BMW G310R(MR/6MT)
ブランドって尊い 2017.09.09 試乗記 小排気量セグメントという新たな市場に切り込むべく、ドイツの雄が送り込んだニューモデル「BMW G310R」がいよいよ登場。中型免許でも乗れる、お値段およそ60万円のストリートモデルでも、唯我独尊の世界をつらぬく“BMWらしさ”は健在なのか?新興国市場席巻特命機種
結論めいた感想を先に述べさせてもらうと、やっぱりブランド力って尊いなあということです。
このG310Rは、BMWが新たに挑む小排気量セグメントの先鋭として新開発されたモデル。車名の「310」は排気量313㏄に由来。全体的なデザインは、BMWの街乗りスポーツラインのロードスターに属する「S1000R」を踏襲。最大のトピックは、パートナー企業のTVSモーター・カンパニーがインドで製造すること。その主目的はコストダウン。小排気量に適した低価格。さらにはあらゆる排ガス規制や現地法令をクリアするスペックを備え、「新興国市場を席巻すべし」という特命を帯びたのがG310Rなのです。
ちなみに日本での価格はおよそ60万円。普通自動二輪免許でもOKという触れ込み付き。「私でも乗れる」とよろこぶべきか、「BMWよ、お前もか」とうつむくべきか。さてさて。
取材チームで一盛り上がりしたのは、「もしバッジがなかったら?」。なかなか鋭い考察ですね。確かに、スタイル面は最近のストリートモデルとして標準的。BMWとしてはロードスターシリーズのオリジナリティーを主張するだろうが、僕らが知り得るBMWらしい唯我独尊的デザイン力は決して強いとは言えない。59万9000円に抑えるなら無理もない話だよねと、そういう納得はするけれど。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
存在意義は「BMWのちっちゃいの!」
「軽々しくそんなこと言うな」と怒られる前に“らしい”ポイントを話しておきます。34psを発生する液冷単気筒エンジンは、前のめりのボディーシルエットに反して後傾したシリンダーを有し、吸気系を前に、排気系を後ろに置いています。いわゆる後方排気型は一部のレーサー系で見られる珍しいレイアウトなのですが、それをグローバルモデルに採用する点は、あるいはBMWらしいと言っていいかもしれませんね。非常にスムーズに回ります。しかもフレーム自体の剛性感が高いし、車重も159kgと軽量。自然な着座位置と相まって、スカッと風を切りたい街乗りでは最適かつ安心の乗り味でしょう。
以上を踏まえて言えば、非常に好意的な意味合いで、とてもフツーなオートバイです。だから嫌みな僕らは、「バッジがなかったら?」という議題を挙げたんですね。わかってはいるんです。天下のBMWであっても未開拓の市場獲得は重大議案であることを。そしてまた、天下のBMWだからこそオタメゴカシな流用ではなく、新型エンジンを開発する手間を惜しまなかったことも。
そうした本気度を知らしめるために、伝統と革新に裏打ちされた信頼の証しとしてのバッジがある。だからみんながG310Rの登場に驚く。またはよろこぶ。そういう図式。新興国と呼ばれる地域の人々がこのモデルをどう受け止めるかはよくわからないけれど、かつて“中型”が異常ににぎわったこの国の人なら、「BMWのちっちゃいの買っちゃった」と言えば、あえての選択にセンスが高いと褒められるかもしれない。それもブランド力のたまもの。ゆえに、何がどうあれBMWにしかつくれなかったオートバイということになりますね。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2000×820×1070mm
ホイールベース:1380mm
シート高:785mm
重量:159kg
エンジン:313cc 水冷4ストローク 単気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:34ps(25kW)/9500rpm
最大トルク:28Nm(2.86kgm)/7500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:30.3km/リッター(WMTCモード)
価格:59万9000円

田村 十七男
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






































