ダイハツ・ムーヴカスタムRS“ハイパーSA III”(FF/CVT)
いい手応えはあるものの 2017.09.18 試乗記 この夏、現行モデルとなってから初のマイナーチェンジを受けた「ダイハツ・ムーヴ」。軽量・高剛性のボディー構造をいち早く採用し、走りを含む“基本性能のレベルアップ”をうたって登場したその実力は今も健在か? 最上級モデルの試乗を通して確かめた。軽のCVTがこんなにイイとは!
このムーヴのイイところ。ヨカッタところ。最初にあげるとしたら、それはパワートレインのドライバビリティーである。内燃機関+CVTの物件がこれだけ運転しやすいとは……って感じでちょっとビックリ。技術の進歩なのか考えかたが変わったのか、どういう理由でこうできたのかはわからない。わからないけれど、内燃機関+CVTの日本車のパワートレインがどれもこれくらい運転しやすかったらそれは非常にメデタイ。そういえば「スズキ・スイフト」のCVTのも悪くなかった。んー。ジャーナリストの皆さんが「ラバーバンドフィールがー!!」とか書き続けてきたことの成果……だろうか。
どこがどうイイかというと、ひとつには、運転手のあずかり知らないところで勝手にウニョウニョ変速しまくる感じがないのがイイ。ホントはやっているのかもしれないけれど、気にならない。いまこれだけアクセルペダルを踏み込んだら、このぐらいの加速をしてくれる。そのへんのお約束というか操作と結果の関係がわかりやすいのもイイ。要するに、フツーである。フツーじゃないのがアタリマエになってしまっている状況だと、フツーであることがほんとにありがたい。ちょっと加速の要求レベルが高いとすぐにパオーン!! で、高速道路の下り坂では勝手にどんどんスピードが上がっちゃう。アクセルペダルの裏側に右足の爪先を突っ込んで戻したくなる(笑)。そういうのが軽のCVTつき物件だと思っていたけれど、気がつけばずいぶん……ということなのか? やりゃあ、できるじゃん。
CVT関係の印象がイイということは、エンジンも相応にイイ。変速の制御だけでやれることなんて、おそらくタカが知れている。ほしいときにほしいだけのチカラが出てくれないと。その点、軽のターボは有利といえる。排気量660ccということで負荷が常に高いところへもってきて、パワーの上限は「自主規制」の64ps。つまり、ちっこい排気タービンがビンビンに回っているときが多い。レスポンス的に有利。でもそれはずっと前からそうなワケで、だからやっぱり、ダイハツのパワートレイン屋さんたちが頑張っているのだと思いたい。こないだ借りた「ミラ イース」(ということは当然ターボなし+CVT)も悪くなかったし。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ブレーキが普通なことのありがたみ
パワートレイン関係でもうひとつ。スタート&ストップつまりアイドリング停止機構のウザさがグッと減っているのも印象に残った。まだ走行中なのに勝手にエンスト……はしない感じ。それとブレーキ関係。停止に向けての減速中、踏力一定&制動G一定のブレーキングをエンジンブレーキ(というかパワートレインの都合による前後方向のGの変動←CVTにありがち)がジャマする感じ……がない。ほほー。ちゃんと踏力をかけて制動Gを出す感じもわりあいあって、だから左足ブレーキ(筆者はあまり慣れてない)がやりやすかった。
いまの日本車の……とあえていうけれど、ブレーキはほんとにヒドい。ペダルにかける踏力の加減でもって制動Gをコントロールするという基本のキが、それこそアサッテどころか異次元のどこかへいっちゃってる感じ。「だからやっぱ自動ブレーキでしょ!!」とジャーナリストの皆さんはいうかもしれないけれど(笑)、人力ブレーキがフツーに扱いやすいことは大事である。ものすごく。踏み応えだけだとアクセルペダルかブレーキペダルかワカランようなのは、それはクルマとして根本的にどうかしている(ほとんどクレイジー)。ブレーキペダルは踏力メイン。アクセルペダルはストローク。
フツーじゃないのがすっかりアタリマエになってしまっている状況で、このムーヴのブレーキは、この程度でもすごくありがたい。そういえば、こないだのミラ イースも……。とにかく、いいぞダイハツ!! もっと踏力をかけて自信をもって踏める方向でやってくれ!! なお、日本車じゃなかったらいまのクルマのブレーキはヒドくなくてどれもバッチリかというと、そうとはかぎりません。
