ホンダ・シビック タイプR 純正アクセサリー装着車(FF/6MT)/ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車(4WD)
“実効”の思想 2026.01.26 試乗記 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。初公開の純正アクセサリー装着車を披露
大磯ロングビーチの駐車場にずらりと並べられたホンダ車は、いつも街で見かける姿とちょっと違っていた。ホンダアクセスと無限の手が入れられた特別なモデルである。ホンダが誇るカスタマイズの二大ブランドだ。湘南はAUTECH(オーテック)のお膝元として知られており、大磯では毎年NISMO(ニスモ)とともに「里帰りミーティング」なるイベントが開かれている。日産色の濃い場所なのだが、ホンダはアウェイの地に堂々と乗り込んだ。
ホンダアクセスと無限は基本的な価値観を共有しているものの、位置づけは異なっている。走りに特化したレース志向の無限に対し、ホンダアクセスは一般ユーザー向け純正アクセサリーの開発が主な役割だ。今回はホンダアクセスの純正アクセサリー装着車を紹介する。
ホンダアクセスよりも、「モデューロ」の名になじみがあるかもしれない。ホンダアクセスがホンダの子会社として企画した純正用品がモデューロというブランドで販売されている。1994年にアルミホイールのブランドとして誕生し、2013年からは純正コンプリートカーの「モデューロX」を手がけるようになった。ホンダアクセスはサスペンションやエアロパーツを開発するだけでなく、ドレスアップ、便利グッズ、カーナビやオーディオまで幅広い分野をカバーしている。愛犬用アクセサリーの「Honda Dog」シリーズにも力を入れていて、この日は肉球デザインのキーカバーやシフトノブが展示されていた。
披露された純正アクセサリー装着車は「CR-V」「WR-V」「ステップワゴン スパーダ」「フリード」「N-ONE e:」。アウトドア感を強調したりスポーティーなイメージをまとったりするなど意匠はさまざまだが、いずれも控えめなドレスアップである。バンパーワイドガーニッシュを装着したステップワゴン スパーダは今回が初披露の場となった。異彩を放っていたのは“ブルドッグ”こと「シティ ターボII」からインスパイアされたという開発中の純正アクセサリーをまとった「Super-ONE Prototype(スーパーONE プロトタイプ)」。こちらも同じく初公開モデルである。車両自体がまだ正式発表前ということもあり、ボンネットを開けることは禁じられていた。
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航空機のテクノロジーを応用
試乗プログラムで用意されていたのはシビック タイプR。「テールゲートスポイラー(カーボン)」の効果を試す乗り比べだ。まずは標準タイプのままで走りだす。公道で法定速度を守って体感してほしいとのことで、会場から一般道に出て西湘バイパスに入ってから戻るというコースを走ってみた。路面の悪いところもあったが、スポーティーモデルであることを考えれば乗り心地は上々である。車線変更ではハンドリングのシャープさを感じた。十分な性能で、特に不満を覚えることはない。
会場に戻ると、ホンダアクセス製のスポイラーに付け替える。トルクスレンチを使って、ものの2分ほどで交換が完了した。ユーザーが自分で作業できそうだが、ディーラーでの交換が推奨されている。外したところで2つのスポイラーを手に持たせてもらったら、はっきりとホンダアクセス製のほうが軽い。素材はレーシングカーにも使われるカーボンで、軽さと強度を併せ持っている。標準が2kgでホンダアクセス製は1kgだそうだ。2倍の差というのは大きい。
軽いことに加え、ホンダアクセスのテールゲートスポイラーは特殊な形状で性能を高めている。効率が高いとされるNACA4412翼型になっていて、裏側にギザギザが刻まれているのだ。シェブロン(鋸歯)形状の空力デバイスである。航空機にも使われているテクノロジーで、ダウンフォースを安定させる機能があるという。乱流の大きな流れを細かく砕いていくことで、空気が及ぼす影響を低減するわけだ。
ノーマルでも素性のよさを感じられたので、明確な差が感じられるのか心配になった。走り始めると何かが違うような気がしたが、うまく言語化できずに戸惑う。しばらくして気づいたのは、ステアリングの切り始めで反応がいいことである。なんというか、走りに爽快感や清涼感が加わったようなイメージとでも言えばいいだろうか。そして、明らかに静粛性は向上した。航空機ではジェットエンジンのまわりにシェブロンを付けて消音効果を狙っているのだ。
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ホイールはサスペンションの一部
今回試すことができたスピードレンジは最高でも70km/hで、ダウンフォースが効いてくるような速度域ではないと思っていた。大きなウイングはモータースポーツでこそ意味を持つという先入観である。ホンダアクセスが提唱しているのは、「実効空力」というコンセプトだ。日常の走行で効果が表れることを目指している。具体的には接地荷重を4輪に均等配分し、タイヤとサスペンションの性能を最大限に引き出すということだ。
翼端板の形状も最適化されており、旋回性と直進性をバランスさせて移行をスムーズにしているという。短い試乗では効果の片りんしかくみ取れなかったと思うが、オーナーになって日常的に運転していれば扱いやすさの恩恵を感じられるはずだ。後続車からはシェブロンがはっきりと見えるので、タダモノではない感を漂わせる。ただ、価格は税込み36万3000円で、気軽に購入できるとは言いにくい。
もう少しわかりやすいのが、ヴェゼルe:HEV RSの比較試乗だった。空力パーツではなく、アルミホイールである。ホンダアクセスにとってはルーツとなる製品であり、自信を持っているはずだ。2台のヴェゼルRSが用意され、標準装着のアルミホイールとホンダアクセス製の「MS-050」の違いをテストする。ヴェゼルRSはどちらもAWDで、装着されるタイヤは「ミシュラン・プライマシー4」。製造時期もそろえて条件を同一にしている。
ホンダアクセスでは、“ホイールはサスペンションの一部である”と規定している。剛性バランスを突き詰めてしならせる構造にすることで、タイヤの接地性を高めるという考え方だ。以前はサスペンションのチューニングが注目されていたが、最近では事情が変わってきたようだ。センシングシステムに影響を与えるので、車高を大幅に変えることは難しい。その代わりにホイールで走りや乗り心地を整えることが必要とされてきたのだ。
