第328回:二極化の真実
2026.02.02 カーマニア人間国宝への道ロシアの大富豪の名前ではありません
担当サクライ君から、高級ホテルのコンシェルジュのようなメールが届いた。
「今度、『アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ』の限定車、『エストレマ』をご用意できますが、いかがでしょう」
そうかね。じゃ、一台もらっておこうか。そんな返事をしたくなったが、高そうなので「乗る乗る~」とだけ書いて送った。
それにしてもエストレマとは何? スマホで検索したところ、「究極のパフォーマンスを実現するために、厳選された特別装備を多数搭載した限定車」のようだ。
なかでも注目は、アクラポビッチ製エキゾーストシステムらしい。聞いたことのない名前ゆえに、心をくすぐられる。それはつまり、フェラーリにおけるキダスペシャル(愛機「スッポン丸」のエキゾーストシステム)のような、マニア泣かせな存在だろうか?
当日夜。腹に響くステキなサウンドとともに、サクライ君がやってきた。
オレ:これがアブラモビッチマフラー付きのジュリアだね?
サクライ:えーと、アクラポビッチです。なんでも、バイクの世界では超有名らしいです。
オレ:へえー、そうなんだ!
ちなみにアブラモビッチというのはロシアの大富豪の名前で、イギリスの名門サッカーチームを買収したとかの件で、私の記憶に残っていただけである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
レースモードはさらに戦闘的なサウンド
オレ:ビッチって付くってことは、東欧のほうかな。
サクライ:(スマホで検索して)スロベニアのメーカーだそうです。
オレ:スロベニア! あ、オレ、行ったことあるよ!
サクライ:何しに行ったんですか。
オレ:マリオ(高野)とヨーロッパレンタカーの旅に出て、イタリアから近かったら行ってみたの。地味だけどとってもキレイな国だった。
サクライ:そうですか。
地味でキレイな国、スロベニアでつくられたマフラーが、アルファ・ロメオで最上級を名乗るジュリア クアドリフォリオ エストレマに採用された。思えば遠くに来たもんだ。あ、イタリアからは近いのか(というか隣)。とにかく発進だ。
アクラポビッチマフラーは、いきなりステキなサウンドを奏でつつ走りだした。「ほう。いいじゃないか。一台包んでくれたまえ」と言いたくなる。
そのまま首都高に乗り入れると、アクラポビッチはますます好調。代々木PAで小休止し「RACE」モードにブチ込むと(大変複雑な操作が必要なため、切り替えはサクライ君が実施)、さらに戦闘的なサウンドになった。
オレ:サウンドも素晴らしいけど、そもそもこのジュリア クアドリフォリオがすごくいいよね。
サクライ:メチャメチャいいと思います。
オレ:乗り心地がこんなにいいのに、相変わらずステアリングは強烈にクイックだし、エンジンはパワフルで気持ちいいし、すべてがオレ好みだよ!
サクライ:こんなにいいのに、なんで売れないんでしょう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パフォーマンス的にお買い得
オレ:そりゃお高いから。だってこれ、1500万円くらいするでしょ。フツーのクアドリフォリオだって、1400万円くらいするじゃない。
サクライ:フェラーリとかよりも、ぜんぜん安いじゃないですか。
オレ:そうだけど、アルファ・ロメオで1400万円はキツイんだと思うよ。首都高走るには速すぎるし。首都高なら「ルークス」とか「クロスビー」のほうが楽しいじゃない。
サクライ:ま、そうですけど。
オレ:これの本領を発揮させるには、マガリガワ(コーンズ様が建設したドライビングクラブ)に行かないと。マガリガワ、走ったことある?
サクライ:行ったこともないです。
オレ:マガリガワは素晴らしいよ。ホントに最高だよ。
サクライ:なにが最高なんですか。
オレ:コースもホスピタリティーもすべてだよ! あんなコース、たぶん世界中にないな。
サクライ:へぇー。
オレ:でも会員権が3600万円だったかな(現在は不明)。このクルマより、マガリガワの会員権のほうがぜんぜん高い。つまり、マガリガワの会員さまには安すぎるし、首都高走るには高すぎるんだよ!
ジュリア クアドリフォリオ エストレマは最高だった。でも結局、走る場所がない気がした。だから、パフォーマンス的にお買い得な割に、意外と買う人が少ないのだろう。
いや、エストレマは限定46台なので売り切れると思うけど、フェラーリやランボルギーニがバカバカ売れてるのに比較すると、フツーのクアドリフォリオは思ったほど売れない。マガリガワの会員権が買えない私には、クロスビーがちょうどいい。それが二極化の真実なのだ。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第340回:一にエンジン、二にカッコ 2026.7.20 清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは?
-
第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない 2026.7.6 清水草一の話題の連載。いつもの首都高で試乗した「BMW 120d Mスポーツ」の価格が540万円ってマジか! と思っていたら、本国ではなんと4万1750ユーロ(邦貨約770万円)⁉ 安かったころ、もっと小さかったころのBMWに思いをはせた。
-
第338回:古臭いほどイイに決まってる 2026.6.22 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジを受けた最新の「シボレー・コルベットZ06」を夜の首都高に連れ出した。アメリカを代表するミドシップスーパーカーのステアリングを握ったフェラーリオーナーの印象やいかに。
-
第337回:「ルーチェ」に比べればタダ同然 2026.6.8 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで3代目に進化した「日産リーフ」を夜の首都高に連れ出した。「非常に良くなった」「静かで快適」といった評判を耳にする量販・量産BEVのパイオニアに、カーマニアは何を感じた?
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
NEW
パワー炸裂! 世界のV8エンジン搭載モデル
2026.8.1日刊!名車列伝速さが自慢のスポーツモデルから高級サルーンまで。今月は、トルキーな出力特性や迫力のサウンドが魅力のV8エンジン車を特集。日替わりで紹介いたします。 -
NEW
いばらの道のフォルクスワーゲン再建計画 ――10万人のリストラと4工場閉鎖は本当か?――
2026.7.31デイリーコラム不振にあえぐフォルクスワーゲンが経営再建計画を発表。しかしその中身は、追加の人員削減や工場閉鎖に言及しない、外部から「生ぬるい」と指摘されるものだった。この内容で本当にドイツの巨人は再生するのか? 厳しさを増す市場環境から考察した。 -
NEW
ビモータKB998リミニ(6MT)【レビュー】
2026.7.31試乗記ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。 -
BYDシーライオン6(前編)
2026.7.30あの多田哲哉の自動車放談日本市場において、日に日に存在感を強めているBYD。そのクルマづくりについて、元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんは何を思う? プラグインハイブリッド車「シーライオン6」に試乗したうえで、語ってもらった。 -
1990年代の名車「プリメーラ」が復活? 日産のグローバル戦略の一翼を担うBEVの正体を探る
2026.7.30デイリーコラム日産が新型ピックアップトラック「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と新型BEV「プリメーラ」をフィリピンで発表した。いずれも中国を生産・輸出のハブとするグローバル戦略の一翼を担うモデルだ。果たして日本導入の可能性は? -
第972回:黒船来襲も! イタリア自動車販売店は戦国時代
2026.7.30マッキナ あらモーダ!イタリアで急速に進む、自動車販売店の統廃合と巨大グループの伸長。その背景にはどんな理由があり、私たちにどんな変化をもたらすのか? 現地在住の大矢アキオが、変わりゆく自動車販売のあり方を考察するとともに、消えゆく街かど自動車文化に思いをはせた。









































