第17回:バイパーほったのみなさんのおかげです
2017.07.06 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 拡大 |
秘密兵器「トーヨー・プロクセスR888R」を手に入れたwebCGほったが、再び“アメ車のアメ車によるアメ車のための走行会”こと「AUTO-X(オートクロス)」に挑戦! “FR素人”のぺーぺー編集者は、最新の競技用タイヤに見合うタイムを出すことができたのか?
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ヒグマの檻にブチ込まれた気分
現在、記者のバイパーが履いているタイヤは、トーヨーのプロクセスR888Rである。右から読んでも、左から読んでもアールハチハチハチアール。某のり屋さんみたいな名前のタイヤだ。
カッチカチのミシュランから、なぜにいきなりSタイヤ……とは最近は呼ばないのですね。今後は競技用タイヤと表しましょう……なんぞに手を出したかは、前回紹介したとおり。人生初の競技用タイヤと、そのアグレッシブなトレッドパターンに最高にハイになった記者は、早速アメ車メインの走行会、オートクロスに参加を申し込んだ。
しかし、そこで記者はさる事実を知ることとなる。
「次回は練習会じゃなくって本番の大会だから頑張ってくださいね。あと、ほったさんのバイパーは競技用タイヤだから、今度から僕と同じ『Cクラス』での参加ですよ。楽しみだなあ~」
かように述べるは、あるときはアメ車専門店「コレクションズ」の代表、またあるときはオートクロス主催者の、本多芳彦氏である。
しかし待て。なにやら爽やかにのたまっていたが、ちょっと待て。
Cクラスといえば、5つあるエントラントの区分けの中でも、猛者たちが集う一番上のクラスである。公道を走っちゃいけないナリのクルマがずらりと……というか、実際にナンバーの切られたサーキット専用車までシレっとくつわを並べているクラスである。記者と記者のへっぽこバイパーは、タイヤが替わったってだけでヒグマの檻(おり)に放り込まれたのだ。
「こうなったら、重馬場での一発逆転に期待するしかねえ……」などと思っていたのだが、起きてみれば当日の空は見事なイベント日和。仕方ない。もしあまりに成績が悪かったら、連載では今回のイベントはなかったことにしよう。
どうにかこうにか、45秒台
前回の会場が富士スピードウェイだったのに対し、今回の舞台は千葉のロングウッドステーション。どこぞのホラゲーを思い出させる寂れた商業施設の駐車場には、朝も早うから不穏なアメ車が居並んでいた。
開会式兼ブリーフィングに、コースを覚えるための慣熟歩行、そして各参加者1本ずつの慣熟走行が終わると、早速計測アリのタイムアタックがスタートである。とはいえ、5つあるクラスの中でもCクラスの出走は最後の最後。まだかまだかと待つうちに、記憶していたコース順路は早くも忘却のかなたである。で、ようやくCクラスの出走が始まったかと思うと、今度は記者の前のバイパーが42.24秒という好タイムを記録。会場は沸き、ワタクシの胃はキリキリと締め上げられた。かようにして緊張が最高潮に達したところで、いよいよ記者の番である。
スタートのフラッグを確認し、タイミングを見計らってジワっとアクセルオン。ドーンと踏まないのはタイヤが古いから……と前回と同じ言い訳をしかけて思い出した。いやいや、タイヤ替えたでしょうよと。そして「R888Rの実力を皆さまに伝えねば」と身の丈に合わぬ気負いを見せたところで見事にミスコース。その後、切り返しだなんだでワーキャーやって、結局タイムは1分00秒06となった。
2本目は余計なことを考えずに走ることだけに専念し、46.79秒を記録。うーん。平々凡々である。少なくとも、競技用タイヤを履いたバイパーが出していいタイムではない。これには、普段ぼんやりしている記者もさすがに意気消沈、ホントに凹んだ。とはいえ凹んでいてもタイムは上がらないので、バイパー乗りの諸先輩方に教えを請うこととする。そこで得た「今回のコースはスタートからゴールまで全部1速の、“オートマ運転”でいいと思いますよ」とのアドバイスに従い、次の走行では45.92秒を記録。まだまだ自慢できるタイムではないが、どうにか45秒台に乗せることができた。
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タイヤの違いに感覚が追いつかない
……いやいや。「どうにか45秒台」じゃないよ! なにやってんの。
いかにペーペーのイチ編集者とはいえ、腐ってもギョーカイ関係者。競技用タイヤでこんなタイムしか出せないようなら、マジで恵比寿に帰れない。明日から失業である。
しかし、記者はこの段になっても全然タイヤのグリップ力を引き出せていなかった。依然としてその脳裏には、脱脂されつくしたミイラのようなミシュランのドライブフィールが張り付いていたのだ。他のエントラントさんには「ほったさんは、顔に似合わずキレイな走らせ方をするよねえ~」とお褒めいただいたが(慰められてた?)、なんのことはない。相変わらず「横Gかけたらクルマがすっ飛んじゃうんじゃないの?」とビビっていたのだ。
これはイカン。これでは今後タイムアップしてもタカが知れている。午後最初の1本目は、「ていねいなコース取り」はひとまず置いといて、ちょっと突っ込み気味&振り回し気味にコーナーに挑んでみた。が、R888Rは相変わらずべたっとアスファルトに張り付いたまま。タイヤにコケにされている気分になる。
