スバル・ソルテラET-HS(4WD)
劇的な進化の光と影 2026.01.27 試乗記 “マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。従来型のデザインを否定!?
「スバルBRZ」および「トヨタ86/GR86」に続き、スバルとトヨタの協業第2弾となったのが、基本デザインやランニングコンポーネンツを共有するスバル・ソルテラと「トヨタbZ4X」という、どちらのブランドにとっても初の量産型となるBEVプロジェクト。両車ともにパッと見は“コンパクトSUV”に属するモデルとも思えるたたずまいだが、実はボディーのサイズやホイールベースは、同じBEVである「日産アリア」のそれを上回り、日本国内のみならずグローバル市場を意識していることが明確だ。
2022年にローンチされた後、ソフトウエアのアップデートやADAS機能の向上などが図られてきたソルテラだが、2025年10月にはバッテリー/充電性能の向上などに加え、デザイン面にまで踏み込んだマイナーチェンジを実施。ここに取り上げるのは、その最新モデルということになる。
それにしても、「もしかするとコレってマイチェン前のデザインを否定している!?」とさえ思えるのが、驚くほど大きく雰囲気が変えられたその顔つきだ。冷却風取り入れ用の開口はロワーグリル部分に限定し、上部をスバル車のアイコンである“ヘキサゴン(六角形)グリル”状に見せていた従来の造形は、改良型では、ヘキサゴンの名残のようにも見えるごく小さな逆台形のへこみ形状が、照明の内蔵されたスバルの六連星オーナメントを取り囲むようにレイアウトされた、よりグリルレスに見えるデザインへと一新された。
さらに、やはりこれまでスバル車のアイコンのひとつと思えた“コ”の字型に光るデイタイムランニングランプも、上下2段の6点で光るパターンへと変更。同時に、ヘッドランプをそのユニット下方のバンパー内に別置きするスプリット式に変更したことも、顔つきが大きく変わったと感じられる要因になっている。
加えて、SUVらしさを強調する重要なアクセントだった大面積のホイールアーチクラッディングも、従来のマットブラックからグロスブラックへと変更。さらに、車体色によってはボディー同色にできるオプションまで用意したのは、強すぎるSUVらしさを嫌う層にもアプローチしたいという思いの表れか。
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スバルらしくない操作系
そんなこんなの見た目上の大規模なリファインは、インテリアでも続くことになる。
ドアを開くと、一見してまず大きく変わっているのがセンターコンソール部分のデザイン。ダッシュボード中央部のディスプレイから後端のアームレストへと高い位置で続いていた従来型の造形が、こちらは踏襲されたダイヤル式のシフトセレクター後方に位置するカップホルダー部分で大きく下がる造形へと変更された。結果として、フロント左右席がコンソールで分断される印象が、やや薄くなっている。
実利面では、スマホ用のワイヤレス充電器がコンソール前端の一等地に、充電状態も見やすい角度で2連装されたことをうれしく感じる人が多そうないっぽうで、温度や風量を調整するトグルスイッチが廃され、前者はダイヤル、後者はタッチ式スライダーに改められたことは、実際に触れてみると操作性が向上したとは思えなかった部分である。
実は、センターディスプレイそのものも12.3インチから14インチに大型化しているのだが、そのせいもあってかドライバー正面に置かれたハイマウント式の遠視点メーターが、相対的により小さく、やや貧相に見える印象が強まったようにも感じられてしまった。
デビュー当初に真円だったステアリングホイールは、2023年10月に行われたリファインで、メーターの読み取りやすさの改善を意識してか、上下方向をつぶしたオーバルデザインへと変更されたが、これは持ち替えなしで操作できる範囲では問題ないものの、それを超えると、真円形状だったら無用のはずの場面で持ち替えに迫られたりと、率直なところ、個人的には素直には賛成しかねるアイテムだ。スバルは視界や操作性にはひと際こだわりの強いメーカーだと理解しているが、ソルテラではなぜか、こうした「らしくなさ」が散見される。
大径ホイールのデメリット
かように見栄えが新しくなったソルテラの2タイプのうち、4WDのみの設定となる上級グレード「ET-HS」で穏やかに走り始める。と、従来型以上に上質になったように感じられたのは、まず明らかに静粛性が向上したからだ。元来「静かでスムーズ」なのはBEVゆえの特長だが、改良型ではフロントに遮音性を高めたドアガラスを新採用したことなどが功を奏しているようだ。いっぽうで、かくも“暗騒音”が控えられたこともあってか、路面によってはボコボコとした、音としては明確に聞こえないドラミング風のノイズが気になったりもした。
実はそうした点に影響を及ぼした可能性アリだったのが、テスト車が装備していた、標準の18インチより2サイズも大径となる20インチのオプションタイヤ&ホイールである。WLTCモードで65kmという、見過ごせない長さの航続距離の短縮をもたらし、どうやら、時に感じられた路面凹凸乗り越えの際の、ばね下の動きの重さにも影響していそう。となれば、SUVの重要な見どころである足もとのたくましさを高めるのに大きく貢献していることは認めながらも、自身で手にするとなったら、このオプションは間違いなく選ばないだろうな……と、そんなことを出発早々に意識させられることになった。
進化に環境が追いつかない
さらに高速道路へと乗り込んで、アクセルペダルを踏む足にちょっと力を込めると……いやはや、その見た目からは想像できないほどに強力な加速にびっくり! ソルテラってこんなに速かったっけ?
