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ランドローバー・ディスカバリーHSE(ディーゼル)(4WD/8AT)/ディスカバリーHSE(ガソリン)(4WD/8AT)

ヒエラルキーが揺らぐ 2017.06.26 試乗記 下野 康史 英国の大型SUV「ランドローバー・ディスカバリー」が5代目にフルモデルチェンジ。これまでの四角張ったスタイリングを捨て、スラントノーズのスポーティーなイメージに一新された新型の出来栄えをリポートする。

“レンジ スポーツ”よりデカい

これは、レンジローバーの上なのか下なのか!? 新型ディスカバリーをまのあたりにして、まずそう思った。

ディスカバリーなのだから、上であるはずはないのだが、スペックも押し出しもレンジローバーに負けていない。価格的(779万円より)にはさすがにまだ御大とは差があるが、スポーティー系レンジローバー、「レンジローバー スポーツ」よりボディーはスリーサイズすべてで大きい。全幅は2mちょうど。2.4tに迫る車重はレンジローバースポーツより重い。段付きルーフのデザインアイコンを残した結果、1m89cmに達する全高は、「ディフェンダー」なきあとの現行ランドローバーで一番のノッポである。

エンジンは、ディーゼルの3リッターV6ターボと、ガソリンの3リッターV6スーパーチャージャー。このうち目玉になるのはガソリンモデル+20万円で用意されるディーゼルだろうが、ともにレンジローバー/レンジローバー スポーツにすでに搭載されているエンジンである。

現在、日本でのランドローバー販売は、「レンジローバー イヴォーク」が過半数を占めているという。今度のディスカバリーがレンジローバーとイヴォークのギャップを埋めるモデルであるのはたしかだが、新型の成り立ちは横置き2リッター直4ターボのイヴォークよりだいぶレンジローバー寄りだ。メーカーでは「多用途性に優れた定員7人のフルサイズSUV」とうたっている。

新型「ディスカバリーHSE」のインストゥルメントパネルまわり。各部に本物のウッドや金属素材を用いた装飾が施されている。
新型「ディスカバリーHSE」のインストゥルメントパネルまわり。各部に本物のウッドや金属素材を用いた装飾が施されている。拡大
シートカラーは写真の「エボニー」を含む全4種類。表皮にはグレインドレザーとウィンザーレザーの2種類が用意される。
シートカラーは写真の「エボニー」を含む全4種類。表皮にはグレインドレザーとウィンザーレザーの2種類が用意される。拡大
従来モデルとは一線を画すスタイリングとなった新型「ディスカバリー」だが、3列目シートの居住性を確保するための段付きルーフや、左寄りに装着されたリアのナンバープレートなど、ディテールには従来モデルの特徴が受け継がれている。
従来モデルとは一線を画すスタイリングとなった新型「ディスカバリー」だが、3列目シートの居住性を確保するための段付きルーフや、左寄りに装着されたリアのナンバープレートなど、ディテールには従来モデルの特徴が受け継がれている。拡大
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それぞれに魅力がある

清里の試乗会で最初に乗ったのは、「HSE」のディーゼル(799万円)。ひとコマ90分という忙しい時間割だったので、可能な限り、一生懸命走った。

その印象をひとことで言うと、これは“走れるデブ”ならぬ、走れる大型SUVである。まず3リッターディーゼルターボの地力がスゴイ。258psの最高出力はガソリンに及ばないが、最大トルクは3割増しの600Nm。ディーゼルならではのウルトラトルクで、巨漢を意識させない動力性能を発揮する。

車外で聞くアイドリングは、ディーゼルとはわからないほど静かだが、車内にいると、それなりに野太い音がする。だが、走りだせば音はまったく気にならない。4000rpmを超すトップエンドまで滑らかに回る高級V6ディーゼルだ。

この出来だと、3リッターV6スーパーチャージャーも影が薄かろう。そう思いながらガソリンの「HSE」に乗り換えると、これはこれでよかった。ディーゼルほどのモリモリした力強さはないものの、6500rpmまで伸びる気持ちのよさはガソリンエンジンならではだ。そのおかげで、クルマの動きもより軽快に感じる。

今回、燃費計測はできなかったが、試乗車のトリップコンピューターは、ディーゼルが8km/リッター台、ガソリンが5km/リッター台を示していた。同じ1リットルの化石燃料でも、やはりディーゼルエンジンの高効率は明らかである。とはいえ、新型ディスカバリーが買えるほどの経済力があったら、ランニングコストをケチらずにガソリンを選ぶ手もありかと思う。