かような記者の煩悶(はんもん)をよそに、イベントはいつの間にやら佳境に突入。計測開始から5本目ともなると、Cクラスの参加者は皆目つきが変わってくる。大人げない大人のスイッチ・オンである。
出走が迫り、ヘルメットをかぶろうとしていたところ、出走順がひとつ前のエントラントさんが話しかけてきた。目下トップタイムを出しているバイパー乗りの御仁だ。
「次の出走なんですけど、入り口で並ぶとき、(自分のクルマから)距離を開けておいてください。スタートのときに本気で踏むと、ジャリとか石が飛ぶと思うんで」
極太の競技用タイヤが蹴飛ばすジャリを、記者のバイパーに浴びせかけぬよう気を使ってくれたのだ。それにしても「次は本気出すから」という理由がカッコイイ。なんだか予告ホームランみたいである。全然違うけど。
氏の言葉に触発された訳ではないが、ここに至って記者もようやくはらをくくった。仮にすっ飛んでもパイロンを蹴倒すだけだ。もし傷が残るようなら、また武蔵境の板金屋さんに持って行こう。
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このタイムは良いのか、悪いのか……
かような覚悟で臨んだ5本目。2つ目のコーナー、180度ターンの出口で、ついにR888Rがすべった。といっても、突然グリップが「すぽん」と抜けてケツが放り出されたわけではない。前へ向かおうとする力は保ちつつ、「じわわ……」とリアが横に振り出されたのだ。
おお。これが、常日頃からデスク竹下が語る「滑り出しにおけるタイヤの過渡特性」というやつか。R888Rのそれは非常に穏やかで、記者のようなへなちょこでも、ゆとりを持ってアクセルを戻し、姿勢を正すことができた。この回のタイムは45.52秒。上述のスリップにも関わらず、これまでの記録より0.4秒速いタイムである! ……まあ、ゴールで枠内に止め切れなくて+3秒されましたけど。
この感覚を反すうしつつ、最後となる6本目ではクリッピングポイントの黄色いパイロンにクルマを寄せるよう注力。そこで出した44.34秒という記録が、このイベントでの記者のベストタイムとなった。
……ちなみにこの記録、残念ながらバイパー乗りの中では自慢できたもんではない。というか、ぶっちゃけビリである。いかに最新・ピカピカの競技用タイヤとはいえ、ドライバーのへなちょこぶりと馬の差(他のエントラントさんのバイパーは皆、2代目か、初代でも「GTS ACR」や「GTS-R」などの“役付き”である。うらやましい……)を覆すことはできなかったようだ。
ただ、自分で言うのもナンだけど、FR素人としてはそう卑下する記録でもなかった様子。イベント終了後、いつもお世話になっているコレクションズのメカさんにこう話しかけられた。
「どうでした? Sタイヤ履いてるだけでCクラスに放り込まれた理由が分かったでしょう。普通のタイヤで45秒を切るのって、本当に大変なんですよ」
そうなのだ。確かにフツーのタイヤを履くクラスのなかにも、記者より速いエントラントはいるのだが、そうした方は皆さん、方々の走行会でブイブイいわしている腕っこきのご様子。クルマも内装ナシ+ロールケージのガチ仕様といった趣で、正直、つるしのバイパーにいただきものの競技用タイヤといういでたちの記者は、なんだか申し訳ない気持ちになった。
まあ、ハナっから相手にされてなかったと思いますけど。
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精進させていただきます
後日、電話で東洋ゴム工業の関係者にお話を聞いたところ、「R888Rは、タイヤに騒音規制がかかるヨーロッパでも問題なく公道を走れること、パドックでの履き替え作業ナシにサーキットを楽しめることを意図した商品です。同じ競技用タイヤでも、サーキットに特化したものと比べないでくださいね(笑)」と説明された。また某バイパー乗りの御仁も、「トーヨー(R888)はサーキット往復&走り込み用。アタックするときはフージャーとかに履き替える」と述べていた。こうした競技用タイヤの中では、R888およびR888Rはマイルドな部類のものなのだろう。
しかし、それでも記者からすれば猫に小判のグリップ力だ。また、いざ滑り出してもその動きは穏やかなので、安心して「もうちょっと、もうちょっと」といろいろ試せる点も好印象だった。
……などと書いたところで、ワタクシの技量では言葉に信用がありますまい。そうでなくとも「タイヤをもらったトーヨーに気を使っているのだろう? 正直に言うてみい」という方もおられるだろうから、一応、今回のイベントでトップタイム(41秒フラット)を記録したバイパーが、「トーヨー・プロクセスR888」を履いていた事実も書き添えさせていただく。
なんにせよ、今回の記者の記録が多少なりとも胸を張れるものだとしたら、それはすべて、クルマとタイヤと周囲のアドバイスのおかげである。長年連れ添ったサードカマロで42秒台を出すような御仁もおられるなかで、記者なんぞはまだまだへなちょこ。次回はもう少し、いろいろな意味で胸を張れるタイムを出せるようガンバりたい。
(webCGほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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