そんな思いを抱きながら今一度資料を確認すると、「バッテリー容量の拡大や制御の改良、バッテリープレコンディショニング機能の搭載」といったBEVとしての性能の根幹を高めるさまざまなメニューとともに、システム出力が160kW(218PS)から252kW(342PS)へと大幅に高められたことが記されている。
従来型との出力差、実に1.6倍近くとなれば、その加速力も比べ物にならないのは当然。実際、改良型の0-100km/h加速タイムは5.1秒と、一級のスポーツカーレベルで、はたしてこうしたキャラクターのクルマにそこまでの加速性能が必要なのか? と別の疑問が頭をもたげてきてしまうほど。よきにつけあしきにつけ、エモーショナルな感覚抜きで“爆速”が(簡単に?)実現できてしまうというのもまた、BEVの特徴のひとつではあるのだろう。
こうして、見た目の好みはまた別としながらも、走行性能や充電性能が大幅に向上し、このグレードではWLTCモードでの航続距離が487kmから687km(18インチシューズ装着時)で一挙に200km(!)も延長されたとあっては、従来型のオーナーに対しては、もはや「ご愁傷さま」と声をかけるしかない。さらにダメ押しとなるのがその価格設定で、改良型では全グレードで約110万円ものダウンが行われたとなれば、「BEVはやはり買い時が分からない」と、あらためて声を上げたくなってしまう。
また、こうしてクルマ本体は着々と進化を遂げるいっぽうで、いよいよBEV普及の妨げになっていると思えてしまうのは、遅々として改善の進まないCHAdeMO充電網の実態。ようやく充電ポイントにたどり着いたと思ったら、希望を打ち砕く『故障中』の張り紙や、いまだ報告の続く“相性不良”による充電不能。もはや意味不明といえる“30分縛り”等々。そんなCHAdeMOを使わなければならないストレスを避けんがために「BEVならテスラ一択」というユーザーさえ存在するというハナシにも納得だ。
そもそも、乱立する充電カードで事前に承認が必要という時点で、CHAdeMOはもはや詰んでいるとさえ言いたくなる。あらゆる面で、マイナーチェンジの枠を大きく超えて進化を遂げたソルテラに触れ、最後は思わず、あらためて充電インフラの問題を考えさせられることになってしまった。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=スバル)
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テスト車のデータ
スバル・ソルテラET-HS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:2030kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27kgf・m)
リアモーター最高出力:120PS(88kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17kgf・m)
システム最高出力:342PS(252kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:622km(WLTCモード)
交流電力量消費率:135Wh/km(WLTCモード)
価格:605万円/テスト車=643万5000円
オプション装備:ボディーカラー<ハーバーミストグレーパール/アティチュードブラックマイカ>(11万円)/235/50R20タイヤ&20インチアルミホイール<ブラック塗装+切削光輝>+樹脂加飾<グレー塗装>+ルーフレール+パノラマムーンルーフ<電動ロールシェード付き>(27万5000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:844km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:213.4km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.9km/kWh(約204Wh/km、車載電費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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