プジョー3008ハイブリッド4(4WD/6AT)【海外試乗記】
なかなかの“初モノ” 2011.09.29 試乗記 プジョー3008ハイブリッド4(4WD/6AT)ユニークなハイブリッドシステムをもつプジョーの新作「3008ハイブリッド4」に試乗。その走り、そして乗り心地は……?
前はエンジン、後ろはモーター
熱効率に優れたディーゼルエンジンと、内燃機関が苦手とする運転領域を補完するハイブリッドシステムの「掛け合わせ」を行えば、極めてエコなパワーユニットが出来上がるはず――そんなアイデアは古くからあって、実際に「どこまで効果があるのか」と実験的な意味合いも含んで検証に挑んだトラック/バスや、最近ではJR北海道やJR東日本管轄の鉄道車両にも、そうした“心臓”を搭載したモデルの存在がすでに報告されてはいた。
一方で、かくも大きな燃費向上=CO2削減の効果が見込まれながら、乗用車の世界では一般ユーザーが手にすることのできない一部のコンセプトカー的なものを除き、なかなかそうしたアイデアを採用したモデルが現れなかったのは、やはり「ディーゼルエンジンという“高価なもの”と、ハイブリッドメカという“高価なもの”を掛け合わせる」というコスト上の問題が最大の要因であったと考えられる。
そうこうするうちにピュアEVなども発売され始め、「もしかすると、これはアイデア倒れで終了か!?」と思い始めたところで、その沈黙を破ったのはドイツでも日本でもなく、なんとフランスの作品だった。“世界初の量産型ディーゼルハイブリッド乗用車”のタイトルを勝ち取ったのは、プジョーの「3008ハイブリッド4」なるモデル。
注目すべきはディーゼルエンジンを動力源とする前輪駆動系は既存モデルで採用のデザインをほぼそのまま利用し、「ボッシュが技術を提供」と報告されるモーター/制御系やサンヨー製のニッケル水素バッテリーからなるハイブリッドメカを、リアアクスルの周辺にまとめて搭載する後輪駆動系を追加した、パラレル式のシステムを採用することだ。
見た目の主張はないけれど
ハイブリッドシステムの搭載を告げるエンブレムのたぐいを除けば、“特別なモデル”であることを外観から識別するのは困難なそんなモデルを、早速スタートさせてみる。バッテリー充電残量などの条件を満たしている限り、スタート時の動力源はモーターのみというのは、トヨタ方式などと同様。ほぼ無音のままに後輪駆動で速度を上げるこうしたシーンでは、しかしモーターの最高出力が27kW、すなわち37ps相当とさほど大きくないこともあり、より大きな加速力を求めてアクセル踏み込み量が増すと、比較的容易にエンジンも始動して四輪駆動へと移行する。
感心したのは、走りのシーンにかかわらず静粛性が高いことで、完全自動で行われるディーゼルエンジンの始動/停止による騒音や振動の変化は、ほとんど気にならないレベルといっていいもの。ただし、エンジンパワーに依存してコンプレッサーを動かすエアコンの吹き出し温度の上下は、比較的日差しの強い下でのテストドライブでは、やや気になるレベルだった。コスト的な要因から通常型のエアコンを採用したというが、日本人的に繊細な感覚(?)からすると、ここは電気式コンプレッサーの採用などで、エンジンの回転に影響されることなく一定の冷房能力を確保してほしいと思えたのは事実だ。
緩加速のシーンでは、シングルクラッチ式2ペダルMTでは不可避だった「シフト時の加速Gの断絶感」が、かなり解消されたことに気が付いた。実は、いったんスタート後のエンジンが主役となっての加速シーンでは、こうした瞬間にモーターに電流を与えることで“加速Gの谷”を埋めるハイブリッドモデルならではの制御が採用されているのだ。前述のようにモーター出力に限りがあるので、全力加速時などは効果が限定的となるが、日常シーンで快適性が確実に向上しているのは見逃せないポイントといっていい。
ちなみに、「当初からそうした数字は意識していた」という、エンジンで163ps、モーターで37ps、合計で200ps相当というシステム出力を発生する。公称される0-100km/h加速タイムは、8.5秒。これまでシリーズ最速だった、日本にも導入されているガソリンモデルのそれが8.9秒だから、実際にも「なかなか速い」という快感が得られる走りの実力の持ち主であるのは間違いない。
「508」ゆずりのフットワーク
この3008ハイブリッド4では、センターコンソール上のセレクターダイヤルの操作によって、バッテリーからの持ち出し出力及びエンジンルーム内にある8kWのスタータージェネレーターが発した電力を用いての常時4WDモードや、最高70km/hの速度で最長4kmまでの距離をエンジンを起動させずに走行するZEVモードなどの選択も可能。スポーツモードではアクセル線形がよりシャープになる、シフトプログラムも「より高回転まで引っ張るセッティング」に変更される。
ハイブリッドにまつわるさまざまなアイテムを、リアアクスル周辺に集中して搭載ということからテストドライブ前はやや不安のあったフットワークのテイストは、事実上既存の「3008」と変わらないもの。すなわち、ストローク感がたっぷりとしたしなやかな乗り味は、最新の「508」などとも共通するイメージ。実際、リアサスペンションの設計は「407と508から移植されたもの」と報告されている。
ところで、欧州ではこの秋から発売とアナウンスされたこのモデルで待ち遠しいのは日本市場への導入。いまだにその時期も価格も発表されていないが、インポーターであるプジョー・シトロエン・ジャポンでは、「なんとか日本の皆さんにも乗っていただけるように鋭意努力中」とのことだ。
(文=河村康彦/写真=プジョー・シトロエン・ジャポン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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