トヨタbZ4X Z(4WD)【試乗記】
本腰を入れたTOYOTA 2026.01.24 試乗記 トヨタの電気自動車(BEV)「bZ4X」の一部改良モデルが登場。「一部」はトヨタの表現だが、実際にはデザインをはじめ、駆動用の電池やモーターなども刷新した「全部改良」だ。最上級グレード「Z」(4WD)の仕上がりをリポートする。性能を向上させつつ値下げ
2026年の年明け早々、多くの経済メディアで、「トヨタが国内BEV販売で初の1位」と報じられた。ご想像のとおり、それは2025年10月9日発売の改良型bZ4Xのことだ。
新しいbZ4Xは、発売初月の10月から11月、12月の3カ月間、国内BEV最多の登録台数を記録している。具体的には、10月が1106台で、前年同月比13倍以上(!)の飛躍的な増加……と思ったら、11月は1580台で、同30倍以上(!!)、そして12月は台数こそ762台に落ちたが、前年同月比42倍以上(!!!)と、勢いはさらに加速した感がある。
近年の日本で一番売れているBEVといえば「日産サクラ」だが、同期間の登録台数は10月704台、11月594台、12月597台で、bZ4Xにゆずったのは報道のとおりだ。ただ、2025年の通年ではサクラは1万4000台以上(月間平均1200台)が販売されている。
新しいbZ4Xが人気の理由はいくつか考えられる。まずは価格だ。デザインが新しくなり、性能が向上したにもかかわらず、値下げされたのだ。値下げ戦略はDNAを共有する「スバル・ソルテラ」も同じだが、純粋な本体価格はbZ4Xのほうが少し安い。たとえば、上級のZグレードの新価格は、FWDで550万円、4WDで600万円。ともに改良前の50万円安だ。
さらに、エントリーモデルの「G」(FWDのみ)にいたっては、駆動用リチウムイオン電池の総電力量を減らすという大胆な選択もあって、改良前より70万円安い480万円というプライスタグを下げる。しかも、現在のbZ4XにはCEV補助金が130万円出るから、実質価格は単純計算で350万円。素直に安い。
加えて、経済メディアが注目しているのが、今回に合わせてはじまったトヨタの新充電サービス「TEEMO」である。詳細は後述するが、TEEMOは急速充電も可能ながら、月額基本料金ゼロ。しかも、bZ4X購入者は1年間、充電料金が無料という大盤振る舞いだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
PHEVからの乗り換え需要を見込む
関係者によると、トヨタは新しいbZ4Xでは新価格とTEEMOを武器に、たとえば「RAV4」の既納客に積極的なアプローチをかける営業戦略をとっているという。たしかにDセグメントSUVに属するbZ4XはRAV4と同車格といえるし、なによりプラグインハイブリッド車(PHEV)の「RAV4 PHV」(当時の車名)の発売が2020年6月だったから、発売初年度に購入したオーナーが、2度目の車検をひかえた買い替え時期に入っているからだ。
これは先日の「レクサスRZ」のメディア試乗会でうかがった話だが、BEVであるRZの購入客の多くは、レクサスのPHEVからの買い替えなのだそうだ。レクサス担当者は「PHEVで普段はほぼBEVで走っていると、まれにエンジンが始動するとすごく不快に感じるのだそうです」と語り、PHEVがBEVへの呼び水的な存在になっているのは間違いない。そこで、トヨタブランドでも、RAV4 PHVをフックにbZ4Xの拡販をねらうのだ。
現行RAV4 PHVは普通充電のみなので、オーナーの大半は自宅に充電設備をすでに整えているはずだし、自分にとって必要なBEV航続距離もきっちりと把握できていると思われる。そこに基本料金なしで、出先の充電器が気がねなく使えるTEEMOが組み合わされれば、それこそ鬼に金棒……なのか?
