日産エクストレイル20X(3列シート車)(4WD/CVT)
“プロ”を名乗るにはまだ早い 2017.09.08 試乗記 “自動運転”のフレーズを掲げる日産の運転支援システム「プロパイロット」が、マイナーチェンジを受けた「エクストレイル」に搭載された。言葉選びに慎重になるメーカーが多い中、あえて強気な姿勢を崩さない日産自慢のシステムの出来栄えは?マイナーチェンジの目玉はプロパイロット
スクエア基調のスタイリングはなかなか個性的だったし、そうしたルックスに好感を抱いて手に入れたというオーナーだって、きっと少なくなかったはず。
初代と2代目に共通だった、そんなちょっと武骨なテイストはあっさりと“宗旨替え”され、全く雰囲気が異なる都会的なルックスとなって、2013年末に登場――。正直、当時はちょっと戸惑いも覚えた3代目エクストレイルが、マイナーチェンジを受けて登場した。
そのメニューには、「よりタフなイメージを強調したエクステリアと、上質感を高めたインテリア」など、モデルライフ半ばでのリファインでは“定番”ともいえる内容の文言が並ぶ。
とはいえ、今回の目玉がメーカーオプションとして新たに設定された「プロパイロット」であることは明らかだ。
2016年8月にフルモデルチェンジした現行「セレナ」に続き、このアイテムの設定は日産車として2番目。ちなみに、前走車への追従をベースとした加減速の管理と、走行中の車線キープを行うこのレベルのアシストシステムは、すでに他社の少なくないモデルにも搭載されている。
ただし、それを「高速道路同一車線自動運転技術」というフレーズで紹介しているのがプロパイロットの特徴。率直なところ、“この程度”の運転支援システムに“自動運転”の4文字を含むのは、誤解を招きかねない表現として個人的には「反対」ではある。
“タフ”なのはエクステリアだけ!?
今回テストドライブへと連れ出したのは4WDで、3列シートを装備した「20X」グレード。
くだんのプロパイロットは、ハイビームアシストやステアリングスイッチなどとセットでの14万円強のオプション。試乗車には「インテリジェントアラウンドビューモニター」や「インテリジェントルームミラー」、ナビゲーションシステムなどからなる35万円近いセットオプションも装着されていた。さらには、LEDヘッドライトやルーフレール、そして渋いレッドの有償特別塗装色などまで含めると、車両価格を含めた総額ではおよそ370万円というなかなかゴージャスな仕様となっていた。
そんなプライスを知ったあとにキャビンに目をやって気になってしまったのは、樹脂部分に残された“小傷”の数々だった。
試乗したクルマは、登録後まだ2カ月ほどで、ほぼ新車といえる状態。にもかかわらず、ダッシュボードやラゲッジスペースに引っかいたような跡がすでに多数見られたのは、ハードパッドの部分が、ちょっと爪が当たった程度でも白い跡が残るほど、極めて傷つきやすいためだ。
わずかとはいえ、せっかく手に入れた新車に傷をつけてしまい、何とも切ない気持ちを抱いた経験を持つ人は少なくないはず。実はエクストレイルのボディーは、全色で軟質樹脂を配合したクリア塗装を採用し、洗車傷やわずかな引っかき傷は復元させられるということが売り物。
“タフギア”をうたうモデルであるからこそ、そんなコンセプトをインテリアでも実現してほしいと思う。
足まわりのセッティングは“親会社”譲り
一方、走り始めてすぐに感じたのは、予想と期待を上回る上質感だ。
まず好印象だったのは静粛性の高さ。中でも特筆すべきはロードノイズの小ささで、これははるかに高額のエアサスペンションを採用する多くの欧州SUVにさえ、勝るとも劣らないポイントになっている。
ストローク感が豊かで、いわゆる“ネコ足”と表現したくなるような乗り味も見逃せない美点。フラット感の高さはこれも特筆できる水準で、ヒョコヒョコとした動きは皆無。率直なところ、数ある日産車の中にあってこのモデルは、「“親会社”であるルノー作品の得意部分をしっかり学んでいるナ」と、そんな印象すら抱いたほどなのだ。
搭載されるパワーパックは、最高出力147psを発生する自然吸気の2リッターエンジン+CVTという組み合わせ。約1.6tの重量に対して決してとびきりパワフルという印象ではないが、もちろん日常シーンには必要にして十分な動力を得ることができる。
CVTにしてはラバーバンド感は比較的少なく、アクセル操作に対してなかなかタイトなトルクの伝達感が心地いいな……と、テストドライブの最中には感じていた。が、同時に取材した6段ATを備える某モデルに乗り換えた瞬間、「あ、やっぱりCVTの出足はあんなにルーズだったんだ……」と、印象が覆ってしまったのも事実ではある。
日本車をツマラナクしている要因の半分はCVTだ! そう感じてしまうのはこんな時なのだ……。
プロパイロットの実力をつぶさにチェック
