ポルシェ・パナメーラ ターボS E-ハイブリッド(4WD/8AT)
ポルシェにしかできないこと 2017.08.22 試乗記 「ポルシェ・パナメーラ」のトップグレード「ターボS E-ハイブリッド」に試乗。プラグインハイブリッドシステムは燃費性能のみならず、サルーンとしての快適性やポルシェ車としてのスポーツ性能も大きく進化させていた。カナダ・バンクーバー島からのリポート。史上最強のパナメーラはプラグインハイブリッド
2017年3月のジュネーブモーターショー。そのポルシェブースで最も華やかにスポットライトを浴びていたのが、パナメーラに追加設定された新ボディーの「スポーツツーリスモ」。そして、同じく熱い視線を集めていたのが、新エンジンの搭載と“MTの復活”が話題となった改良型の「911 GT3」だ。
スポーツカーフリークからは、むしろ「こっちが本命でしょ!」とツッコミが入るかもしれないが、いずれにしてもこの2台が“ポルシェの2大ニュース”であったことに、異論の余地はないはず。一方、そんなトピックスに隠れがちではあったものの、実はもう1台のワールドプレミアが。それこそがパナメーラの追加グレードであるターボS E-ハイブリッドだった。
でも、確か現行のパナメーラには最初からプラグインハイブリッド仕様があったよね……という指摘は大正解。
最高出力330psを発するツインターボ付きの2.9リッターエンジンに、ちょうど100kW(136ps)の出力を発するモーターを組み込んだ8段DCTと組み合わせた「4 E-ハイブリッド」が、確かに用意されている。
そう、ここに紹介するのはそれとはまた異なる、パナメーラ第2のプラグインハイブリッドモデル。680psというシステム総合出力を誇り、“史上最強のパナメーラ”とうたわれるターボS E-ハイブリッドである。
装備の充実度も最上級
フード中央部がヘッドライトよりも低くレイアウトされたフロントマスクや、“フライライン”と称される猫背型のルーフライン。さらには、リアデッキを持たないファストバック調のシルエットや、後部が左右から強く絞り込まれたキャビンの造形等々、「911」特有のデザインとの関連性が強くアピールされる、パナメーラの見た目の雰囲気は、すでになじみとなりつつあるもの。
一方で、21インチの巨大ホイールや、そのスポーク内に姿をのぞかせるアシッドグリーンのブレーキキャリパー。そして、リアバンパー下部左右にそれぞれ2本出しされたブラシ仕上げのステンレススチール製テールパイプなどは、このグレードに特有のコスメティックだ。
シリーズ中のフラッグシップに位置づけされるグレードだけに、装備の充実度も最上級。14ウェイの電動調整が可能なフロントコンフォートシートや、フルレザー+ダークウォールナットのインテリア、アルカンターラ仕上げのルーフライニングやドアパネル、出力710WのBOSE製サウンドシステムなどに加えて、ロングホイールベース版の「エグゼクティブ」にはパノラミックルーフシステムも標準で装備される。
さらに“自分だけの一台”を望むというのであれば、12種類のスタンダードボディーカラーと10種類のインテリアカラー、5種類のインテリアパッケージからの組み合わせを筆頭に、さまざまなオプションやカスタマイズプログラムを用いて、好みの仕様に仕上げていくことも自由自在。
そうしたエクイップメントの中には、赤外線反射&遮音ガラスやイオナイザー、ドアクローザーなど、かつての“ピュアスポーツカー専業メーカー”時代では考えられなかったアイテムまでが含まれているのだ。
俊敏性の高さにびっくり
そんなフラッグシップ・パナメーラのテストドライブを行ったのは、スポーツツーリスモと同様に、カナダはバンクーバー島。一般道でのドライブとともに、スポーツツーリスモには用意されなかったサーキット走行の機会も与えられた。
2016年7月のオープンという「vancouver island motorsport circuit(バンクーバーアイランドモータースポーツサーキット)」は、一周が2.3kmほどの、いわゆるミニサーキット。レイアウト次第では最大19ものコーナーが得られる上に、行く先が完全なブラインドとなるアップダウンも存在するなかなかユニークなコースだ。
パナメーラ史上最強モデルのドライブは、いきなりそんなサーキットセッションからスタートした。
標準ボディーとはいえ、全長は5mオーバー。2.3tを超える重量のボディーにシステム総合出力が680ps……と、スペックを見る限り、どう考えても「このコースには“ミスキャスト”」という印象が否めない。
それでも気を取り直し、標準装備の“スポーツクロノパッケージ”で、パワーパックや足まわりに最もスポーティーなセッティングが一括選択される「スポーツプラス」のモードをチョイス。このモードでは常時エンジンが稼働するため“EV感”は希薄な一方で、タイトなコーナーから脱出する際など、アクセルを踏み込むと瞬時に太いトルクが立ち上がるのは、明らかにモーターによるサポートが効いている感触。アクセルペダルを深く踏めば先導車の「911ターボ」に勝るとも劣らぬすさまじい加速力で、さすがは“0-100km/h加速が3.4秒”とうたうだけの実力だ。