ステアフィールにムラがある
アクセル関係、ブレーキ関係ときて、じゃあ次はハンドル関係でしょうか。一番大事な直進付近の手応えは、少なくとも日本車の電動パワステ物件としてはそこそこかもっとよくできている。真ん中は固着したみたいにガチッとしていて、そこからヨイショと動かすと、手応えがスカッと抜ける。本来のというかナマのハンドルの手応えやその変化のしかたとは真逆パターンなそういうのがアリガチななかで、このムーヴのはまあフツーだった。進路の管理がやりにくくないタイプ。真っすぐ走らせるのが難しくないタイプ。高速道路を巡航していて「おいオマエ、そっちじゃないよ」で慌てて(最初の一瞬はグイッと、ただし直後に手応えが抜けるのに注意しながら)修正舵。そういうことにはならなかった。クルマの進路を安定させるにあたってキモになるのはリアなので、そういうことでいうと後ろアシも相応にしっかりできていると考えられる。
もし重ステだったら、ハンドルの手応えはどうなるか。コレコレこういうときにはカルくて、コレコレこういうときにはグッと重たくなる。そのへんのことを考えながら運転しているとわかることに、このムーヴの電動パワーステアリングのハンドルの手応え、わりかし合っているっぽい。だからきっと、それなりに気をつかって仕上げてあるのだと思う。ということで、またもや、いいぞ!!
ただし……というか、例えば朝イチの、まだタイヤがあったまっていないとき。ハンドルを動かしてタイヤに角度がついてもスッとグリップが立ち上がらないからトルクセンサーのトーションバーがちゃんとねじられなくて……ということだと思われることに、アシストがスッと入らなくてフリクションが気になる。直進付近の進路の管理がぎこちなくなる。で、「昨日と違うぞ」。その状態がしばらく続く。電動パワステ物件あるある系の話ではあるけれど、でもちょっと目立つ。気になる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
このピッチングは要改善
ハンドル操作に対するロールの感じは、ダイアゴナル系……といっていいと思われる。ダイアゴナルロールとはすなわち、フロントの旋回外輪へ向かって車体がナナメに沈みこんでいくロール(クルマを前荷重の状態にしてハンドルを切れば自然とそうなる、ともいえる)。どちらかというとハンドルを切るのと同時にフロントのロールが発生する系ではあるけれど、ただしグラッとはこない。抑えが効いている。車両の向きが変わり始めるところで後ろがガッと引っ掛かる感じもなくて、切りはじめから切り増しから切り終わりまでのつながりもよい。ハンドルを完全に真っすぐに戻さないとロールが戻りきらないイヤな感じは別になかった……と思う。なので、これはこれでアリ。ハンドルを切るとスッと姿勢が変わって向きが変えやすい感じがあってしっかり感もあって、ワインディングロードを元気よく走ったら、けっこう楽しいのではないか。
「でもこれ、惜しいなあ!!」なのは、乗り心地。簡単にいうと、ピッチングが気になる。フロントのアシが伸びているときにリアは沈んでる。またはその逆。それがピッチング。前後のアシが呼吸を合わせて同じ方向に伸びたり縮んだりして車体が地面と平行に上下に動けば、それはバウンシング。車体の上下動がピッチングにならなくて、常にバウンシング。そういうクルマはめったにないけれど、でもこのムーヴのピッチング(だと思う)はちょっと気になる。だから「惜しい!!」。
ピッチングを伴う車体の上下動の周波数がちょっと高いというか気になりやすいところにある、というのがひとつ。勢いよく沈み込んで反転して、伸びの途中でキュッと止まる、というのもあった(後ろアシ)。ダンパーの圧側の減衰を上げきれないぶんを伸び側に盛ってしまう、日本車にすごくありがちなタイプだと思われる。とにかく、長距離長時間乗っても疲れない系の乗り心地の典型的な例……ではないことは間違いない。それどころか今回、試乗していてクルマ酔いしそうになった。というか、間違いなく酔った。少なくとも気持ち悪くはなった。そのまま乗り続けていたら、なぜか症状が治まったけれど。
大筋ではイイのだけれど……
