ・ランキングやドライブ履歴などの形で記録される。 拡大
ニールームが先代比46mm拡大したリアシート。写真は、本革シートやHDDナビゲーションシステムなどが標準で与えられる上級グレード“レザーパッケージ”のもので、右側に見える穴はバッテリー冷却用の吸気口である。
ニールームが先代比46mm拡大したリアシート。写真は、本革シートやHDDナビゲーションシステムなどが標準で与えられる上級グレード“レザーパッケージ”のもので、右側に見える穴はバッテリー冷却用の吸気口である。 拡大
ワイド感と安定感を演出したというリアビュー。新型「カムリ」のボディーサイズは先代モデルとほぼ同じ。全幅がわずかに5mm広いだけである。
ワイド感と安定感を演出したというリアビュー。新型「カムリ」のボディーサイズは先代モデルとほぼ同じ。全幅がわずかに5mm広いだけである。 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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