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フォルクスワーゲン・ゴルフR(4WD/7AT)

雨ニモマケズ 2017.07.12 試乗記 塩見 智 「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のマイナーチェンジに合わせて、最強グレード「ゴルフR」も最新型へとアップデート。ノーマルモデルと同様に最新の安全装備とインフォテインメントシステムを手にしたほか、パワートレインも強化された。雨中のドライブでその性能を試した。

ウエット路面はかえって好都合!?

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
ゴルフRハサウイフクルマダ

テストドライブの日に雨が降ったのは不幸なことだが、その日テストしたのがフォルクスワーゲン(VW)のゴルフRだったことは不幸中の幸いかもしれない。路面状況に応じて前後トルク配分をほとんど100:0から0:100まで自由自在に、常に変化させ続けることができる4WDシステム「4MOTION」の実力を、滑りやすいウエット路面で確かめることができるのだから。

さて、ゴルフがこのほどマイナーチェンジされた。ゴルフRも同時にマイナーチェンジ。外観上はほとんど変わらない。ヘッドランプユニット内のデザインがやや変わった。わかりやすい変化といえばメータークラスター内の表示だろう。アナログの速度計と回転計を左右に配置し、その間に各種情報を表示させる通常のタイプから、全体を12.3インチのディスプレイとし、速度計と回転計をアナログ風にバーチャル表示し、中央部分に地図などを表示させることができるようになった。速度計と回転計のサイズを小さくして地図表示面積を増やすことも可能。

アウディが先に採り入れ、VWでは「パサート」と「ティグアン」に同じ機能が採用されている。視線をセンターパネルに移動させる必要がなく実に見やすい。「アウディTT」はこの方式を採用する代わりにセンターのディスプレイを廃止したが、他のクルマもそうすればスッキリしたデザインになるのに。テレビのない部屋の方がすてきなように。助手席側から操作できなくなるが、大したことじゃない。

「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のトップグレードとなる「ゴルフR」。今回テストした7段AT仕様のほか、6段MT仕様もラインナップされる。
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のトップグレードとなる「ゴルフR」。今回テストした7段AT仕様のほか、6段MT仕様もラインナップされる。拡大
従来型よりもアグレッシブなデザインとされたフロントマスク。グリルの形状は従来のルーバー式から、格子状へと変更された。
従来型よりもアグレッシブなデザインとされたフロントマスク。グリルの形状は従来のルーバー式から、格子状へと変更された。拡大
今回のマイナーチェンジでは、「ゴルフ」全車のテールランプがLED化された。さらに「R」には、流れるタイプのウインカー「ダイナミックターンインジケーター」も標準で備わる。
今回のマイナーチェンジでは、「ゴルフ」全車のテールランプがLED化された。さらに「R」には、流れるタイプのウインカー「ダイナミックターンインジケーター」も標準で備わる。拡大
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速すぎて“人間リミッター”が作動する

撮影のためにワインディングロードの同じ区間を何度も往復する。最初はゆっくり、徐々にペースを上げていく。前述の4MOTIONシステムの優秀さと「ブリヂストン・ポテンザS001」のグリップ力の高さ、そしてロードホールディング性能の高いサスペンションによって、雨のなかでも十分なトラクションが確保され、横方向のグリップ力も高い。なのでどんどんペースが上がる。最終的に限界を決めたのは、“性能的にはもっといけるはずだがこれ以上は(自分の技量だと)危険”という人間リミッターだった。

コーナリングの後半で出口に向かってアクセルを開ける、FWDだと内側のタイヤが空転するような勢いで踏んでも、4WDなら話は別。踏んだ分だけ前へ進む。ステアリングフィーリングが上質なのが印象的だ。操作に対して挙動が正確で、コーナーの途中で切り増してもきちんと反応してくれる。オンザレール。スイッチに近い形状のパドルも反応がよい。DSGの変速が速くてもここの反応が遅いと台無しだということがよくわかっていらっしゃる。

