第127回:海でも陸でも“楽しいトヨタ”へ 〜「トヨタ・ワクドキ体験会」から
2011.09.22 エディターから一言第127回:海でも陸でも“楽しいトヨタ”へ 〜「トヨタ・ワクドキ体験会」から
トヨタ自動車が、プレス向けに「ワクドキ体験会」なる一風変わった試乗会を開催した。そこで見られた、最新の“楽しいトヨタ”とは……?
純粋な楽しみのために
「KAIZENやGENCHI GENBUTSUの次には、WAKU DOKIを国際語にしたい」。
9月上旬に横浜で開催されたジャーナリスト向けの「トヨタ・ワクドキ体験会」の開催にあたり、トヨタ自動車広報部の担当者が述べたのが、上記の言葉。ワクドキの内容は、さまざまな乗りもので楽しい機会を提供したいというもので、今回は、新型ボートとスーパースポーツカーが用意された。
トヨタ自動車(以下トヨタ)が、このところ掲げるスローガンが「モビリティを通して豊かな社会を」。意訳すれば、乗りものの目的を移動の手段と限定せずに、たんに楽しみのために乗るのでもいい、むしろそこに価値を見出してもらいたい。そんなコンセプトで、現在のトヨタの製品ラインナップから、トヨタの言葉を借りれば、最新の「ワクドキ」を与えてくれるものを、ジャーナリストに紹介してくれた。
最新の「ワクドキ」とは下記の内容だった。プレジャーボートの新商品「PONAM(ポーナム)-35」。560psのスーパースポーツカー「レクサスLFA」。そして、「GAZOO Racing」(クルマの楽しさや夢を広げるためのトヨタの取り組み)からリリースされる、トヨタ車ベースのコンプリートカーやコンセプトカー。なかでも、ボートとスーパースポーツは、試乗の機会が与えられた。マリーナと高速道路をともに持つ横浜での試乗会は、トヨタの「今」を体験するのにいい機会だったのだ。
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トヨタ、海をゆく!?
「PONAM-35」は、トヨタ自動車マリン事業部が手がける、漁業とか旅客のためでなく、フィッシングなど娯楽のために使われる、いわゆるプレジャーボート。35という名前にあるとおり、船体の全長は11.95m(おおざっぱに35フィート)で、海外向けランドクルーザー用4.5リッターV8コモンレール式ディーゼルエンジンを2基搭載している。トヨタでは自動車エンジンをチューンして船舶用として販売してきており、これまで海外を中心に3万基という実績を持っている。
PONAM-35のセリングポイントは、自動化された船体の傾斜補正(波あたりの衝撃緩和)、ジョイスティック1本で離着岸ができる操船性、アルミハルを用いた高い強度、さらにデザイン性すぐれる船体、そして落ち着いたインテリアなどが挙げられる。エクステリアデザインは、自動車で使うコンピューターで立体設計をするなど、新しい取り組みをしたことが強調されていた。
海岸から20海里(約37km)まで離れられるプレジャーボート。横浜のマリーナを出ると、レインボーブリッジをくぐり、東京湾の外まで出て、日本を一周することも可能だ。速度も25ノット(約50km/h)ぐらいは出てしまう。速いというのが体感的にわかる。
大桟橋を海側から、あるいはレインボーブリッジを真下から、とふだん無縁のアングルからの眺めがまず楽しい。本来なら、ヘミングウェイ『海流の中の島々』に出てくるような、大胆なカジキ釣りを楽しむひとが買うボートである。シロウトは無邪気なものです。はい。
「夏の海は茶色がかっていますが、季節が冬に向かうと、どんどんきれいな寒色系になります」と船長の説明を受けながら、PONAM-35で東京湾をクルージングしていると、ボートのよさがほんのりと感じられる。
北欧では、学生の趣味がヨットでスカンジナビア半島の島をめぐることだったりする。海岸線が長い国はクルマでのドライブ感覚でボートを楽しんでいる。それが当たり前だ。むやみに漁業権をとりあげて海岸にレジャー施設を建設するのもいけないが、もうすこしマリンスポーツへの門戸が開かれるようになるといいだろうな。