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段差舗装の通過時に差が際立つ
やはりノーマルのモデルから試乗する。ヴェゼルRSは標準仕様車から車高を45mm落とし、18インチホイールを採用してスポーティーな走りを追求した新グレードだ。パワートレインは従来モデルと同じだが、前後ダンパーの減衰力とパワーステアリングの制御に手が入れられている。もともと走りのいいSUVとして定評のあるヴェゼルのスポーティーグレードであり、ノーマルでも侮れない実力であることがわかった。
MS-050装着モデルに乗り換える。試乗会場の敷地にはクルマのスピードを抑制するためのバンプが設置されており、乗り越える際に大きな衝撃が加わる。ここではホイールによる入力の緩和はさすがに感じられない。差が際立ったのは、公道に出たところに施されていた速度抑制と注意喚起のための段差舗装である。細かい振動が伝わってくるが、明らかにショックが丸められて柔らかい感触だ。高速道路の目地段差でも、上質な乗り味が実感できた。
MS-050は税込みで1本5万1238円。テールゲートスポイラーよりは少しばかりコスパがいい。ヴェゼルRSはいいクルマだと思うが、ホイールやタイヤ、空力パーツでさらに性能をアップさせることができる。派手なドレスアップで飾り立てるより、ドライバーにとっての満足度は大きいはずだ。見た目でアピールするより、自分の気持ちよさを優先することにプライドを感じる。突出した速さを求めるチューニングとは異なる考えに基づくカスタマイズなのだ。ホンダアクセスが目指す理想は、運転好きにこそ理解されるのだろう。“実効”の思想は空力以外でも貫かれている。
この日の最も興味深いプログラムは、ホンダアクセスが手がけたエアロパーツが装着された「プレリュード」の乗り比べだった。2025年に登場した新型と、1997年の5代目モデルだ。その間には30年近い月日が流れている。長い時を隔てていながらも、実効空力についてこの2台には浅からざる因縁が秘められていた。詳しく説明したいのだが、紙数が尽きた。エアロダイナミクスに関連するアイテムの開発に関わるストーリーについては、稿をあらためることにする。
(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ホンダ・シビック タイプR 純正アクセサリー装着車
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1890×1405mm
ホイールベース:2735mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:330PS(243kW)/6500rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/2600-4000rpm
タイヤ:(前)265/30ZR19 93Y XL/(後)265/30ZR19 93Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:12.5km/リッター(WLTCモード)
価格:499万7300円/テスト車=578万1050円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション テールゲートスポイラー<カーボン>(36万3000円)/ドアミラーカバー<フレームレッド、左右セット>(1万5400円)/ライセンスフレーム<ベルリナブラックタイプ、フロント用+リア用>(9900円)/パドルライト<LEDホワイト照明<ドア開閉[Hondaスマートキーシステム連動、左右セット]>(2万2000円)/プロテクションフィルムセット<クリア、ドアエッジ部+ドアハンドル部、フロント・リア用セット>(7150円)/リアバンパープロテクションフィルム<クリア>(3850円)/ユーロホーン(8800円)/インテリアパネル・センターコンソールパネル部<カーボン、貼り付けタイプ、リアルカーボン×レッドポリエルテルあや織り>(7万1500円)/インテリアパネル・ドアパネル部<カーボン、貼り付けタイプ、リアルカーボン×レッドポリエルテルあや織り、フロント左右セット>(8万0300円)/シフトノブ<アルミ[ブラックアルマイト]製、本革[レッド]巻き>(2万0350円)/サイドステップガーニッシュ<フロント部LEDレッドイルミネーション[ドア開閉連動、「TYPE R」ロゴ付き]、アルミ[ブラックアルマイト]製、フロント・リア用左右4枚セット>(3万0800円)/パターンプロジェクター<LEDイルミネーション[ドア開閉連動、「TYPE R」ロゴ付き、フロントドア左右セット]>(3万8500円)/LEDテールゲートライト<テールゲート開閉連動、ON/OFFスイッチ付き>(1万1000円)/ワイヤレス充電器<取り付け位置:センターコンソール部、Qi規格、15W急速充電対応>(3万0800円)/フロアカーペットマット プレミアムタイプ<消臭・抗菌加工、ヒールパッド付き、アルミ[ブラックアルマイト]製エンブレム付き、フロント・リアセット>(7万0400円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1790×1545mm
ホイールベース:2610mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:131PS(96kW)/4000-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3500rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95V/(後)225/50R18 95V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:21.4km/リッター(WLTCモード)
価格:374万8800円/テスト車=405万0200円
オプション装備:ボディーカラー<スレートグレー・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット プレミアム(4万7300円)/18インチアルミホイールMS-050<切削、グリントブラック塗装[ホイール1本:5万1238円、アルミホイールセンターキャップセット:1万0648円](21万5600円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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