エキゾーストノートはクルマの性格を考えると、もっと車内に響きわたってもよいのではないかと思ったが、これ見よがしではなく、これくらい抑制的なのがVWらしさ、ゴルフRらしさなのかもしれない。音質は素晴らしい。クォーンという4気筒らしからぬ粒がそろった感じの音。

シャシーコントロールシステムの「DCC」もいろいろ試してみる。なるほど「ノーマル」から「コンフォート」に切り替えると、よりロールを許し、当たりがマイルドになった。一方ノーマルやコンフォートから「レース」に切り替えると、足まわりは辟易(へきえき)とするほどではないが、かなりハードになる。違いが明確で最初は楽しい。だがやがてどのモードも帯に短く襷(たすき)に長いと思うようになった。

レースにするとエンジンのレスポンスが高まるのはウエルカムだが、いかんせんシフトポイントが高すぎる。名前の通りレース用だというなら、一部の人向けすぎ。シフトポイントのみもう少し下げてほしい。ノーマルは中庸といえば聞こえはいいが、何がしたいのかわからないとも言える。コンフォートをもってノーマルでよいのでは? まあソフトウエアの変更なので、たくさん設定できることこそがメリットなのかもしれないが。結局は「カスタム」で、足まわりをコンフォートに、エンジンをスポーツにした状態が、一般道におけるスポーツドライビングに向いていると感じ、好ましいと思った。ゴルフRに限らず、この手のドライビングモードを選べる機能の根底にある“足を硬くすればスポーティー”ということになんとなく違和感がある。

水の浮いた路面を駆け抜ける「ゴルフR」。4WDシステム「4MOTION」の優秀さを実感できたシーンだ。
水の浮いた路面を駆け抜ける「ゴルフR」。4WDシステム「4MOTION」の優秀さを実感できたシーンだ。拡大
インテリアはブラックで統一され、随所にシルバーのアクセントが加えられる。
インテリアはブラックで統一され、随所にシルバーのアクセントが加えられる。拡大
12.3インチのフル液晶メーターパネル「Active Info Display」を標準装備する。このほか純正インフォテインメントシステム「Discover Pro」など、他グレードではオプションとなる装備の多くが「R」では標準設定となる。
12.3インチのフル液晶メーターパネル「Active Info Display」を標準装備する。このほか純正インフォテインメントシステム「Discover Pro」など、他グレードではオプションとなる装備の多くが「R」では標準設定となる。拡大
デュアルクラッチ式ATのDSGは、6段から7段へと変更された。シフトセレクターは、アルミと本革にカーボン調のアクセントが施された「R」専用デザイン。
デュアルクラッチ式ATのDSGは、6段から7段へと変更された。シフトセレクターは、アルミと本革にカーボン調のアクセントが施された「R」専用デザイン。拡大

2リッター直4ターボは出色の完成度

マイナーチェンジでエンジンの最高出力が30psアップして310ps/5500rpm-6500rpmに、最大トルクが20Nmアップして400Nm/2000-5400rpmとなった。雨のなかでその違いを感じ取るのは難しかった。同時に取材した「メルセデスAMG GLA45 4MATIC」は最高出力381ps、最大トルク475NmとゴルフRよりもずっとハイスペックだが、同じ区間を走らせてみると、数値ほどの差は感じなかったし、時に低回転域でゴルフRの方がトルキーに感じることもあった。ゴルフRの表記が控えめなのかGLA45の表記が楽観的すぎるのかはともかく、ゴルフRのエンジンは2リッター直4ターボとしては相当に高いレベルにあると思う。

DSGの段数が6段から7段に増えたため、変速ショックが減り、DSGならではのシームレスな加速に拍車がかかった。DSGには乾式と湿式があって、乾式の方が効率は高いが、湿式の方がより大きなトルクに対応できるため、スポーティーモデルには湿式が採用される傾向にある。DSGというと発進時の一瞬のもたつきが気になるモデルもあるが、ゴルフRではそれを感じなかった。この点も湿式の方が有利なのだろう。