エンジン縦置きのプラットフォームと、センターデフで駆動力を配分するフルタイム4WD機構を備えた「ディスカバリー」。形は似ているが、“弟分”の「ディスカバリー スポーツ」とは車両構造がまったく異なる。
エンジン縦置きのプラットフォームと、センターデフで駆動力を配分するフルタイム4WD機構を備えた「ディスカバリー」。形は似ているが、“弟分”の「ディスカバリー スポーツ」とは車両構造がまったく異なる。拡大
日本仕様に設定されるパワープラントは、3リッターV6ディーゼルターボとスーパーチャージャー付きの3リッターV6ガソリンエンジンの2種類。いずれもトランスミッションには8段ATが組み合わされる。
日本仕様に設定されるパワープラントは、3リッターV6ディーゼルターボとスーパーチャージャー付きの3リッターV6ガソリンエンジンの2種類。いずれもトランスミッションには8段ATが組み合わされる。拡大
荷室容量は、3列7人乗り仕様で258~2406リッター、2列5人乗り仕様で1231~2500リッターとなっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
荷室容量は、3列7人乗り仕様で258~2406リッター、2列5人乗り仕様で1231~2500リッターとなっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)拡大

多少の悪路はものともしない

長さ5m、幅2m、高さ1.9m。そこに加えて“コマンドポジション”というランドローバー伝統の高いアイポイント。八ヶ岳山麓の開けたオープンロードで運転していても、ディスカバリーは「デッカイ!」と感じるクルマである。

しかし走っていれば、その巨体をそれほど持て余す感じはしない。標準装備の電子制御エアサスペンションのおかげである。例えば、ガタガタに荒れた舗装路のコーナーでも、逆に地ならしするかのように平然と突破する。筋量の豊かさをイメージさせるたくましい足まわりだ。悪路走行時から荷物積載時まで、上下115mmに及ぶ大きな車高調整シロを持つのはエアサスならではである。

スキー場に設けられたコースでは、悪路走破性能にも触れた。といっても、スタート前、インストラクターから試すように勧められたのはATPC(オールテレインプログレスコントロール)とヒルディセントコントロール、いわばオフロード自動走行装置である。ディスカバリーといえば、初代モデルはキャメルトロフィーのクルマとして有名だったが、いまやったとしたら、参加者はみんな“足操作フリー”で走るのだろうか。
まだるっこしいので、アクセルを踏んで斜面を下っていたら、スピードを出さないでくださいと、レシーバーで注意されてしまった。

高い悪路走破性能も従来モデルから受け継がれた新型「ディスカバリー」の美点。4WD機構は副変速機つきで、最大渡河深度はランドローバーおよびレンジローバー中最大の900mmを誇る。
高い悪路走破性能も従来モデルから受け継がれた新型「ディスカバリー」の美点。4WD機構は副変速機つきで、最大渡河深度はランドローバーおよびレンジローバー中最大の900mmを誇る。拡大
新型「ディスカバリー」には、オンロードでの高速走行時や、オフロード走行時、乗降の際、また荷物を積み下ろしする際などに車高を調整できる、電子制御エアサスペンションが装備されている。
新型「ディスカバリー」には、オンロードでの高速走行時や、オフロード走行時、乗降の際、また荷物を積み下ろしする際などに車高を調整できる、電子制御エアサスペンションが装備されている。拡大
本格的な4WD機構に加え、任意の車速(2~30km/hの間で設定可能)での一定速走行を可能にする「オールテレインプログレスコントロール」や、状況に応じて最適な走行モードを選択できる「テレインレスポンス」など、オフロード走行を想定したさまざまな電子装備が採用されている。
本格的な4WD機構に加え、任意の車速(2~30km/hの間で設定可能)での一定速走行を可能にする「オールテレインプログレスコントロール」や、状況に応じて最適な走行モードを選択できる「テレインレスポンス」など、オフロード走行を想定したさまざまな電子装備が採用されている。拡大

今やすっかり高級SUVに

6ライトワゴンスタイルでBピラー後ろの側面ガラスを強調するディスカバリーは、「7人乗り」がひとつの売りである。それも身長190cmの人×7人、といううたい文句が正しいかどうかは160cmの筆者には確認できなかったが、あとふたり用の3列目席は見ても座ってもたしかに立派である。シートの幅がたっぷりしているし、イスの脚の長さも確保されているため、SUVのサードシートにありがちな体育座りの苦行をしいられることはない。

専用アプリをダウンロードすると、電動3列シートをスマホで遠隔操作することができる。例えば、ショッピングセンターでソファを衝動買いしたときに、あらかじめセカンドシート以降をフラットにしておく、なんていう使い方ができる。
だが、標準は5人乗りで、サードシートは約30万円のオプション。電動化も別料金だ。そのほか、パノラミックルーフなどのオプションをふんだんに盛り込んだ試乗車は、いずれも900万円台のプライスタグをつけていた。