というわけで、今回試乗したのは、電池の減量で驚きの戦略価格をかかげるエントリーモデルのGではなく、上級グレードZの4WDである。そのリチウムイオン電池の総電力量は、Gとは逆にセル数を増やすことで71.4kWhから74.69kWhに増量。さらに、電費も向上させることで、一充電走行距離(WLTCモード)は今回の20インチホイール車で622km(18インチなら687km)と、従来の3割増しを実現した。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
新しいデザインのキモ
エクステリアデザイン以外の改良点は、ほぼ同時期にデビューしたソルテラと共通する部分も多い。とくにインテリアデザインはソルテラ同様に完全刷新されて、センターコンソールの一等地にスマホのワイヤレス充電器が2つならぶ光景が目を引く。ただ、ソルテラはステアリングホイールも新しい異形タイプとなったが、bZ4Xのそれは従来どおりである。
エクステリアもフロントフェイスはすべてやり直されているものの、ソルテラほどのイメチェンではない。ツヤのないクラッディングだったホイールアーチも、新たにグロスブラック塗装パネルになった。ここは従来型と好みがわかれる気もしないではないが、少なくとも高級感は増した。
回生の強さを変えられるステアリングパドルは、bZ4Xでは今回からの新機軸だ。ちなみに、スバル由来の「X-MODE」が備わるいっぽうで、ドライブモードでbZ4Xのみ「パワー」が省かれるなどの、ソルテラとの細かいつくり分けも健在である。
走りだして即座に気がつくのは静粛性だ。フロントとフロントサイドが二重ガラスの遮音タイプに変更されたのが、如実に奏功している。
従来のbZ4Xでは、アクセルペダルを踏んでから実際に加速するまでの“間”が先行メーカーより明らかに大きかったが、それがずいぶん改善されたのは、今回はeアクスルまで新開発したからかもしれない。減速からすぐ再加速するような、ギアのバックラッシュにより気を使うパターンでは、まだ他車よりも間が大きい(かわりにショックはほぼ皆無)が、それも以前ほど気にならない。
さらに、バネやダンパーの設定が見直されたことで、乗り心地のフラット感も増している。加えて、山道での走りがやけに楽しかったのは、新たにリジッドマウント化されたステアリングギアボックスや、4WD駆動配分が改良された効果かもしれない。
TEEMOという援護射撃
……とbZ4Xはクルマとしての進化も明らかだが、国内では圧倒的な販売力をもつはずのトヨタのBEVが、これまで一度も販売トップに立てていなかった理由はそこにはないだろう。発売直後のハブボルト問題に加えて、BEV最大のキモともいえる充電性能でも、海外BEVに大きく水をあけられていたからだ。
どことなく”再出発”を期した全面改良にも見えるbZ4Xは、もちろん充電性能でも大きく進化した。充電速度は、150kW充電器であれば電池残量表示10%から80%までの回復も最短28分といい、最新トレンドであるプレコンディショニングも組み込んだ。
そしてTEEMOである。TEEMO会員になると、基本料金ゼロで独自のTEEMO充電網が使えるようになるのに加えて、日本全国のCHAdeMO急速充電器1万3000口弱(2025年3月現在)の8割近いシェアを占めるeモビリティパワー(eMP)の急速充電カードももらえる。経験者ならおわかりのように、eMP充電器のビジター利用は、充電前の手続きがとても面倒だ。それが通常会員同様にカードをかざすだけ……とは素直にありがたい。
ただ、その場合のeMP急速充電料金(80円/分)はビジター料金ばりに割高だが、「いつもは自宅充電、急速充電器は遠出したときに使うだけ」なら、月額4180円(急速・普通併用プラン。充電料金は別)というeMP会費はハードルが高い。その点、TEEMO会員なら、充電料金は割高でも使い勝手はeMP会員と変わらず、自前のTEEMO急速充電器なら、50kW以下で40円/分、50kW超~150kW未満で60円/分とeMPより割安(ただし、150kW超は100円/分)。これがすべて基本料金ゼロで使えるなら素直に魅力的で、充電にまつわる心配事がかなりのレベルで解消されるだろう。
しかも、新しいbZ4XユーザーならTEEMO充電器の使用は1年間タダ。新しいbZ4Xの販売に、TEEMOが猛烈な援護射撃になっていることは想像にかたくない。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
トヨタbZ4X Z
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:2020kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
リアモーター最高出力:120PS(88kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.3kgf・m)
システム最高出力:342PS(252kW)
タイヤ:(前)235/50ZR20 104V XL/(後)235/50ZR20 104V XL(ダンロップSP060)
一充電走行距離:622km(WLTCモード)
交流電力量消費率:135Wh/km(WLTCモード)
価格:600万円/テスト車=661万4020円
オプション装備:ボディーカラー<アティチュードブラックマイカ×プレシャスメタル>(9万9000円)/235/50R20タイヤ&20×7 1/2Jアルミホイール<切削光輝+ブラック塗装/エアロホイールカバー/センターオーナメント付き>(8万8000円)/ソーラー充電システム(34万1000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後2カメラドライブレコーダー<TZ-DR210>(4万4220円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:684km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:388.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.3km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
NEW
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】
2026.10.21試乗記MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。 -
NEW
電動化時代も軸足は“スポーツ”に CEOに聞いた「アルピーヌブランドのこれから」
2026.10.21デイリーコラム富士6時間レースに合わせて来日したアルピーヌのフィリップ・クリーフCEOにインタビュー。レースカーから市販車にフィードバックされたポイントや、「A110」を含めた今後の商品展開などを聞いてみた。 -
NEW
第133回:軽EVのデザインを考える(後編) ―「ラッコ」も「eスカイ」も夢がない!? 軽EVが“普通のデザイン”になった理由―
2026.10.21カーデザイン曼荼羅「BYDラッコ」に「スズキeスカイ」と、新作が登場しては業界の話題をさらっている軽の電気自動車(EV)。しかし、そのデザインはどれも普通というか、エンジン車の延長線上にないか? 急速におとなしくなった軽EVの潮流を、カーデザインの識者と考えた。 -
ニュルブルクリンクでテストする一番の理由とは?
2026.10.20あの多田哲哉のクルマQ&A高性能車の宣伝において、しばしば「ニュル(ドイツのニュルブルクリンク北コース)で鍛えた」「ニュルで〇秒を記録した」という言葉が使われる。では、ニュルで車両を開発する最大のメリットとは? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いた。 -
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。























