フロントシートはサポートが強く、もものサポートも強く、安心してペースを上げることができる。アクセルペダルの右側に足を置いておくことができる部分があるのが好きだ。VW各車のいい特徴。これは右ハンドル化の副産物なのだろうか。ACCを使って走行している場合、右足の置き場に困るクルマは意外に多いのだ。

「ゴルフR」の心臓部となる2リッター直4ターボエンジンは、310psと400Nmを発生。ピストンや高圧インジェクションバルブ、ターボチャージャーなどの改良により、従来型から30psと20Nm上乗せされている。
「ゴルフR」の心臓部となる2リッター直4ターボエンジンは、310psと400Nmを発生。ピストンや高圧インジェクションバルブ、ターボチャージャーなどの改良により、従来型から30psと20Nm上乗せされている。拡大
「ゴルフR」の動力性能は、0-100km/h加速が4.6秒、最高速度が265km/hと公表される。
「ゴルフR」の動力性能は、0-100km/h加速が4.6秒、最高速度が265km/hと公表される。拡大
「ゴルフR」専用デザインとなるスポーツシートは、表皮に本革を使用。3段階の温度調節ができるシートヒーターも内蔵する。
「ゴルフR」専用デザインとなるスポーツシートは、表皮に本革を使用。3段階の温度調節ができるシートヒーターも内蔵する。拡大

飛ばさないときは普通のゴルフ

前述のDCCで厄介なモードを選ばない限り、ゴルフRの乗り心地はノーマルゴルフと同じように快適だ。飛ばさないときは普通のゴルフとして使える。ここがこのクルマの神髄だろう。ユーティリティー面も普通のゴルフから何も失っていない。「ポルシェ・ボクスター」やアウディTT、「アルファ・ロメオ4C」は、同じように刺激的なパワーをもつかもしれないが、法事に向いていない。例えばゴルフはなんでもそつなくこなし、先生や親のウケもよい、内申点が高い生徒会長タイプだ。ただし、生徒会長がモテるわけではない。ゴルフRは生徒会長なのにたまには夜遊びの誘いにものってくれる、話のわかるタイプだ。一番悪いヤツとも言える。モテるのはこの手合い。宮沢賢治の詩は一部分があてはまるだけだった。

雨ニモマケズ 
風ニモマケナイガ
時ニハ飲ミ会ノ誘イニモ応ジ
サボッタリ贅沢モスル
ゴルフRハサウイフクルマダ

と、締めたつもりだったが、あと一点だけ。VWやアウディはカーナビの各項目の階層が独特で、住所などの入力がやりにくいなと常々思っていたが、音声入力の認識力が結構高く、5、6回試した住所入力をすべて正しく認識した。ほんの数年前まで音声入力機能の性能は低くて使う気になれなかったが、AIの発達のおかげか、最近はどのクルマも急激に進化している。試してみるべし。

(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

試乗車のボディーカラーは「R」専用色となる「ラピスブルー」。これを含めて全7色が設定される。
試乗車のボディーカラーは「R」専用色となる「ラピスブルー」。これを含めて全7色が設定される。拡大
タイヤサイズは225/40R18。試乗車には「ブリヂストン・ポテンザS001」が装着されていた。
タイヤサイズは225/40R18。試乗車には「ブリヂストン・ポテンザS001」が装着されていた。拡大
スポーツモデルといえども、ユーティリティー性能が犠牲になっていないところが「ゴルフR」のよさ。使い勝手のいい荷室も標準車と同様。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)
スポーツモデルといえども、ユーティリティー性能が犠牲になっていないところが「ゴルフR」のよさ。使い勝手のいい荷室も標準車と同様。(写真をクリックすると荷室のアレンジが見られます)拡大

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・ゴルフR

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1800×1465mm
ホイールベース:2635mm
車重:1510kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:310ps(228kW)/5500-6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-5400rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:13.0km/リッター(JC08モード)
価格:559万円/テスト車=563万3200円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(4万3200円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3001km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:439.4km
使用燃料:44.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

 

フォルクスワーゲン・ゴルフR
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