基本的なメカニカルコンポーネンツに変更が報じられていないこともあり、今回のテストドライブでは意図的にプロパイロットの使い勝手を中心に試してみた。
取扱説明書によれば、このシステムは「高速道路や自動車専用道路での使用」が前提とされている。その中でも「直線や穏やかなカーブでの使用を想定」と注釈が入る通り、大きく曲がりくねった首都高速上では実際のコーナーに対してステアリング操作の支援が追いつかず、その機能が解除されてしまう場面にたびたび遭遇した。
同時に、そうしたシチュエーションでは、システムが前走車を見失うことも多く、そもそも追従走行が成立しづらい。プロパイロットによって走行できていても、それがいつ解除されるか分からないので、むしろ緊張感は通常走行時よりも高まってしまう。「直線基調の湾岸線では使えそうな場面はあっても、それ以外の路線では使えそうにないナ」……と、それが首都高速上で使用した印象だ。
複数車線を備えた直線基調の高速道路上でも、混雑気味で走行速度に“波”があるシチュエーションでは、快適な使用は難しい。
追従走行のターゲットは直前の車両。それゆえ、さらにその前方が詰まり始めたことを認知してそろそろアクセルを緩めた方がいいと分かっても、プロパイロットはそんなドライバーの思いをくみ取ってはくれない。もちろん、逆の場合には前走車と開いた車間に左右から割り込まれたりと、これまたリラックスした走りは実現できないのだ。
結果として、このシステムの恩恵に最もあずかることができたのは、暫定的に片側1車線で開通した高速道路上など、すいた一本道という条件下。それが、まだ“プロ”をうたうには早過ぎる、この“パイロット”の実力ということなのだ。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
日産エクストレイル20X(3列シート車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1820×1740mm
ホイールベース:2705mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:147ps(108kW)/6000rpm
最大トルク:207Nm(21.1kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)225/60R18 100H M+S/(後)225/60R18 100H M+S(ダンロップ・グラントレックST30)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:282万7440円/テスト車=369万8311円
オプション装備:ボディーカラー<ガーネットレッド[スクラッチシールド]>(5万4000円)/LEDヘッドランプ+インテリジェントオートライトシステム+フォグランプ(7万5600円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知機能付き>+インテリジェントパーキングアシスト<駐車支援システム>+インテリジェントルームミラー+ステアリングスイッチ<ナビ、クルーズコントロール>+NissanConnectナビゲーションシステム+インテリジェントDA<ふらつき警報>+クルーズコントロール(34万9920円)/PTC素子ヒーター<1kW>+クイックコンフォートシートヒーター<運転席・助手席・セカンドシート左右>(8万4240円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>+SRSカーテンエアバッグ(7万5600円)/ハイビームアシスト+インテリジェントオートライトシステム+ステアリングスイッチ<ナビ、クルーズコントロール、プロパイロット>+電動パーキングブレーキ+オートブレーキホールド+プロパイロット+インテリジェントLI<車線逸脱防止支援システム>+BSW<後側方車両検知警報>+RCTA<後退時車両検知警報>(14万0400円)/ルーフレール(5万4000円) ※以下、販売店オプション デュアルカーペット<フロアカーペット[消臭機能付き]+ラバーマット>3列専用(3万7111円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2174km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:107.7km
使用燃料:9.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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