たしかに海にも「ワクドキ」があった。トヨタには、ボート事業から撤退しないで、環境性能を含めて世界に誇る製品を開発しつづけてもらいたいと思う次第。
ちなみにPONAM-35、価格は5901万円。1万円ってなんだろう……。
いままでにないクルマ
陸上での「ワクドキ」はレクサスLFAだった。『webCG』の読者のかたには、いまさら説明の必要もないだろう。
そんなこと書きながら、さらっとおさらいをすると、エンジンはヤマハと共同開発した最高出力560psの4.5リッターV10。これをフロントミッド搭載し、後輪を駆動する。最高速度は325km/h、価格は3750万円。すごいクルマだ。しかし、日本では限定165台の販売で、すでにすべて売約済みである。
じゃあ、ここでLFAがどれだけすごいかを書いても、おおかたの読者のかたには無意味となってしまう。せめて、もうすこし増産してほしい、という声になればいいかとも思う。“蟷螂(とうろう)の斧”ですが……。なにしろ、LFAは公道を走るレーシングカーだ。スタイリングは、ボディ曲面を美しく見せる塗装技術に腐心しているのがよくわかるように、誰もが感じる美が強調されている。しかし乗り込めば、既成概念がひっくり返される。ひとことで言うと、いままでにないクルマだ。
いままでにないとは、想像もつかない形状をしたスイッチ類やシフトレバー、さらにハンドルやシートの触感、すべてにおよぶ。五感という意味では、エンジンに火を入れたときの音も、クルマ好きなら全身を揺さぶられるものだ。舌を通じてLFAを検証することはできないが、驚くほどの加速感と、正確無比という感じのステアリングなど、スポーツカーのドライビングを味わい尽くす、という意味にとらえれば、この領域でも満足感がかなり高い。
シフトは「ノーマル」モードで自動的に変速するが、マニュアルでギアを選ぶ「スポーツ」モードが言うまでもなく楽しい。2500rpmあたりでレゾネーターが働き、吸気音も排気音も高くなりいちおうの達成感があるが、エンジン回転を上げていくと、5000rpmからどんどんトルクが出てくる。この感覚は驚くべきものがある。スポーツモードではエンジン回転のレッドゾーンが9000rpmに設定される。市街地で乗っているかぎり、幻のゾーンになるだろう。どんなだろう。
続けてこそ「ワクドキ」
レクサスLFAは意外に乗り心地がよい。ボディーパーツの65%にCFRP(カーボンファイバー)を使っていて車重はわずか1480kg。「プリウスα」と同等だ。いっぽう装着タイヤは、前が265/35、後ろが305/30の、ともに20インチととてつもないサイズだ。いわゆるバネ下がかなり重いはずだが、乗り心地はフラット。ハンドルが影響を受けることもなかった。クルマの調整のとき「しつけ」という言葉を使うが、高いレベルでしつけられている。
「これからまたこういうクルマを出すかどうか。20年後ぐらいには出したいです」。LFAにかかわった技術者の言葉だ。「LFAを開発したことで量産車にはいろいろフィードバックがありました。まもなく発表される新型『GS』もかなりスポーティです」と続けた。
しかし20年後では、いまの40代だって楽しめるかどうか、微妙な年齢に突入してしまう。これだけの「ワクドキ」を限られたひとの楽しみで終わらせてはいけない。ポルシェやフェラーリだって、あるいはフォルクスワーゲンという量産車を手がける企業の傘下にあるランボルギーニだって、スポーツカーを作り続けてきたから名声を築けたのだ。そんなこと釈迦(しゃか)に説法だが、レクサスがどこに向かおうとしているのか。そのロードマップがいまひとつ見えない昨今、LFAが与えてくれた「ワクドキ」に大いに期待してしまう。
(文=小川フミオ/写真=高橋信宏)

小川 フミオ
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