そんな動力性能とともに驚かされたのは、このタイトなコースをまるでコマネズミのように駆け回る高い俊敏性でもあった。
起伏に富んだこのコースで、登りから下り勾配へと差しかかるコーナーでは瞬間的に前輪荷重が抜け、アンダーステアが強まると同時にトラクションコントロールが介入して、前を行く911ターボとの差が一気に開いてしまうポイントもあった。
が、それを除けば、右へ左へと連続するコーナーでも身のこなしは軽快。実際よりもずっと小さいサイズのモデルをドライブしているという錯覚さえ覚えるほどだった。
そんなテイストを実現した背景には、アクティブスタビライザーやトルクベクタリングシステムといったハイテクデバイスの活躍もあったはず。オプション装着されていたリアアクスルステアも、少なからぬ効果を発揮しているはずだ。
変幻自在のマルチタレント
先導する911ターボに“へばりついて”のそんなサーキット走行を6周ほどこなし、クルマがバテる前に人間の目が回ってきたところで、そこからは待望(?)の一般路走行に。
走行モードを、EV走行優先の「Eパワー」、もしくは、“最大の効率を得るため、駆動システムの切り替えを自動で行う”と説明される「ハイブリッドオート」にセットすると、ラゲッジスペース下に収められた、容量14kWhのリチウムイオンバッテリーの充電状況が良好である限り、街乗りでは大半のシーンをEVとして走ることになる。
モーター出力が100kW、すなわち約136ps相当とそれなりに強力で、EVとしての最高速も140km/hに達するため、通常、平たんな街乗り中に必要とされる加速は、まず“エンジンの助けナシ”で乗り切ることが可能。一方で、急な登坂路に差しかかったり、意図的に素早い加速が必要だったりすれば、すぐさまエンジンが始動し、V8サウンドが耳に届くと同時に、“4ドアのスーパースポーツカー”へと変身を遂げるのだ。
ちなみにモーターのみでの加速シーンでも、DCTが変速動作を行っている感覚は明白。当然そこでの“ラバーバンド感”とも無縁なのは、“スポーツハイブリッド”としての面目躍如という印象。
一方、サーキットでは違和感はなかったものの、減速Gが弱い中で微妙な調整を要求される街乗りシーンで、コントロール性にやや難アリと感じられたのがブレーキ。セラミックコンポジットブレーキの「PCCB」が標準装備だが、原因はそこではなく、回生との協調制御が要求されるハイブリッド車ゆえの課題といえそうだ。
そんなこんなで、EV走行時の圧倒的静粛性や3チャンバー式エアサスペンションがもたらす乗り味など、上級・上質なサルーンとしての振る舞いから、モーターとツインターボ付きV8エンジンの、双方のパワーを総動員したスーパースポーツカーとしてのパフォーマンスまで、走りのシチュエーションとドライバーの気持ち次第で、“変幻自在”のマルチタレントぶりを披露するのがこのモデル。
それはやはり、「ハイブリッドシステムをハイパフォーマンスのコンポーネンツに据え、走りのトップモデルを構築するというコンセプトを7年前から考えていた」と開発陣が語る、ポルシェならではの作品というしかない。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ポルシェ・パナメーラ ターボS E-ハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5049×1937×1427mm
ホイールベース:2950mm
車重:2310kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:550ps(404kW)/5750-6000rpm
エンジン最大トルク:770Nm(78.5kgm)/1960-4500rpm
モーター最高出力:136ps(100kW)/2800rpm
モーター最大トルク:400Nm(40.8kgm)/100-2300rpm
システム最高出力:680ps(500kW)/5750-6000rpm
システム最大トルク:850Nm(86.7kgm)/1400-5500rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)315/30ZR21 105Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:2.9リッター/100km(約34.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:2831万円/テスト車=--
オプション装備:--
※車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロード&トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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