89年に登場した初代ディスカバリーは、4リッターガソリンV8で「299万円より」というオネストプライスが売りだった。ローバーと資本関係にあったホンダからは「クロスロード」の名でも販売された。なんて昔話をしても仕方ない。
5代目にあたる新型のキャラクターをひとことで言うと、これは“レンジローバー ディスカバリー”である。グローバルなメインターゲットは、庭に小さな動物園を持っているような中東のお金持ちの子だくさん、だろうか。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

オプションで用意される3列目シート。2列目シートとの間には851mmのレッグルームが確保されている。
オプションで用意される3列目シート。2列目シートとの間には851mmのレッグルームが確保されている。拡大
携帯端末で走行履歴やドアのロック/アンロックを確認できる通信機能を搭載するなど、新型「ディスカバリー」ではコネクティビティーの強化も図られている。「Remote Premiumアプリ」を使用すれば、シートの可倒機構を遠隔操作することも可能だ。
携帯端末で走行履歴やドアのロック/アンロックを確認できる通信機能を搭載するなど、新型「ディスカバリー」ではコネクティビティーの強化も図られている。「Remote Premiumアプリ」を使用すれば、シートの可倒機構を遠隔操作することも可能だ。拡大
動力性能については、ディーゼル車は0-100km/h加速が8.1秒、最高速が205km/h、ガソリン車は0-100km/h加速が7.1秒、最高速が215km/hとアナウンスされている。
動力性能については、ディーゼル車は0-100km/h加速が8.1秒、最高速が205km/h、ガソリン車は0-100km/h加速が7.1秒、最高速が215km/hとアナウンスされている。拡大
ランドローバー・ディスカバリーHSE(ディーゼル)
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テスト車のデータ

ランドローバー・ディスカバリーHSE(ディーゼル)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm
ホイールベース:2925mm
車重:2460kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/3750rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1750rpm
タイヤ:(前)255/55R20 110W/(後)255/55R20 110W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリックAT SUV-4×4)
燃費:--km/リッター
価格:799万円/テスト車=930万円
オプション装備:メタリックペイント<ユーロンホワイト>(9万7000円)/エボニーヘッドライニング(6万3000円)/InControlプロテクト(4万5000円)/電動調整可倒式自動防眩(ぼうげん)ドアミラー(4万7000円)/5+2シート(28万8000円)/センターコンソールクーラーボックス(5万5000円)/パノラミックルーフ<固定式、サンブラインド電動開閉>(23万3000円)/プライバシーガラス(7万5000円)/ルーフレール<シルバー>(4万7000円)/自動緊急ブレーキ(2万2000円)/プレミアムカーペットマット(3万8000円)/レーンディパーチャーワーニング<車線逸脱警告装置>(2万2000円)/スモーカーズパック(8000円)/コールドクライメイトパック(17万9000円)/ドライブパック(3万4000円)/InControlコネクトプロパック(5万7000円)

テスト車の年式:2017年式
テスト開始時の走行距離:5001km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

ランドローバー・ディスカバリーHSE(ガソリン)
ランドローバー・ディスカバリーHSE(ガソリン)拡大

ランドローバー・ディスカバリーHSE(ガソリン)

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×2000×1895mm
ホイールベース:2925mm
車重:2440kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/3500rpm
タイヤ:(前)255/55R20 110W/(後)255/55R20 110W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリックAT SUV-4×4)
燃費:--km/リッター
価格:779万円/テスト車=991万9000円
オプション装備:メタリックペイント<モンタルチーノレッド>(9万7000円)/InControlプロテクト(4万5000円)/電動調整可倒式自動防眩(ぼうげん)ドアミラー(4万7000円)/20インチ スタイル5011アロイホイール<5スプリットスポーク グロスブラックフィニッシュ>(7万円)/5+2シート(28万8000円)/シートヒーター&クーラー<フロント・2列目>およびシートヒーター<3列目>(48万7000円)/電動3列目シート<トランクルームからの電動操作>(4万5000円)/センターコンソールクーラーボックス(5万5000円)/ヒーテッドフロントスクリーン<ヒーテッドウオッシャー付き>(3万2000円)/フロントスクリーン用ヒーテッドウオッシャー(2万4000円)/スライディングパノラミックルーフ<サンブラインド付き電動開閉>(29万4000円)/プライバシーガラス(7万5000円)/ルーフレール<ブラック>(4万7000円)/自動緊急ブレーキ(2万2000円)/レーンディパーチャーワーニング<車線逸脱警告装置>(2万2000円)/スモーカーズパック(8000円)/インテリジェントシートフォールド(7万8000円)/ブラックデザインパック(6万4000円)/ドライブパック(3万4000円)/InControlコネクトプロパック(5万7000円)/シートパック4-16ウェイ運転席/助手席シート(30万8000円)

テスト車の年式:2017年式
テスト開始時の走行距離:3627km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
 

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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