あと気になったのは、車内のニオイ。発生源はシートに使われているビニールレザー。それがクルマ酔いのしやすさを助長している印象があった。それと、オトシン環境。ある種のというかあるメーカーの日本車に乗っているとありがちなことなのだけど、「うわ、風邪ひいたっぽい!!」のときの感じと似た感じになったときがあった。寒くもないのにゾクゾクしてくるというか、あるいは痛感神経がムキだしになって微風でも肌に当たると不快というか。おそらく客室内にこもっている振動を浴び続けたことによる影響なのだろうけど、クルマ酔いっぽくなったときがあったことに関しては、いわゆる乗り心地よりも実はこれが大きかったかもしれない。でも常にそうなっていたわけではないところが不思議というか、かえってメンドくさい。常にそうなら、はっきり「こんなのダメー!!」といえるから。
ちなみに。この「うわ、風邪ひいたっぽい!!」になるオトシン環境、筆者は個人的に“ト○タお化け”と呼んでいる。そのスジの某専門家によると、お化けの出やすさには温度条件(それもどうやら、外気温というよりはクルマの)なんかも関係してくるという。それと、温度条件といえば、タイヤ。この銘柄にありがちなこととして、時間帯(昼か夜か)によるものもふくめた外気温や路面温度や熱の入りかた等で乗り心地や手応えやオトシンの印象がイロイロと変わる……気がする。タイヤなんだからどれもそうだといえばそうかもしれないけれど、どれが本来の姿なのかちょっとわからない感じ。路面や車速もふくめて各種の条件がピタリとツボにはまると「うおーすげえ!!」になったりするのだろうか。
えー、ドライビングポジション。簡単にいうと、ペダルが近くてハンドルが遠い。ミラ イース(現行型)に乗ったときは、そうじゃなくなっていたのでオッと思った。今回は、「そうそう。これが従来のダイハツ流」。運転席のシートのデキは悪くなかった。パッと座って、モジモジしないでそのまんま……が、できていたかできていなかったかでいうと、できていたと思う。
という感じで今回のムーヴ、いくつかイイ手応えを感じさせてくれた。大筋「ヨッシャー!!」ではあった……といいたい気持ちはあるけれど、自信をもってドーンと推奨できるかというと、まだちょっと。
(文=森 慶太/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ダイハツ・ムーヴカスタムRS“ハイパーSA III”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1630mm
ホイールベース:2455mm
車重:850kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64ps(47kW)/6400rpm
最大トルク:92Nm(9.4kgm)/3200rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:27.4km/リッター(JC08モード)
価格:162万5400円/テスト車=190万9167円
オプション装備:ボディーカラー<レーザーブルークリスタルシャイン>(2万1600円)/パノラマモニター対応カメラ(3万4200円) ※以下、販売店オプション ETC車載器<エントリーモデル>(1万7280円)/カーペットマット<高機能タイプ、グレー>(2万5553円)/8インチメモリーナビ<標準プランA>(18万5134円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:156km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:278.0km
使用燃料:17.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.4km/リッター(満タン法)/18.2km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

森 慶太
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。


















































